第三部 未知への挑戦(12) 低減への模索 「工業技術」に活路

原木に付着した放射性物質をどうにかしなければ-。郡山市の県林業研究センターは23年8月、原木に使用されるコナラの表面に付着した放射性物質の分布調査に着手した。
郡山市の林業研究センター敷地内にあったコナラの表面放射線量率を測定すると、根元より先端部の方が濃度が高いことが分かった。詳しい原因は不明だが、東京電力福島第一原発事故当時、広葉樹は落葉していたため、樹の表面に放射性物質が付着するのを遮らなかったからではないかとの指摘もあった。
林業研究センター林産資源部長の熊田淳(53)は仮説を立てた。「葉の表面から樹木内部に吸収された放射性物質はほとんどなかったはずだ。放射性物質による汚染は樹木の表面だけで、樹木内部にはまだ、入っていないのではないか」
樹木を輪切りにして計測すると、内部は検出下限値未満だった。熊田の予測は的中した。
■ ■
土壌中の放射性セシウムが根から吸収され、内部に蓄積される危険性を指摘する研究者もいた。しかし、今のところ樹木内部に放射性セシウムの蓄積は確認さていない。
シイタケなどのキノコ類はセシウムを吸収しやすい。キノコは地面や樹木表面から栄養となるカリウムを積極的に取り込むためで、カリウムと性質の似たセシウムも一緒に吸収するとみられている。
「表面を除染すれば、シイタケに移行するセシウムを抑えられる」と推定した。しかし、セシウムは樹皮の凹凸面に入り込んで、落ちにくくなっていた。雨水が樹の幹を伝ってセシウムを洗い流す自然低減効果は極めて少なかった。樹木表面の除染対策を急がなければならなかった。
■ ■
林業研究センターは樹木表面の放射性物質調査を始めてから間もなく、原木を洗浄して除染する方法を試した。「高圧で水を掛ければ取り除けるはず」。熊田が考えた通り、表面線量を6割ほど抑えることができた。しかし、1分間で約60リットルの水が必要で、処理できるのは90センチの原木1本程度だった。
除染の必要な原木は無数にある。膨大な時間がかかり、さらに大量の排水が出てしまう。放射性物質が含まれた汚染水のため、処理にも困る。実用化して普及させるのは難しかった。
何か別の方法はないか-。有効な手段を見いだせずにいた24年夏。熊田はバイクの部品などの工業製品を水を循環させて研磨する技術を知った。「原木の除染に応用できないか」。早速、試験に取り掛かった。(文中敬称略)
2013/05/25 12:09 福島民報

原木に付着した放射性物質をどうにかしなければ-。郡山市の県林業研究センターは23年8月、原木に使用されるコナラの表面に付着した放射性物質の分布調査に着手した。
郡山市の林業研究センター敷地内にあったコナラの表面放射線量率を測定すると、根元より先端部の方が濃度が高いことが分かった。詳しい原因は不明だが、東京電力福島第一原発事故当時、広葉樹は落葉していたため、樹の表面に放射性物質が付着するのを遮らなかったからではないかとの指摘もあった。
林業研究センター林産資源部長の熊田淳(53)は仮説を立てた。「葉の表面から樹木内部に吸収された放射性物質はほとんどなかったはずだ。放射性物質による汚染は樹木の表面だけで、樹木内部にはまだ、入っていないのではないか」
樹木を輪切りにして計測すると、内部は検出下限値未満だった。熊田の予測は的中した。
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土壌中の放射性セシウムが根から吸収され、内部に蓄積される危険性を指摘する研究者もいた。しかし、今のところ樹木内部に放射性セシウムの蓄積は確認さていない。
シイタケなどのキノコ類はセシウムを吸収しやすい。キノコは地面や樹木表面から栄養となるカリウムを積極的に取り込むためで、カリウムと性質の似たセシウムも一緒に吸収するとみられている。
「表面を除染すれば、シイタケに移行するセシウムを抑えられる」と推定した。しかし、セシウムは樹皮の凹凸面に入り込んで、落ちにくくなっていた。雨水が樹の幹を伝ってセシウムを洗い流す自然低減効果は極めて少なかった。樹木表面の除染対策を急がなければならなかった。
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林業研究センターは樹木表面の放射性物質調査を始めてから間もなく、原木を洗浄して除染する方法を試した。「高圧で水を掛ければ取り除けるはず」。熊田が考えた通り、表面線量を6割ほど抑えることができた。しかし、1分間で約60リットルの水が必要で、処理できるのは90センチの原木1本程度だった。
除染の必要な原木は無数にある。膨大な時間がかかり、さらに大量の排水が出てしまう。放射性物質が含まれた汚染水のため、処理にも困る。実用化して普及させるのは難しかった。
何か別の方法はないか-。有効な手段を見いだせずにいた24年夏。熊田はバイクの部品などの工業製品を水を循環させて研磨する技術を知った。「原木の除染に応用できないか」。早速、試験に取り掛かった。(文中敬称略)
2013/05/25 12:09 福島民報