脚本家・秋田佐知子さんが亡くなった。享年62歳。NHKで「虹を織る」という紺野美紗子主演の朝の連続ドラマを書いた人である。僕は先輩のプロデューサーからの電話でその事を知った。もう葬儀も終わり、「お骨」は故郷・宮崎に帰られたそうである。
秋田さんとは、まだ僕がアシスタント・プロデューサーの頃、月~金、125本のドラマを2回、御一緒させて頂いた。先輩プロデューサーについて、秋田さんと伊豆の旅館に泊まって、連続ドラマの後半の展開を3人で話した事を憶えている。2泊3日だったと思う。
3年くらい前であろうか、突然、秋田さんから、会社に電話を頂いた。
「元気にしてる?」
から始まる他愛の無い会話だったのだが、僕も正直、戸惑ってしまい、あまり何を話したのか、憶えていない。ただ、ドラマの脚本を書きたいという秋田さんの心情はちゃんと感じていた。ただ、現実に僕はその時、ドラマを離れて別のセクションにいたし、それまで僕がやっていたドラマ枠と、秋田さんの書かれる脚本が合っているとはどうしても思えなかった。
まだ、ワープロもパソコンも無かった時代、ペラ(200字詰めの原稿用紙)に3B位の濃い鉛筆で、力いっぱい脚本を書かれていた姿を思い出す。僕らがやっていた月~金の連続ドラマで、1話ペラ七十枚位だろうか。書くのは速かった。
打ち上げの日、「記念撮影」の時間に、秋田さんを呼び忘れ、恐縮した事もあった。
脚本家・漫画家・作家、多作の人ほど、早く亡くなられる様な気がする。「命」を削って、創作しているという事だと思う。
今、秋田さんは故郷・宮崎に帰って、原稿の締切に追われる事も無く、静かに眠っておられる。有難うございました、秋田さん。