沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

広域処理における1市2村のごみ処理計画を考える(まとめ)※追加資料(スケジュール)その3

2016-04-10 17:51:16 | ごみ処理計画

その3は、既存施設に対する施策と広域処理のスケジュールについて考えます。

まず、下の画像をご覧下さい。

これは、一般的な広域処理における既存施設に対する施策です。

原寸大の資料(画像をクリック)

このように、市町村合併といった特別な事情がない限り、広域処理に参加する市町村が所有している既存施設は、最低でも1度は長寿命化を行っている施設になります。なぜなら、廃棄物処理法の基本方針や廃棄物処理施設整備計画における「老朽化」とは、「新設・・・老朽化」ではなく「新設・・・長寿命化・・・老朽化」になっているからです。

そして、①それらの(長寿命化を行っている)既存施設を広域組合に無償譲渡して、②広域組合の既存施設として運用しながら、③老朽化のタイミングに合わせて広域施設を建設するというパターンになります。

この場合は、広域施設をどこに建設するかといったことが、事前協議における重要な課題になります。

なお、人口の少ない自治体の場合は、そもそも焼却炉を整備していない(既存施設がない)ことがあるので、下の画像のように、広域施設が完成するまでの間、関係市町村から無償譲渡された広域組合の既存施設を利用するようなケースもあります。

原寸大の資料(画像をクリック)

(注)広域組合を設立する前に既存施設を廃止すれば、形の上では一番右のC村と同じ状況になりますが、廃棄物処理法の基本方針や廃棄物処理施設整備計画に適合しないごみ処理を行っていることになるので、廃止したまま広域組合を設立すると広域施設の建設に当って国は広域組合に対して財政的援助を与えることができなくなります。

 

次に、下の画像をご覧下さい。

これは、浦添市と中城村と北中城村との広域処理を想定して作成した資料です。

原寸大の資料(画像をクリック)

このように、B町が長寿命化を行わずに所有したまま休止している既存施設については、広域組合に無償譲渡すると、広域組合が再稼動をして長寿命化を行わなければならないことになります。

また、C村が長寿命化を行っていない既存施設を広域組合に無償譲渡すると、広域組合が長寿命化を行わなければならないことになります。

したがって、このような場合は広域施設の建設が大幅に遅れることになり、他の市町村(A市)の財政に累を及ぼすような施策(地方財政法第2条第1項の規定に抵触する施策)を行うことになります。

つまり、事前協議においてこのような状況になった場合は、一般的には協議会を設立する前に広域処理は「白紙撤回」ということになります。

次に、下の画像をご覧下さい。

これは、上の画像のB町が広域組合を設立する前に代替措置を講じて休止している既存施設を廃止した場合と、C村が広域組合を設立する前に既存施設の長寿命化を行った場合を想定して作成した資料です。 

原寸大の資料(画像をクリック)

こうすれば、B町とC村はA市の財政に累を及ぼすような施策を行うことにはならないので、協議会を設立して、広域処理に関する本格的な協議を行うことができます。

ちなみに、B町の既存施設を溶融炉、C村の既存施設を焼却炉と考えれば、中北組合と同じ状況になります。

ここで、ちょっと「代替措置」に関する復習です。下の画像をご覧下さい。

原寸大の資料(画像をクリック)

中北組合が休止している溶融炉の再稼動と長寿命化を回避するためには、廃止する以外に方法はありません。

しかし、上の画像の左側(経過年数が10年以上の場合)にあるように、地域内(中城村と北中城村)に同様の施設が充足していない場合は、包括承認事項が適用されないので、廃止する場合は自主財源により代替措置を講じなければなりません。

