路上のマグロ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

路上のマグロ

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血まみれの絶叫!
路上に倒れて痙攣している男!!
傷口からながれる血が少なくはないか!!!

このころになってひとびとは、
歌舞伎町のこの宵の人ゴミに通り魔が凶器をふるっているのに気づいた。
刺殺魔の犠牲となったものは十名近くいる。
一瞬の出来事だ。
路上にマグロのようにころがっている。
解体を前にした俎上のマグロのようだ。
でもここは日本一の繁華街、歌舞伎町の路上だ。

犠牲者を中心にしてヒトの波がさっと引いていく。
波紋が広がるようだ。
付近をパトロールしていた警官がかけつけた。
ひとびとが、携帯をかまえている。
たちあがったレッサパンダ。
直立パンダが携帯をかまえているようだ。
夢中で知り合いに刺殺魔VS警官の、
これから起こる格闘――逮捕劇を発信しようとしている。
断末魔の苦しみに痙攣する犠牲者のことなどかんがえてはいない。
いかに刺激的な動画を友だちに生撮りしておくれるか。
息をつめている。期待している。
さらに異常なことが起きることを。

すでに予想をはるかに超えた異常事態なのにわかっていない。
純はミズ吸血鬼の背後のせまった。
女からは超音波が発信されている。
超音波の定義は? わすれた。
20kHzを超える音域??
まさに彼女からでているのはその超音波だった???

「だれかいる。
近寄ってくる。
わたしはコレでバイバイするね。
たっぷり食事をたのしんで」
「なんてことをいうのだ。ここはおまえらの猟場か」

女がふり返った。にこやかに笑っている。
女は美しい顔はそのまま牙をむき、鉤爪をのばしておそいかかってきた。
その刹那、虚空に羽ばたきをきいた。
黒い影が上空からおおいかぶさるようにおそってきた。

「じゃますることは、許しませんよ」
これは蝙蝠の羽ばたきだ。
彼女の実体は上空にある。
純はいつの間にか抜いた鬼切丸を影に向かって突きたてた。
路上で一回転した。
前に転がり蝙蝠からの攻撃をさけた。
背後でバサッと蝙蝠の着地する音。

「純。おまたせ」
前に翔子がたっていた。
「早かったな」
「校長先生が車で連れてきてくれたの」




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