奥様はバンパイア 38
○「洋子は見つからなかったの」
玲加がどこからかあらわれた。
不安で声がふるえている。
応えはもどってこない。
○帰りは無事。なにごともなくモールの駐車場からでられた。
乗ってきたクリッパーはそのままにした。
○夜風がふいている。JR日光線の土手にわたしたち三人は腰をおろしていた。
モールの全景が見下ろせる。
見下ろせるといっても土手の高さはモールの屋上くらいだ。
武がいた小屋には明かりはついていない。
「結局また空振りよ。でもたいへんなことがわかった」
「なにがあつたのおばさま? じらさないで、早く教えて」
「ここに来た時、狼の遠吠えを聞いたでしょう」
玲加は耳をすます。
「いまでも聞こえるわ」
「落ち着いて……聞き耳をたててごらん」
「あら……なにかおかしい」
「そうよこの遠吠えは時空を超えたもの。この土地に凝り固まった地霊の叫びみ
たいなもの。わたしたちの祖先が滅びていったまさにその箇所にモールが建てられ
ているの」
「じゃこれは雄叫びね。九尾族を滅ぼした凱旋の雄叫びね。ヒドイ」
「九尾族のなかの武闘派、敵のマインドすら操ることのできるわたしたちが駆けつ
けるのが遅すぎたのよ。その理由もなんとなくわかってきたの……」
「なにがあったのだ」
「玲加。わたしの体、変わった臭いがするでしょう」
「ほんとだ。シビレそう……」
「なんの臭いだか……わかるわよね」
玲加がうっとりとした顔になる。とろんとしてまぶたが閉じそうだ。
「猫にまたたび。きつねに大麻草」
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↓
○「洋子は見つからなかったの」
玲加がどこからかあらわれた。
不安で声がふるえている。
応えはもどってこない。
○帰りは無事。なにごともなくモールの駐車場からでられた。
乗ってきたクリッパーはそのままにした。
○夜風がふいている。JR日光線の土手にわたしたち三人は腰をおろしていた。
モールの全景が見下ろせる。
見下ろせるといっても土手の高さはモールの屋上くらいだ。
武がいた小屋には明かりはついていない。
「結局また空振りよ。でもたいへんなことがわかった」
「なにがあつたのおばさま? じらさないで、早く教えて」
「ここに来た時、狼の遠吠えを聞いたでしょう」
玲加は耳をすます。
「いまでも聞こえるわ」
「落ち着いて……聞き耳をたててごらん」
「あら……なにかおかしい」
「そうよこの遠吠えは時空を超えたもの。この土地に凝り固まった地霊の叫びみ
たいなもの。わたしたちの祖先が滅びていったまさにその箇所にモールが建てられ
ているの」
「じゃこれは雄叫びね。九尾族を滅ぼした凱旋の雄叫びね。ヒドイ」
「九尾族のなかの武闘派、敵のマインドすら操ることのできるわたしたちが駆けつ
けるのが遅すぎたのよ。その理由もなんとなくわかってきたの……」
「なにがあったのだ」
「玲加。わたしの体、変わった臭いがするでしょう」
「ほんとだ。シビレそう……」
「なんの臭いだか……わかるわよね」
玲加がうっとりとした顔になる。とろんとしてまぶたが閉じそうだ。
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