『月まで三キロ』新潮社―2018/12/21
伊与原 新(著)
内容(「BOOK」データベースより)
「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシー
に乗った男を、運転手は山奥へと誘う。―月まで三キロ。 「実はわたし、一三八億年前に生まれた
んだ」。 妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性が、小学生の娘に伝えたかったこと。
―エイリアンの食堂。 「僕ら火山学者は、できるだけ細かく、山を刻むんです」。姑の誕生日に家
を出て、ひとりで山に登った主婦。出会った研究者に触発され、ある決意をする―。―山を刻む。
折れそうな心に寄り添う六つの物語。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
伊与原さんの作品は何冊か読んだ事がありますが、この作品は幻想的な表紙とミステリアスなタ
イトルに惹かれ、特に書評も調べる事なく手に取りました。
「月まで三キロ」
「星六花」
「アンモナイトの探し方」
「天王寺ハイエスタス」
「エイリアンの食堂」
「山を刻む」
の6編からなる短編集
専門が宇宙惑星物理学という著者が描く 天文学、気象学、地学等の知識が散りばめられた人間愛に
満ち溢れた作品です。
それぞれの専門知識は普段であれば耳を素どうりしそうな用語が書かれているにも関わらず,各話の
中で専門家によって語られ散りばめられた知識が すっと心の中に入っていきます。
そして、そんな専門家によって語られた言葉が それぞれに悩み、不安を抱える主人公達の心に染み
わたり生きる意味や救いを見出していく事になるのです。
胸が詰まってジーンと来たり、心を揺さぶられたリ、共感させられたり、とそれぞれが余韻の残る
終わり方をしています。
どれも静かな感動を胸に残します。
伊与原さんは、
感情とは対極にあると思われる”科学”を「きわめて人間的なもの」だと言っていらっしゃるとか。
この作品を読んでみると、この言葉が実感として染みわたる様な気がします。
そして、何となくあやふやな知識しかなかった”月”の事、”アンモナイト”の事、”雪の結晶”、
”素粒子”、”火山と岩石” 等々について優しく語る登場人物のお蔭で実際の知識として心に残
る様な気もします。
それぞれの作品では、めでたし、めでたしのはっきりしたハッピーエンドになっている訳ではな
いのですが、主人公が抱えていた苦しみ、悩み、葛藤などに対して少し異なる見方が出来るよう
になったり、少し先に進めそうな気配があったりで何となく希望が感じられるエンディングに
なっているのですが、その様な表現であるからこそ柔らかい余情を感じる様な気がします。
個人的には表題にもなっている一作目「月まで三キロ」が一番心に染みました。
「BOOK」データベースにある様に、「折れそうな心に寄りそう」に偽りなしの内容で、久々に心
が洗われる様な温かい気持ちになれる読後感を得られる作品です。
伊与原 新(著)
内容(「BOOK」データベースより)
「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシー
に乗った男を、運転手は山奥へと誘う。―月まで三キロ。 「実はわたし、一三八億年前に生まれた
んだ」。 妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性が、小学生の娘に伝えたかったこと。
―エイリアンの食堂。 「僕ら火山学者は、できるだけ細かく、山を刻むんです」。姑の誕生日に家
を出て、ひとりで山に登った主婦。出会った研究者に触発され、ある決意をする―。―山を刻む。
折れそうな心に寄り添う六つの物語。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
伊与原さんの作品は何冊か読んだ事がありますが、この作品は幻想的な表紙とミステリアスなタ
イトルに惹かれ、特に書評も調べる事なく手に取りました。
「月まで三キロ」
「星六花」
「アンモナイトの探し方」
「天王寺ハイエスタス」
「エイリアンの食堂」
「山を刻む」
の6編からなる短編集
専門が宇宙惑星物理学という著者が描く 天文学、気象学、地学等の知識が散りばめられた人間愛に
満ち溢れた作品です。
それぞれの専門知識は普段であれば耳を素どうりしそうな用語が書かれているにも関わらず,各話の
中で専門家によって語られ散りばめられた知識が すっと心の中に入っていきます。
そして、そんな専門家によって語られた言葉が それぞれに悩み、不安を抱える主人公達の心に染み
わたり生きる意味や救いを見出していく事になるのです。
胸が詰まってジーンと来たり、心を揺さぶられたリ、共感させられたり、とそれぞれが余韻の残る
終わり方をしています。
どれも静かな感動を胸に残します。
伊与原さんは、
