農林水産省は、福島市中央卸売市場など全国9つの中央卸売市場を地方市場に転換する再編案を近く決定する。福島市は平成26年4月に「福島地方卸売市場」への転換を目指す。
県が監督する地方市場は、国監督の中央市場より取引規制が緩やかだ。市場だけだった物品の取引が場外でもできる。販売伝票処理など煩雑な事務が簡素化され、時間や労力、経費が減る。利点を未来戦略に生かす時だ。東京電力福島第一原発事故の風評被害に負けず、地域密着市場として飛躍してほしい。
福島市場は高度経済成長期の昭和47(1972)年に青果部と水産物部の二部門で業務を開始、最盛期の53年は年間取扱金額410億2500万円に上った。平成15年に花き部が加わる。
少子高齢化などの影響で市場規模は年々縮小する。量販店進出で、市場に品物を持ち込まない取引も増えた。23年は取扱金額が最盛期の半分以下の201億8700万円に落ち込む。廃業に追い込まれた卸売業者や仲卸業者もあった。風評被害が追い打ちを掛け「果物王国市場」の優位性も揺らいでいる。
市は福島市場の地方市場化へ、25年度から29年度まで5カ年の中期経営プランを今年2月に策定した。地方市場化の関連条例案を早期に市議会に提出する方針だ。市と業者でつくる市場協会は(1)効率運営(2)安全・安心で機能的(3)市民に親しまれる-の3本柱で市場改革に挑む。生き残りは、取扱商品の差別化と「生鮮食品のプロ」の一層の資質向上が鍵となる。
生産から輸送、消費までの流通過程で、生鮮食品を途切れず低温に保つ「コールドチェーンシステム」の確立が急務だ。建築後40年以上となる施設の耐震改修と同時に最優先で取り組むべきだ。
プランは専門知識や企画提案力の研修・勉強会の開催を盛り込む。未来の市場のプロ発掘へ職業体験も実施したいという。専門小売店への販売促進提案や市民要望調査も進める。情報技術を活用した産地直送販売、他市場と連携する集荷・配送、管理経費が削減できる指定管理者制度導入も検討課題となる。
福島市場は原発事故後、施設を徹底的に除染した。出荷と市場の二段階で放射性物質検査を行う事例は他にない。地方市場化を契機に、災害時の避難所として市民に開放する動きもある。「世界で一番、安全・安心な市民に開かれた市場」を合言葉に県都の台所の改革を進める好機にしてほしい。(小池 公祐)
2013/05/06 08:54 福島民報論説
県が監督する地方市場は、国監督の中央市場より取引規制が緩やかだ。市場だけだった物品の取引が場外でもできる。販売伝票処理など煩雑な事務が簡素化され、時間や労力、経費が減る。利点を未来戦略に生かす時だ。東京電力福島第一原発事故の風評被害に負けず、地域密着市場として飛躍してほしい。
福島市場は高度経済成長期の昭和47(1972)年に青果部と水産物部の二部門で業務を開始、最盛期の53年は年間取扱金額410億2500万円に上った。平成15年に花き部が加わる。
少子高齢化などの影響で市場規模は年々縮小する。量販店進出で、市場に品物を持ち込まない取引も増えた。23年は取扱金額が最盛期の半分以下の201億8700万円に落ち込む。廃業に追い込まれた卸売業者や仲卸業者もあった。風評被害が追い打ちを掛け「果物王国市場」の優位性も揺らいでいる。
市は福島市場の地方市場化へ、25年度から29年度まで5カ年の中期経営プランを今年2月に策定した。地方市場化の関連条例案を早期に市議会に提出する方針だ。市と業者でつくる市場協会は(1)効率運営(2)安全・安心で機能的(3)市民に親しまれる-の3本柱で市場改革に挑む。生き残りは、取扱商品の差別化と「生鮮食品のプロ」の一層の資質向上が鍵となる。
生産から輸送、消費までの流通過程で、生鮮食品を途切れず低温に保つ「コールドチェーンシステム」の確立が急務だ。建築後40年以上となる施設の耐震改修と同時に最優先で取り組むべきだ。
プランは専門知識や企画提案力の研修・勉強会の開催を盛り込む。未来の市場のプロ発掘へ職業体験も実施したいという。専門小売店への販売促進提案や市民要望調査も進める。情報技術を活用した産地直送販売、他市場と連携する集荷・配送、管理経費が削減できる指定管理者制度導入も検討課題となる。
福島市場は原発事故後、施設を徹底的に除染した。出荷と市場の二段階で放射性物質検査を行う事例は他にない。地方市場化を契機に、災害時の避難所として市民に開放する動きもある。「世界で一番、安全・安心な市民に開かれた市場」を合言葉に県都の台所の改革を進める好機にしてほしい。(小池 公祐)
2013/05/06 08:54 福島民報論説