「単騎、千里を走る。」を観た。チャン・イーモウ監督作品。主演は高倉健。チャン・イーモウ監督の映画はデビュー作の「紅いコーリャン」からずっと観ている。「紅いコーリャン」を観たのは、今はなき、「梅田コマ劇場」の地下にあった「コマ・ゴールド」という汚い映画館だった。音響も悪く、スクリーンも小さくて、映像がはみ出していた。先輩からとってもいいと薦められて、あまりというか、ほとんど「中国映画」に興味の無かった僕は全くフラットな気分で観に行った。そして、あまりの素晴らしさに、度肝を抜かれたのを思い出す。1987年、入社4年目の事である。それから、「菊豆(ちゅいとう)」「紅夢」「秋菊の物語」「活きる!」「上海ルージュ」「あの子を探して」、そして「初恋のきた道」で最高!と思い、「至福のとき」・・・「HERO」では途中で寝てしまい、「LOVERS」で「竹薮の中での格闘シーン」に魅了される。
僕的には途中、面白くない映画を撮っていた時期もあったが、「単騎、千里を走る。」はどちらかというと、「初恋のきた道」路線で、中国でのシーンには、高倉健以外、ほとんどの出演者が「素人」。その「素人」の持ち味を引き出すのがチャン・イーモウは上手い。キャスティングの段階で、「村長役」には、実際の村長を、ガイド役には実際のガイドを選んでいるので、彼らにそのままのキャラクターでいて貰えれば、「プロの役者」が勝てるはずが無い。
そうした「中国の農村の人々」の中で、高倉健は204作目にして、今までと違う「味」を出しており、「存在感」が凄い。
中国でも、北京とか上海とかと違って、田舎の農村の方に行けば、こんなに豊かな風景と本当に人間らしい「喜怒哀楽をはっきり出した人達」がいる事に、「中国」という国の奥深さを感じた。中国の撮影監督の撮った「雲」や「山」や「谷」など、さりげない「画」が強烈に僕の心に沁みた。
日本のシーンもあり、チャン・イーモウ監督の意向で、「日本を撮るのは日本人」という事で、「日本ユニット」として、「鉄道員(ぽっぽや)」の降旗康男監督、木村大作撮影監督ほか、日本人スタッフが参加している。チャン・イーモウ監督は、日本での撮影すべてを日本のスタッフに委ねたのである。
もう一つビックリしたのは、この映画のプロデューサー・江 志強(ビル・コン)。香港のインデペンデント映画会社の社長でもある。この人が作った映画に、僕の大好きな韓国映画「僕の彼女を紹介します」が入っているのだ。アカデミー賞を取った「グリーン・デスティニー」や「HERO」「LOVERS」のプロデュースもしている。
「単騎、千里を走る。」は、「高倉健」の為に書かれた脚本である。ストーリーの構成が素晴らしい。僕の予想を裏切る展開。映画全体にキャスト・スタッフの静かなエネルギーがあふれている。「日劇2」を出た後、エレベーター・ロビーにいる時、僕は久々に「映画の余韻」に浸っていた。
「THE有頂天ホテル」も同じ「日劇1」でやっていて、先週観たのだが、この違いは何なのだろう。「日劇1」が満員で、「日劇2」はガラガラ。「THE有頂天ホテル」が「ライブドアのホリエモンを選挙に担ぎ出した小泉純一郎」に思えてきた。








