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ボクシングにかける男たちの情熱を描いた『一瞬の夏』や、自らの体験をもとにした旅行記「深夜特急」シリーズを手がけたノンフィクション作家、沢木耕太郎が、初めて挑んだ長編小説。思春期特有の屈折した心理を持った少年が、殺人衝動に突き動かされるまでをつづる。著者は、いつもポケットにナイフを入れていたという自身の少年期を重ねながら、主人公の痛々しい若さを描く。フィクションでありながら、その中に著者の原点ともいえる時代が透けて見える作品となっている。
主人公は、無口な父親と2人で暮らす中学3年生である。走り幅跳びの選手として期待されていたが、突然跳ぶことができなくなり、クラブ活動を引退。学校では教師から目をつけられ、友人関係におもしろみも感じず、受験勉強に明け暮れる日々を送っていた。そんなとき知り合ったのが、奇妙な女装姿の男だった。はじめは気味悪がり、距離を置こうとしていた主人公だが、男が過去にプロボクサーだったと知り、彼の数々の戦歴に興味を持つようになる。
家を出ていった母親がいつも口にした「勇敢な」男性像は、主人公の理想でもあった。その強く完璧なものへの憧れは、この年ごろならではの純粋で一途な感情だ。そして理想が大きければ大きいほど、それが叶わなかったときの失望感は多大である。跳べなくなった少年、過去の栄光にすがるボクサー、何かをあきらめたような父親という、3人を通して、理想と現実との落差がかなしく描かれる。著者のノンフィクション作品に登場する「勝負の世界に何かを賭け、喪っていった者たち」とも通じる、それぞれの男の孤独な姿が印象に残る。(砂塚洋美)
内容(「BOOK」データベースより)
「中学三年の冬、私は人を殺した」。二十年後の「私」は、忌まわしい事件の動機を振り返る―熱中した走幅跳びもやめてしまい、退屈な受験勉強の日々。不機嫌な教師、いきり立つ同級生、何も喋らずに本ばかり読んでいる父。周囲の空虚さに耐えきれない私は、いつもポケットにナイフを忍ばせていた…。「殺意」の裏に漂う少年期特有の苛立ちと哀しみを描き、波紋を呼んだ初の長編小説。
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出版社/著者からの内容紹介
勝負の世界にその青春のすべてを賭けて燃え尽きていった者たちを若き大宅賞ライターが哀借こめて描くスポーツロマン。現代の若者に圧倒的な支持を得た情熱的作品
沢木耕太郎は「深夜特急」がやはり好き。小説もいい。
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内容(「BOOK」データベースより)
インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行く―。ある日そう思い立った26歳の〈私〉は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。マカオでは、「大小」というサイコロ博奕に魅せられ、あわや…。1年以上にわたるユーラシア放浪が、今始まった。いざ、遠路2万キロ彼方のロンドンへ。




