田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

怨霊/奥様はバンパイア 麻屋与志夫

2009-08-27 07:40:56 | Weblog
奥様はバンパイア 38

○「洋子は見つからなかったの」

玲加がどこからかあらわれた。

不安で声がふるえている。

応えはもどってこない。

○帰りは無事。なにごともなくモールの駐車場からでられた。

乗ってきたクリッパーはそのままにした。

○夜風がふいている。JR日光線の土手にわたしたち三人は腰をおろしていた。

モールの全景が見下ろせる。

見下ろせるといっても土手の高さはモールの屋上くらいだ。

武がいた小屋には明かりはついていない。

「結局また空振りよ。でもたいへんなことがわかった」

「なにがあつたのおばさま? じらさないで、早く教えて」

「ここに来た時、狼の遠吠えを聞いたでしょう」

玲加は耳をすます。

「いまでも聞こえるわ」

「落ち着いて……聞き耳をたててごらん」

「あら……なにかおかしい」

「そうよこの遠吠えは時空を超えたもの。この土地に凝り固まった地霊の叫びみ

たいなもの。わたしたちの祖先が滅びていったまさにその箇所にモールが建てられ

ているの」

「じゃこれは雄叫びね。九尾族を滅ぼした凱旋の雄叫びね。ヒドイ」

「九尾族のなかの武闘派、敵のマインドすら操ることのできるわたしたちが駆けつ

けるのが遅すぎたのよ。その理由もなんとなくわかってきたの……」

「なにがあったのだ」

「玲加。わたしの体、変わった臭いがするでしょう」

「ほんとだ。シビレそう……」

「なんの臭いだか……わかるわよね」

玲加がうっとりとした顔になる。とろんとしてまぶたが閉じそうだ。

「猫にまたたび。きつねに大麻草」


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