もんじゅ運転禁止命令で遠のく再開 断層調査、新規制基準適合も課題
原子力規制委員会が高速増殖炉「もんじゅ」に事実上の運転禁止という厳しい命令を出したことで、日本原子力研究開発機構が本年度中を目指していた運転再開は大きく遠のいた。さらに敷地内の断層調査や新規制基準への適合というハードルがあり、原子力機構の体質には西川福井県知事も厳しい目を向けている。もんじゅの維持費には年間170億円以上をかけているだけに、運転再開の見通しが立たない状況が長引けば一層の批判が集まることになる。
運転再開を目指す上で最も高いハードルとなるのが、今回の運転禁止命令となる。大量の機器の点検漏れを受け、保全計画の見直しなどが終わらなければ運転再開の準備に取りかかれない点を踏まえれば、実質的な環境に変化はないとも言えるが、規制委は安全文化の劣化を強く批判、ソフト面が改善されなければ再開の道は開けない。
規制委の会合では「かなり事態は深刻」(田中俊一委員長)、「根本になる安全文化を事業者、監督官庁が徹底しないのであれば教訓を学んだことにならない」(大島賢三委員)など厳しい指摘が相次いだ。
西川知事は14日、福井市内で開かれた会合の席上で「監督官庁である文部科学省の厳格な指導、管理が重要だ」と文科省の責任を追及した。原子力機構の体制、組織改革を行わなければ次の展開はないとも語り、十分な改善がなければ地元として運転再開を簡単には了承しない考えを示唆した。
「経営陣の問題意識の欠如は批判されるべきもので、今回の措置は当然」とするのは共産党の佐藤正雄県議。さらに「組織の責任というよりは、高速増殖炉という展望のない技術の開発をいつまでも行わせていること自体に問題がある」とも述べ、1兆円を超す事業費が投入されながら十分な成果が出ていない点を批判する。
敷地内で計9本確認されている断層も今後の大きな課題だ。原子力機構は4月、活断層だと示す痕跡はなく、もんじゅの西側500メートルに位置する活断層「白木―丹生断層」に引きずられて動くこともないと規制委に報告した。
ただ、規制委は専門家による調査団を現地に派遣し、報告内容を検証する予定。関西電力大飯原発の敷地内断層をめぐる調査団の審議などは長期化しており、もんじゅの調査も先は見通せないのが現状だ。仮に活断層と判断されるようなことがあれば運転再開は極めて難しくなる。
一方、新たな規制基準について規制委は、通常の原発(軽水炉)の基準を参考にした概略的なものを7月までに策定する方針。しかし、もんじゅ特有の設備や条件を考慮した詳細な基準は中長期的に検討していくとし、策定時期は明確になっていない。
2013年5月16日午前7時05分 福井新聞