感情とは対極にあると思われる”科学”を「きわめて人間的なもの」だと言っていらっしゃるとか。
この作品を読んでみると、この言葉が実感として染みわたる様な気がします。
そして、何となくあやふやな知識しかなかった”月”の事、”アンモナイト”の事、”雪の結晶”、
”素粒子”、”火山と岩石” 等々について優しく語る登場人物のお蔭で実際の知識として心に残
る様な気もします。
それぞれの作品では、めでたし、めでたしのはっきりしたハッピーエンドになっている訳ではな
いのですが、主人公が抱えていた苦しみ、悩み、葛藤などに対して少し異なる見方が出来るよう
になったり、少し先に進めそうな気配があったりで何となく希望が感じられるエンディングに
なっているのですが、その様な表現であるからこそ柔らかい余情を感じる様な気がします。
個人的には表題にもなっている一作目「月まで三キロ」が一番心に染みました。
「BOOK」データベースにある様に、「折れそうな心に寄りそう」に偽りなしの内容で、久々に心
が洗われる様な温かい気持ちになれる読後感を得られる作品です。
本当に、心に染みるお話の詰まった短編集だと思います。私も「月まで三キロ」が一番心に残りました。静かなんだけどインパクトがあって、月に関する知らなかった事実も興味深く、それに重ねられる子供についてのたとえもなるほどと思わされ…つらいけど、それを背負いながら生きていく人がふとした偶然で見つける心の拠り所…と言ったら大げさなのかもしれないけど。Yam Yamさんが書いておられたように、はっきりしたハッピーエンドで終わるわけではないけど、主人公の心が少し動いて先の変化が感じられる余韻が、どの話にも感じられますね。
余談ですが、「天王寺ハイエイタス」はかなり大阪弁を使って書かれていて、小説でこれ、ありなんだ?と新鮮だったのですが、関西以外の方に分かるんだろうか?と時々余計な心配もしてしまいました。“さぶいぼ”とか…文脈から分かるのかな?
残りも、楽しみに読み進めたいと思います。
寒くなりましたね。お変わりありませんか?
この本気に入って頂き我が事の様に嬉しいです。 私としても何時も読んでいる本とは傾向が違
う作品でしたが大当たり(?)でした。 不思議なお話ばかりですが、押しつけがましくない、何とな
く心に染みる作品集ですよね。 やはり『月まで三キロ』お好きですか? 良かった! あの運転
手さんが良いですよねぇ。
その上、色々と勉強にもなる蘊蓄も込められていて”一粒で二度美味しい”(笑)素敵な作品だと
感じました。
大阪弁ね。”さぶいぼ” 分かりましたよ(笑) コテコテの大阪弁だけど、何となく新鮮でした。
『山をきざむ』の奥さんに関しては、勝手に違う危ない想像をしていました。 最後に彼女の決断
を読んでホッとしたりしたもんです。
たまにはこういう作品も良いですね。
感想教えていた頂き嬉しかったです。
益々気忙しくなりますが、どうぞご自愛下さいね。
この本、最後まで読みましたが、「山を刻む」もすごく気に入りました。奥さんが迷っていること、ミスリードする書き方ですよね。でも、実は意外な展開があって、すごく爽やかな気持ちになれる結末でした。でも私は、結構あの独身火山学者さんと奥さん相性がいいんじゃないかしらなどども思ってしまいました。いや、もちろん気の合う仲間でもいいんですが。
現実味のある物語とちょっと変わった発想の癒合、そして全体的に最後にはほんのりとだけど前向きな気持ちになれるお話ばかりで癒されました。これもYam Yamさんのおかげです。ありがとうございました!
すごく気に入ったので、勝手ながら今年最後のブログで書かせていただきました。自分用の覚書みたいなものですが。
今年もあっという間に過ぎてしまいましたが、Yam Yamさんの記事にいろんな情報や刺激をいただき、ありがたかったです。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
どうぞお体大切にお過ごしください。
こちらこそお世話になり有難うございました。 アッという間の大晦日ですね。
この作品に関して記事をお書きになったとの事で、早速チョロッと読ませて頂きました。
相変わらず上手く纏めていらっしゃると勉強させて頂きました。 年明けに改めてゆっくり伺わせて頂きま
すね。
「山を刻む」も良かったですね。 家庭の中で影の様に思われ自分の在り方に疑問を持つ奥さんには共感
を覚える部分もあったりして、そんな彼女の背中を押した感じの火山学者さんのひたむきさには感動さえ
しました。 ですよね、ミスリードさせられかけましたよ(笑)
兎に角、説教がましくなく色々感じさせられて、読後なにか気持ちの切り替えや心が軽くなる様な感じやら
させられる不思議な作品でした。 Mistyさんにも気に入って頂けて良かったです。
私も色々勉強させて頂いてばかりですが、引き続き来年もどうぞよろしくお願い致します。
Mistyさんもどうぞお身体お大事になさって下さいね。
良い年になります様に!
あ、それからご丁寧に追加メッセージも有難うございました。