「タイム・キーパー」は、僕も入社当時二年くらい生放送でやりましたが、「生放送」と「収録番組」では違います。「生放送」でいうと、「放送上の画と音」がどこから出ているかの表を作ります。例えば、VTRに画面がなった場合、すでにナレーションが入っていれば、「画も音もVTR」、スタジオで生で説明するなら、「画はVTR、音はスタジオ」という風に書く表です。これを「Qシート」と呼びます。まずはこの表をスタッフに配って、リハーサルに入ります。リハーサルでVTRの長さ、どのコーナーの話が盛り上がりそうか、自分なりに考え、リハーサル終了後、自分なりの「時間割の表」を作って本場です。本番中は、VTRが後何分何秒かの時間をスタッフにカウントし、スタジオに戻ったら、CMまでの時間をカウントします。VTRは僕の時代でも四台有り、このスタートボタンを押すのもタイムキーパーの仕事です。今は「スタート」して「SHOW(放送に出る)」まで、一秒なので楽なのですが、当時はVTRもそこまで進歩していなくて、「スタート後、三秒してSHOW」になるので、司会者のVTRへのフリが始まったら、VTRスタートボタンを押していました。「では、VTRを御覧下さい。」の「。」でVTRに乗れたら、優秀なタイムキーパーと呼ばれていました。このVTRの作業が四台分あります。そして、一番緊張するのが「APS」といって、放送しているネット局にCMに入る事を放送している系列テレビ局に送る信号を出すボタンがあって、この「APS」を押すと、5秒後には放送しているテレビ局全局が一斉にCMに入るのです。この自動信号ができるまでは、各局画面を見ながら、それぞれの局でCM入りのボタンを押していたのです。その名残りがたとえば、「ザ・ベストテン」のCMに入る前に画面の右下に「ザ・ベストテン」というスーパーです。「11PM」のカバーガールがCMの前に出てきていたのも、CMに入る合図でした。
本題から外れましたが、タイムキーパーは、ディレクター以上に、番組の時間的構成を把握しておく事、これが一番大切です。音楽番組(生演奏)の場合は、「音あわせ」というリハーサルで、「曲」の時間を計り、長い場合が多いので、「間奏を二小節、切って下さい」などと、指揮者に言いに言ったりします。カラオケは「曲の長さ」が変わらないのですが、生演奏の場合は、事前に長さを調整しても微妙に「曲の長さ」が変わってきます。やはり、最後のグランプリ歌手が歌い終わった瞬間にエンドロール(スタッフの名前が書いてあるテロップ)が流れ、花吹雪の中で、番組を終わらせた時の快感はもしかしたら、ディレクター以上かもしれません。エンドロールの出るタイミングを技術さんに伝えるのもタイムキーパーの仕事です。
中継が入ってくる生番組もあります。それも、スタジオに「秒読み」する「インカム」という設備とは別のマイクがタイムキーパーの周りにあって、「中継までの時間」「中継終了でスタジオ戻りまでの時間」を「秒読み」します。
「収録番組」のタイムキーパーは、かなり仕事が違います。本番が始まる前に、収録VTRを廻す合図を送り、廻った事を確認してから、スタジオに秒読みします。後は、「編集用」に番組の収録内容とそのタイムを書いていきます。収録番組でも長いものは、途中でVTRをかけ替えなくてはならないので、テープの残量にも気を配ります。最近の収録番組はディレクターの指示する画以外にも「裏スイッチング」といって、もう一つのVTRに違う画を録画する事ができます。編集の時、必要な画を「裏スイッチング」するのもタイムキーパーの役目でしょう。
ドラマの場合は、タイムキーパーの事を「記録」と呼びます。ドラマは最初のシーンから撮っていくのではなく、バラバラに撮りますから、「記録」という仕事が必要なのでしょう。まず、台本を貰ったら、記録さんは、自分で「監督のつける芝居の長さ」も考えて、「時間出し」をします。その段階で大幅にオーバーしているようなら、監督・プロデューサー・脚本家と相談して、台本の「シーンカット」をどのシーンにするか、検討して貰います。短い場合は、逆に監督・プロデューサーと相談して、脚本家に「新しいシーン」を新たに書いてもらいます。この作業は撮影に入っても、続きます。撮影中は、どのVTRに第何話のどのシーンのどのカットを撮っているか、「記録のシート」に書き込んでいきます。なおかつ、「繋がり」と呼ばれる事にも注意を払います。それは何かというと、「衣裳」「小道具(くつや時計や装飾品)」が前後のシーンとつじつまがあっているかどうかを自分の台本に絵を描いて記録します。極端な事をいえば、喫茶店のシーンで、カット1で主人公がコーヒーカップを左手で持っていたのに、カット2を撮る時、俳優さんが間違えて、右手で持っていたとしたら、すぐ俳優さんに修正をお願いに行きます。これはもっと細かくなると、「手の上げ下げ」などの「つながり」なども記録さんは見ています。あとは、監督のお世話。コーヒーを入れてあげたり、編集時にどうするか話をしたり。つまり、監督の奥さん役なのですね。
撮影が終わったら、「オフライン編集」と呼ばれる、記録さんのみでする編集が待ち受けています。一時間ドラマで撮影に5日くらい、このオフライン編集に二日、本編集に一日、MAといって、音楽やナレーション、効果音(鳥の鳴き声や電車の音)を入れる作業が一日といったところでしょうか。記録さんがかかわるのは本編集までです。オフライン編集で、大体の編集が終わったところで、監督登場。直しに入ります。このシーンのこのカットが見たいといえば、すぐ編集マンに、どの収録テープにはいっているか
指示して、テープをかけてもらいます。彼女達の仕事は徹夜続きです。詳細は黒澤明監督の記録さんの野上照代さんが書かれた「天気待ち」(文庫になっています)を読まれると分かります。
今、オフラインは「AVID」というシステムを使ってリニア編集しているので、この「ワード」と一緒で、シーンのつなぎ換えとか、放送時間に合わせる作業はすぐできます。ハリウッド映画でも、今、フィルムで撮って、ビデオにして、「AVID」編集をやっている映画は増えてきています。映画のエンドロールにも「AVID」という文字が出ています。
本編集は、基本的にオフライン編集で出来上がった「編集データ」を編集機に入れると後は自動的にVTRを繫ぎ合わせてくれます。繫ぎ上がったドラマをここで微調整する監督もいますし、後は記録さんに任せて、「スーパー入れ」の作業をする監督もいます。物凄い長い説明になってしまいましたが、「しんどいけれど、働き甲斐はある」仕事です。こんな説明で良いですか。
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