その3は、既存施設に対する施策と広域処理のスケジュールについて考えます。
まず、下の画像をご覧下さい。
これは、一般的な広域処理における既存施設に対する施策です。
原寸大の資料(画像をクリック)
このように、市町村合併といった特別な事情がない限り、広域処理に参加する市町村が所有している既存施設は、最低でも1度は長寿命化を行っている施設になります。なぜなら、廃棄物処理法の基本方針や廃棄物処理施設整備計画における「老朽化」とは、「新設・・・老朽化」ではなく「新設・・・長寿命化・・・老朽化」になっているからです。
そして、①それらの(長寿命化を行っている)既存施設を広域組合に無償譲渡して、②広域組合の既存施設として運用しながら、③老朽化のタイミングに合わせて広域施設を建設するというパターンになります。
この場合は、広域施設をどこに建設するかといったことが、事前協議における重要な課題になります。
なお、人口の少ない自治体の場合は、そもそも焼却炉を整備していない(既存施設がない)ことがあるので、下の画像のように、広域施設が完成するまでの間、関係市町村から無償譲渡された広域組合の既存施設を利用するようなケースもあります。
原寸大の資料(画像をクリック)
(注)広域組合を設立する前に既存施設を廃止すれば、形の上では一番右のC村と同じ状況になりますが、廃棄物処理法の基本方針や廃棄物処理施設整備計画に適合しないごみ処理を行っていることになるので、廃止したまま広域組合を設立すると広域施設の建設に当って国は広域組合に対して財政的援助を与えることができなくなります。
▼
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、浦添市と中城村と北中城村との広域処理を想定して作成した資料です。
原寸大の資料(画像をクリック)
このように、B町が長寿命化を行わずに所有したまま休止している既存施設については、広域組合に無償譲渡すると、広域組合が再稼動をして長寿命化を行わなければならないことになります。
また、C村が長寿命化を行っていない既存施設を広域組合に無償譲渡すると、広域組合が長寿命化を行わなければならないことになります。
したがって、このような場合は広域施設の建設が大幅に遅れることになり、他の市町村(A市)の財政に累を及ぼすような施策(地方財政法第2条第1項の規定に抵触する施策)を行うことになります。
つまり、事前協議においてこのような状況になった場合は、一般的には協議会を設立する前に広域処理は「白紙撤回」ということになります。
▼
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、上の画像のB町が広域組合を設立する前に代替措置を講じて休止している既存施設を廃止した場合と、C村が広域組合を設立する前に既存施設の長寿命化を行った場合を想定して作成した資料です。
原寸大の資料(画像をクリック)
こうすれば、B町とC村はA市の財政に累を及ぼすような施策を行うことにはならないので、協議会を設立して、広域処理に関する本格的な協議を行うことができます。
ちなみに、B町の既存施設を溶融炉、C村の既存施設を焼却炉と考えれば、中北組合と同じ状況になります。
ここで、ちょっと「代替措置」に関する復習です。下の画像をご覧下さい。
原寸大の資料(画像をクリック)
中北組合が休止している溶融炉の再稼動と長寿命化を回避するためには、廃止する以外に方法はありません。
しかし、上の画像の左側(経過年数が10年以上の場合)にあるように、地域内(中城村と北中城村)に同様の施設が充足していない場合は、包括承認事項が適用されないので、廃止する場合は自主財源により代替措置を講じなければなりません。
その中北組合の場合は、地域内に同様の施設がないために焼却灰の民間委託処分を行っています。このことは、中北組合には包括承認事項が適用されないことを意味しています。
なお、この代替措置は経過年数には無関係なので、右側の経過年数が10年未満の場合であっても有効な措置になります。
ちなみに、このブログの管理者は中北組合が溶融炉を補助金の交付の目的に従って使用していた期間は10年未満になると考えています。なぜなら、環境省が毎年発表している全国の市町村の設備の稼働状況から推定すると、トータルで2年程度は溶融炉を使用していなかった(焼却灰の溶融処理を行っていなかった)期間があると思われるからです。
ただし、中北組合が代替措置を講じれば、経過年数の問題はなくなります。
▼
次に、下の画像をご覧下さい。
これは、A市の既存施設の老朽化のタイミングに合わせてB町とC村が広域組合を設立する前に既存施設を廃止した場合を想定して作成した資料です。
原寸大の資料(画像をクリック)
このように、広域組合においてはA市の既存施設だけが運用されることになりますが、広域処理におけるB町とC村によるごみ処理の外部委託については、他の市町村(A市)に累を及ぼすような施策(地方財政法第2条第1項の規定に抵触する施策)を行うことになります。
また、上の画像の場合、B町とC村の外部委託に関する施策は、広域施設の建設に当って確実に国の補助金を利用するためのA市の市民に対する「担保」にはならないので、協議会を設立する前に広域処理は「白紙撤回」ということになります。
なお、このような場合は、ほぼ100%、広域組合の設立に当ってA市の議会の承認が得られない状況になります。
▼
最後に、下の画像をご覧下さい。
これは、補助金適正化法の処分制限期間(ただし、設備)を経過した時点で、既存施設(ただし、設備)を廃止した場合を想定して作成した資料です。
原寸大の資料(画像をクリック)
中北組合は、この処分制限期間(ただし、暦の上での期間)を経過した時点で溶融炉を休止(実質上は廃止)しています。
しかし、その施策は、単に溶融炉を廃止しても補助金(ただし、設備に対する補助金)の返還が不要になるということだけのことであって、新たにごみ処理施設(広域施設を含む)を整備する場合に国の補助金を利用できるかどうかの問題とはまったく次元の異なる施策になります。
仮に、市町村が国の補助金を利用して整備した施設を補助金適正化法の規定に基づく処分制限期間を経過したことを理由に廃止しても、その市町村が新たに施設を整備するときに国の補助金を利用することができるようになった場合は、上の画像の下段にあるような国や県の計画や法令は全て適用除外ということになってしまいます。
国の補助金を利用して自治事務(ごみ処理)を行っている市町村が、このような単純な発想で溶融炉を休止したり広域処理を推進するための協議会を設立したりすることはあり得ないことですが、廃棄物処理法の基本方針や廃棄物処理施設整備計画、県の廃棄物処理計画、そして、地方財政法等の規定を知らない一般の住民の場合は、このような施策であっても、補助金適正化法の規定(第22条の財産処分の規定)に適合していれば問題はないと考えてしまう恐れがあるので、最後にアップしました。
いずれにしても、市町村の事務処理が関係法令の全てに適合していなければ、国の財政的援助を受けることはできません。
【補助金適正化法第3条第1項】
各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当っては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が法令及び予算で定めるところに従って公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。
結論に続く