その中北組合の場合は、地域内に同様の施設がないために焼却灰の民間委託処分を行っています。このことは、中北組合には包括承認事項が適用されないことを意味しています。

なお、この代替措置は経過年数には無関係なので、右側の経過年数が10年未満の場合であっても有効な措置になります。

ちなみに、このブログの管理者は中北組合が溶融炉を補助金の交付の目的に従って使用していた期間は10年未満になると考えています。なぜなら、環境省が毎年発表している全国の市町村の設備の稼働状況から推定すると、トータルで2年程度は溶融炉を使用していなかった(焼却灰の溶融処理を行っていなかった)期間があると思われるからです。

ただし、中北組合が代替措置を講じれば、経過年数の問題はなくなります。

次に、下の画像をご覧下さい。

これは、A市の既存施設の老朽化のタイミングに合わせてB町とC村が広域組合を設立する前に既存施設を廃止した場合を想定して作成した資料です。

原寸大の資料(画像をクリック)

このように、広域組合においてはA市の既存施設だけが運用されることになりますが、広域処理におけるB町とC村によるごみ処理の外部委託については、他の市町村(A市)に累を及ぼすような施策(地方財政法第2条第1項の規定に抵触する施策)を行うことになります。

また、上の画像の場合、B町とC村の外部委託に関する施策は、広域施設の建設に当って確実に国の補助金を利用するためのA市の市民に対する「担保」にはならないので、協議会を設立する前に広域処理は「白紙撤回」ということになります。

なお、このような場合は、ほぼ100%、広域組合の設立に当ってA市の議会の承認が得られない状況になります。

最後に、下の画像をご覧下さい。

これは、補助金適正化法の処分制限期間(ただし、設備)を経過した時点で、既存施設(ただし、設備)を廃止した場合を想定して作成した資料です。

原寸大の資料(画像をクリック)

中北組合は、この処分制限期間(ただし、暦の上での期間)を経過した時点で溶融炉を休止(実質上は廃止)しています。

しかし、その施策は、単に溶融炉を止しても補助金(ただし、設備に対する補助金)の返還が不要になるということだけのことであって、新たにごみ処理施設(広域施設を含む)を整備する場合に国の補助金を利用できるかどうかの問題とはまったく次元の異なる施策になります。

仮に、市町村が国の補助金を利用して整備した施設を補助金適正化法の規定に基づく処分制限期間を経過したことを理由に廃止しても、その市町村が新たに施設を整備するときに国の補助金を利用することができるようになった場合は、上の画像の下段にあるような国や県の計画や法令は全て適用除外ということになってしまいます。

国の補助金を利用して自治事務(ごみ処理)を行っている市町村が、このような単純な発想で溶融炉を休止したり広域処理を推進するための協議会を設立したりすることはあり得ないことですが、廃棄物処理法の基本方針や廃棄物処理施設整備計画、県の廃棄物処理計画、そして、地方財政法等の規定を知らない一般の住民の場合は、このような施策であっても、補助金適正化法の規定(第22条の財産処分の規定)に適合していれば問題はないと考えてしまう恐れがあるので、最後にアップしました。

いずれにしても、市町村の事務処理が関係法令の全てに適合していなければ、国の財政的援助を受けることはできません。

【補助金適正化法第3条第1項】

各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当っては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が法令及び予算で定めるところに従って公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。

結論に続く


広域処理における1市2村のごみ処理計画を考える(まとめ)※追加資料(スケジュール)その2

2016-04-10 09:18:08 | ごみ処理計画

その2の記事を書く前に、まず、下の画像をご覧下さい。

これは、その1で書いた事前協議と協議会における協議の概要を整理した資料です。

なお、事前協議は広域処理において国の補助金を利用することができることを確認することが重要な事務処理になります。したがって、協議会は国の補助金を利用することができる前提で設立されます。

原寸大の資料(画像をクリック)

