田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

怨霊2/奥さまはバンパイァ 麻屋与志夫

2009-08-28 13:09:37 | Weblog
奥様はバンパイア 39

○このモールの建っている辺りが昔は那須野が原の南端だった。

それは信じられる。

地形からいってもまちがいない。

しかし、この地で滅んだ九尾族の怨念が凝って、ここに次元の裂け目が出来てい

る。にわかには、信じられない。

○わたしは耳をすます。

○狼の雄叫びめいた声が響いている。

確かにこれは!! 狼の雄叫びだ。

わたしは立ち上がろうとした。

「横になったほうがよくきこえるわよ」

カミサンにいわれたとおりにした。

大地から軍馬や、ひとびとの相争う気配が伝わってくる。

「これは……? どうなっているのだ」

わたしにもイメージがなだれこんできた。

犬飼のものと戦っているのは鎧もつけていない女人ばかりだ。

「まだなの。吸美の援軍はまだ到着しないの」

悲痛な叫びがとびかっている。

「あのときわたしたちの祖先は、野生の麻の群生地にまよいこんでしまっていた

の。わたしの記憶ではそうなっているのよ」

わたしのイメージはふつうであったら過去を照らすことはない。

この土地に残留した怨念のイメージがあまりに強烈すぎる。

そして過去に向かうカミサンノ記憶の確かさが助けとなっている。

麻の群落で、麻の強い臭いに嗅覚も方向感も曖昧になっている。

先行している九尾族の護衛にかけつけるどころか麻に惑わされ臭いに酔い、ごろっ

と横になってしまう者さえいる。

「だめよ。これは罠よ。はやく玉藻さまに追いつかなければ」

追いつく。追いつく。

「どうしたのG。イメージに酔っている」

カミサンに肩を揺すられていた。

「洋子さんをもういちど探しにいこう」


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