郡山シティーマラソンが福島県内外から5千人を超すランナーを集めて開かれた。単に「走る」だけでなく、家族がふれあいを深め、子どもたちの歓声がこだました大会となった。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興を進める本県にとって、こうした「スポーツの力」は明日への大きな活力になる。
20回目の節目となった大会は、春の青空が広がる中、催された。大震災が起きた一昨年は中止を余儀なくされ、昨年は秋の変則開催だった。ようやく例年通り「昭和の日」開催となり、スタート地点の開成山陸上競技場には、親子や職場の同僚、ランナー仲間らが色とりどりのユニホームで集結した。北は北海道、南は熊本県から参加者があり、安積路で健脚を競った。
子どもたちは力いっぱいトラックを走り、アトラクションの「鬼ごっこ」では、鬼に扮[ふん]した女子マラソンのバルセロナ、アトランタ両五輪メダリスト有森裕子さん、白河市出身で男子マラソン前日本記録保持者藤田敦史さん(清陵情報高卒)、吉本興業の若手芸人と芝生の上を駆け回った。走り幅跳びでは砂だらけになって記録に挑戦していた。
原発事故後、開成山陸上競技場は国の補助でいち早く除染が進められ、放射線量は大幅に下がった。放射能を気にすることなく、屋外で元気いっぱいに運動する子どもたちと、それを笑顔で見詰め、カメラに収める父母や祖父母たち。原発事故以前は当たり前だった光景があふれた。
大震災から3年目を迎えたが、風評がいまだ消えない中、人々の記憶が薄れる風化が懸念されている。ともすれば気持ちが後ろ向きになることもあるが、木村孝雄市教育長は「子どもたちの姿に心配が吹き飛んだ。『大丈夫なんだ』と勇気が湧いた」と話した。藤田さんは「『復興』の2文字のため、僕らができることは何でもやる。小さい力の結集が再生への道筋になる」と力強く言った。
県外のランナーたちは郡山のマチも子どもたちも元気で、震災にも決して負けないことを地元で伝えてくれるはずだ。そうした情報発信の積み重ねが復興への推進力になる。県内のランナーは郡山でもらったパワーで、復興への思いをもう一度奮い立たせるだろう。大会が10年、20年と続き、仮設住宅が建ち、除染が行われている今の「非日常」の状況が、震災前の「日常」に戻ることを願う。競技場を走った子どもたちがいつかこの地で親になり、わが子と手をつないで走る日を待っている。(半野 秀一)
2013/05/02 09:16 福島民報論説
20回目の節目となった大会は、春の青空が広がる中、催された。大震災が起きた一昨年は中止を余儀なくされ、昨年は秋の変則開催だった。ようやく例年通り「昭和の日」開催となり、スタート地点の開成山陸上競技場には、親子や職場の同僚、ランナー仲間らが色とりどりのユニホームで集結した。北は北海道、南は熊本県から参加者があり、安積路で健脚を競った。
子どもたちは力いっぱいトラックを走り、アトラクションの「鬼ごっこ」では、鬼に扮[ふん]した女子マラソンのバルセロナ、アトランタ両五輪メダリスト有森裕子さん、白河市出身で男子マラソン前日本記録保持者藤田敦史さん(清陵情報高卒)、吉本興業の若手芸人と芝生の上を駆け回った。走り幅跳びでは砂だらけになって記録に挑戦していた。
原発事故後、開成山陸上競技場は国の補助でいち早く除染が進められ、放射線量は大幅に下がった。放射能を気にすることなく、屋外で元気いっぱいに運動する子どもたちと、それを笑顔で見詰め、カメラに収める父母や祖父母たち。原発事故以前は当たり前だった光景があふれた。
大震災から3年目を迎えたが、風評がいまだ消えない中、人々の記憶が薄れる風化が懸念されている。ともすれば気持ちが後ろ向きになることもあるが、木村孝雄市教育長は「子どもたちの姿に心配が吹き飛んだ。『大丈夫なんだ』と勇気が湧いた」と話した。藤田さんは「『復興』の2文字のため、僕らができることは何でもやる。小さい力の結集が再生への道筋になる」と力強く言った。
県外のランナーたちは郡山のマチも子どもたちも元気で、震災にも決して負けないことを地元で伝えてくれるはずだ。そうした情報発信の積み重ねが復興への推進力になる。県内のランナーは郡山でもらったパワーで、復興への思いをもう一度奮い立たせるだろう。大会が10年、20年と続き、仮設住宅が建ち、除染が行われている今の「非日常」の状況が、震災前の「日常」に戻ることを願う。競技場を走った子どもたちがいつかこの地で親になり、わが子と手をつないで走る日を待っている。(半野 秀一)
2013/05/02 09:16 福島民報論説