普通、広域処理に関する事務処理は、関係市町村が整備しているごみ処理施設が老朽化する頃に共同で広域施設を建設する事務処理になります。

したがって、関係市町村が整備しているごみ処理施設は、少なくとも1度は長寿命化を実施していることになります。

しかし、浦添市はこのケースに該当しますが中北組合は該当しません。そして、溶融炉は所有したまま平成26年度から休止しています。しかも、「最終処分ゼロ」を継続して行くことを目標にしている浦添市と違って、中北組合は焼却灰の民間委託処分を行っています。

広域施設が完成するときまで1市2村がバラバラにごみ処理を行っていくのであれば、中北組合の施策は他の市町村の財政に累を及ぼすような施策(地方財政法第2条第1項の規定に抵触する施策)にはなりませんが、広域処理を推進するためには、①広域施設を建設する前に広域組合を設立しなければなりません。また、②広域組合を設立する前に関係市町村が共同で「地域計画」を策定して国の補助金を利用することができることを確認しておかなければなりません。そして、③広域組合を設立した場合は関係市町村が所有している既存のごみ処理施設を広域組合に無償譲渡することになります。

このため、浦添市と中北組合(中城村・北中城村)との広域処理については、事前協議において中北組合の焼却炉と溶融炉に対する施策を決定しておかなければ、協議会は永遠に設立することができないことになります。

しかし、中城村と北中城村の村長は、平成27年度に表明した施政方針において平成28年度に協議会を設立するとしています。

ということで、ここからが本題です。下の画像をご覧下さい。

これは、1市2村のおける広域処理のメリットとデメリットを一番分かりやすく整理した資料です。1市2村においては、この他にもメリットとデメリットがあります。しかし、一番大きなものはここにあるものだと考えます。

原寸大の資料(画像をクリック)

この中で重要なのは、中北組合(中城村・北中城村)には、ほとんどデメリットがないということです。

そして、浦添市の場合は、メリットよりもデメリットの方が大きいということです。

なぜ、浦添市の場合はデメリットが大きいのか?

それは、①中北組合(中城村・北中城村)は、現時点では国の補助金を利用してごみ処理施設の整備(長寿命化・更新・新設等)を行うことができない自治体だからです。しかも、②休止はしているものの、国内では稼動している事例や長寿命化が行われている事例のない溶融炉を所有して自治体だからからです。更に、③流動床炉という塩分濃度の高い焼却灰(飛灰)を排出する焼却炉を所有している自治体だからです。

次に、下の画像をご覧下さい。

これは、このブログの備忘録にアップしている広域処理の難しさを整理した資料です。特に8~10が重要なポイントになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

次に、下の画像をご覧下さい。

これも、このブログの備忘録にアップしている中北組合と補助金の関係を整理した資料です。特に、6と10が重要なポイントになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

続いて、下の画像をご覧下さい。

これは、その1の最後にアップした広域組合と補助金の関係を整理した資料(備忘録にアップしている資料)です。これについては、1から10の全部が重要なポイントになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

このように、浦添市にとっては、中北組合との広域処理については、①補助金を利用することができなくなるリスクや、②スケジュールが遅れるリスクのある事務処理になります。

ただし、上から2番目の画像の一番下にあるように、浦添市にとっては、①や②のリスクを回避できないと判断した場合は、国の補助金を利用してスケジュール通り「単独更新」を行うことができるので、実質的には、それぼど大きなデメリットはないことになります。

むしろ、中北組合(中城村・北中城村)の方は、①や②のリスクを回避する施策を講じなければ広域処理が「白紙撤回」になってしまうので、真剣に対応しなければならない事務処理になります。

最後に、下の画像をご覧下さい。

これは、事前協議において決定することと協議会において決定することを整理した資料です。

 原寸大の資料(画像をクリック) 

このように、事前協議における①から⑧までは、平成27年度においてほぼ決定していることだと思われます。

したがって、平成28年度において⑨を決定(中北組合の溶融炉を廃止するための代替措置に関する具体的な方法を決定)すれば、事前協議において協議会の設立に必要になる事務処理は全て終了すると思われます。 

その3に続く