雪だるま星のおしやべりぺちやくちやと たかし
雪だるまを作った夜、晴れた空に大小の星が輝きだした。そしてまるで
夜明けの小鳥のように星はおしゃべりをはじめた。地上の雪だるまの噂を
し、中には長い光の腕をのばし茶目っ気たっぷりに雪だるまに話しかけて
くる星もいる。
とてもファンタジーでメルヘン的である。同じころの句に、〈綺羅星は
私語し雪嶺これを聴く〉がある。景は大きいが、これも童話の世界に導い
てくれる。
そんな風に解釈すれば〈雪だるま〉の句は、確かに松本たかしの作品の
なかで特異な句ということになろうが、しかし正直言って、それほど高度
な句とは思えない。本当の句意は、雪だるまは超然としたたかし自身であ
り、ぺちゃくちゃお喋りしているのは、孤高なたかしを取り囲む家族であ
り、俳人や友人達であるのかも知れないのだ。
雪だるという偶像ならば、やがて溶けてなくなるという運命を背負うわ
けだが。
★その他、松本たかしの句
とっぷりと後ろの暮れる焚火かな
夢に舞ふ能うつくしや冬籠
雪嶺に三日月の匕首飛べりけり
深雪晴非想非非想天までも
一冬木専らに見て見つつあり
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