東京電力福島第1原発の汚染水問題で、政府の汚染水処理対策委員会は、今月中にも、地下水の流入を抑える抜本対策の方向性を示す。報告書にまとめ、6月の廃炉工程表改訂に反映させる考えだが、効果や安全性、リスクを速やかに検証し、早急な実施に移せる現実的な対策を入れ込んでもらいたい。
原子炉建屋に流れ込んでいる地下水が原子炉を冷やした水と混じり、1日400トン増え続けている汚染水に対し、東電の対策は、暗礁に乗り上げている。
原発敷地内でのタンクへの保管は容量に限界があり、タンクよりも容量が大きい地下貯水槽への保管は、水漏れが発覚し、貯水槽が使えない状況になった。東電が次に計画した原子炉建屋に流れ込む前に地下水をくみ上げ、海洋に放出する「地下水バイパス計画」は、漁業関係者の理解が得られず、実施できる段階にはない。
地下水の抑制対策は、安全性の確保が何よりも求められる。同委員会は、抜本対策の取りまとめに当たり、この点は忘れないで検討を進めるよう求めたい。
地下貯水槽に関しては、旧原子力安全・保安院が整備を了承、その後に発足した原子力規制委員会も再検証をしないまま使用が続けられ、規制委のチェックの甘さが露呈した。
政府は、こうした経緯を踏まえて廃炉対策推進会議に汚染水処理対策委員会を設置した。4月26日に初会合を開催、これまでの対策を総点検し、汚染水処理問題を抜本的に解決する対策の検討を始めた。それだけに、同委員会には、東電の対策に厳しい目を向けることが必要だ。
今月16日の2回目の会合では、地下水の流入抑制を確実に行うためとして、東電の地下水バイパス計画や、地下水をくみ上げる立て坑の復旧など、これまでに検討されてきた対策だけでなく、複数の対策を追加する方針を確認した。
追加的な対策として、東電から1~4号機の地下水流入部分をふさぐ提案が出されたが、この方法は、これまで放射線量が高いために見送られてきた経緯がある。ゼネコンからは、陸側の地中に遮水壁を設置する提案が出されたが、周辺の地下水の水位が建屋内にたまっている汚染水の水位よりも下がると、汚染水が逆流する課題が指摘されている。
いずれの提案も、具体化するためにはこうした課題についての評価が必要になる。評価結果が妥当となっても、実行に移るまでには時間を要するだろう。同委員会は評価結果を踏まえ複数の対策を組み合わせて抜本対策の方向性を示す見通しだが、短期的に取り組む対策と、中長期的な対策が必要だ。適切な評価と実現可能な対策を示し、廃炉に向けた抜本的な解決方法を導いてほしい。
2013年5月19日 福島民友新聞社説
原子炉建屋に流れ込んでいる地下水が原子炉を冷やした水と混じり、1日400トン増え続けている汚染水に対し、東電の対策は、暗礁に乗り上げている。
原発敷地内でのタンクへの保管は容量に限界があり、タンクよりも容量が大きい地下貯水槽への保管は、水漏れが発覚し、貯水槽が使えない状況になった。東電が次に計画した原子炉建屋に流れ込む前に地下水をくみ上げ、海洋に放出する「地下水バイパス計画」は、漁業関係者の理解が得られず、実施できる段階にはない。
地下水の抑制対策は、安全性の確保が何よりも求められる。同委員会は、抜本対策の取りまとめに当たり、この点は忘れないで検討を進めるよう求めたい。
地下貯水槽に関しては、旧原子力安全・保安院が整備を了承、その後に発足した原子力規制委員会も再検証をしないまま使用が続けられ、規制委のチェックの甘さが露呈した。
政府は、こうした経緯を踏まえて廃炉対策推進会議に汚染水処理対策委員会を設置した。4月26日に初会合を開催、これまでの対策を総点検し、汚染水処理問題を抜本的に解決する対策の検討を始めた。それだけに、同委員会には、東電の対策に厳しい目を向けることが必要だ。
今月16日の2回目の会合では、地下水の流入抑制を確実に行うためとして、東電の地下水バイパス計画や、地下水をくみ上げる立て坑の復旧など、これまでに検討されてきた対策だけでなく、複数の対策を追加する方針を確認した。
追加的な対策として、東電から1~4号機の地下水流入部分をふさぐ提案が出されたが、この方法は、これまで放射線量が高いために見送られてきた経緯がある。ゼネコンからは、陸側の地中に遮水壁を設置する提案が出されたが、周辺の地下水の水位が建屋内にたまっている汚染水の水位よりも下がると、汚染水が逆流する課題が指摘されている。
いずれの提案も、具体化するためにはこうした課題についての評価が必要になる。評価結果が妥当となっても、実行に移るまでには時間を要するだろう。同委員会は評価結果を踏まえ複数の対策を組み合わせて抜本対策の方向性を示す見通しだが、短期的に取り組む対策と、中長期的な対策が必要だ。適切な評価と実現可能な対策を示し、廃炉に向けた抜本的な解決方法を導いてほしい。
2013年5月19日 福島民友新聞社説