田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

オオカミがでた!!/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-18 13:37:23 | Weblog
オオカミがてた!!

3

遠吠えがする。
子犬がせわしなく砂場を走り回っている。
遠吠えにはゾクッとするような野性味があった。
子犬がいちにんまえに低い唸り声をあげている。
公園の外の暗がり、弁天町の方角から、なにか近づいてくる気配がする。
獣の臭気。
唸り声。
そして黒犬があらわれた。

「あれは黒犬なんかじゃない。狼よ」

紅子がむぞうさに翔子から離れていく。
紅子と翔子の視線の先には、狼と男。

「あんたらドイツの黒い森からさ迷いでたの? それとも」
「そのそれともだ。シュヴァルッヴァルト(黒い森)はカルパチア山脈にもあるだろうが」
「東京へヤバイやっらが侵攻してきたときいたわ。それあんたたちのこと?? そうよね」
「なにいっている。おれたちのほうがさきだった」
「どう、住みいいみたいね。この日本が気に入っているみたいね」
「そちらの翔子ちゃんとはにどめだな」

いわれなくても翔子にはわかっていた。
あの黒犬だ。この男だったのか。
あの薄暗い鉄格子の影に隠れていたのは。

「翔子。逃げなさい」

遅かった。
男はひとりではなかった。
数人の男たちに取囲まれた。

「翔子。刀をぬいて」
「置いてきたの。近所の散歩だったから」
「ばか。こんなときに、素手なの」
「ごめん」

わたし吸血鬼にあやまっている。
わたし紅子の守られている。
バカみたい。



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