20歳のロシア在住新鋭ピアニスト松田華音さんと、フィギュアスケートの羽生結弦選手の対談です。
羽生選手のショートプログラムに使われている部分のみに、ほぼ縮められています。
非常に激しくアクティヴな、若々しい演奏。
聴き終えた羽生選手は、なぜか汗をかいています。
ずっと脳内で滑っていたのでしょう。
羽生「松田さんの演奏している姿を見て思ったのは、力の入れ方とか息の抜き方とか呼吸とかをすごい大事にしているなあって。
スケートを滑っている感覚と似ているのかなって思いました。」
松田「フィギュアスケートは他のスポーツと違って、音楽を聴いて感じたものをさらに体で表現する芸術的な競技ですよね。
羽生選手のスケートからは情熱というか、エネルギーがすごく伝わってきます。」
松田「グネーシン音楽学校のエレーナ・イワノーワ先生が、12年間学んでいた私にずーっと言ってくださっていたことがあります。
それは『絶対に意味のない音を弾くんじゃない』ということです。必ず一音一音に意味を作りなさいと。
フレーズに言葉をつけたりストーリーを考えたり。
そのためにはこの本を読みなさい、この映画を見なさい、この絵を見なさいって。
先生が教えてくださったのは、体の使い方もですね。
私は普通のピアニストの方に比べて手が小さくて腕も細めなので、どうやって力を入れたらどんな音が出るかとか、どこで力を抜くかとか、そういうことを。」
羽生「僕らの競技も体の特徴がすごく影響します。
スタイル、身長、手足の長さ。僕もロシアの先生に教わった時に『あなたはせっかく手足が長いんだから、もっと使いなさい』と、そういう具体的なことを教えてもらえたことをあらためて思い出しました。
実は今シーズン、フリープログラムで『SEIMEI』(映画『陰陽師』サウンドトラックより)という曲を使用するんですけど、このプログラムでも一つひとつの振り、単純な基本動作にも意味をもたせなさいってすごく言われています。
今日は松田さんとお話しして、共通する部分がたくさんあるなあって思いました。」
私がはっとした所を太字にしました。
これは、原田先生がおっしゃることと同じなんです。
特に、フレーズに言葉をつけたりストーリーを考えたり というところ。
羽生選手が他のインタビューか何かで、「そのまま滑るだけなのは書き言葉。話し言葉にしなくてはいけない。」と言っていました。
音楽もそうです。
楽譜は書き言葉。
それを、ただ機械的に弾くだけなのは書き言葉のまま。
話し言葉にしないといけない。
そして、一音一音に意味を持たせる。
先生のプライベートレッスンにて・・・あるフレーズの中の一音を無造作に弾いてしましました。
たった一音ですが、逃しはされません。
「この音に意味が無かったですね。」
わかってるつもりでも、軽視している時があるのです。
本、映画、絵・・・
芸術はピアノだけではない。
他の楽器やオーケストラ、歌とも関連がありますし、絵画も同様です。
先生は、よくCDや絵画を持ってきて下さってます。
ときには脳や神経の働きの資料なども。
ピアノの前に座って話すだけでなく、実際に目にする体験することによって世界が広がります。
私も本物の絵画や、実際の景色に心動かされることは多いのです。
本を読むことは更に、見ていない体験しない世界も知ることができます。
すべては、イメージ・表現の豊かさにつながります。
これらは生徒さんに指導するときも、心がけています。
12月の勉強会のコンサート前に、このショパンのバラード1番をリレーで演奏することになっています。
松田さんの演奏で羽生選手の演技にないところが少しあるのですが、そこからが私の分担です。
その部分に来たとき、思わず、「ある!」と叫んでしまいました。
演技のときには無いのに、そこで羽生選手が目を閉じて聴いてくれてるので何だかうれしくなってしまいました。
途中で演技部分に繋げられてしまいますが・・・。
奇しくも、コンサートの日の夕刻、名古屋ではグランプリファイナルの男子ショートプログラムが行われます。
(演技に私の部分はないけど)エールを込めて演奏したいです。