奥様はバンパイァ 31
○どうしてわかったのだ。
わたしは部屋から流れる害意を感じられなかった。
洋子が床に倒れているビジョンを見られたので自己陶酔にひたっていた。
おれにもおくればせながら能力が現れた。
そんなことを不遜にも思っていたのだ。
あぶなかった。
カミサンの警告がなかったらボウガンの餌食になっていた。
矢のはなつ光とビュという音に怯えた。
玲加とカミサンが部屋にとびこんだ。
○ぼんやりと薄汚れた裸電球の光のなかに人狼がいた。
「今晩は……」犬飼武がニャニャ笑いながら立っていた。
「洋子はどこ? なぜなの。なぜ、クラスメートばかり襲うのよ」
「なぜなの? わたしも聞きたいわ。教えてくださる」
「人間と生活していると勘が鈍るのかな。洋子はあんたら九尾族につながる家系の
ものだ」
「吸美族とよんでもらいたいわね」
「なにをそんな言葉遊びにこだわるのですか、オバサマ」
「あら、ババアと呼ぶのはやめてくれたのね」
部屋には武だけがいた。
でもたしかにこの部屋に洋子の気配があったのだ。
シャリファ・アスマ
pictures by 「猫と亭主とわたし」
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○どうしてわかったのだ。
わたしは部屋から流れる害意を感じられなかった。
洋子が床に倒れているビジョンを見られたので自己陶酔にひたっていた。
おれにもおくればせながら能力が現れた。
そんなことを不遜にも思っていたのだ。
あぶなかった。
カミサンの警告がなかったらボウガンの餌食になっていた。
矢のはなつ光とビュという音に怯えた。
玲加とカミサンが部屋にとびこんだ。
○ぼんやりと薄汚れた裸電球の光のなかに人狼がいた。
「今晩は……」犬飼武がニャニャ笑いながら立っていた。
「洋子はどこ? なぜなの。なぜ、クラスメートばかり襲うのよ」
「なぜなの? わたしも聞きたいわ。教えてくださる」
「人間と生活していると勘が鈍るのかな。洋子はあんたら九尾族につながる家系の
ものだ」
「吸美族とよんでもらいたいわね」
「なにをそんな言葉遊びにこだわるのですか、オバサマ」
「あら、ババアと呼ぶのはやめてくれたのね」
部屋には武だけがいた。
でもたしかにこの部屋に洋子の気配があったのだ。
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