田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

呪いは彼岸からも現世にとどく  麻屋与志夫

2019-09-23 16:02:03 | 超短編小説
9月23日 月曜日
呪いは彼岸からも現世にとどく

彼岸休みで元塾生が訪ねてきてくれた。

いまや老教師となったわたしはしわがれた声で話し出した。
「両親の病気で、東京からUターンして塾を始めた。敵国の言葉を教えていると村八分にあった」
「だって前の東京オリンピックの後ですよね」
「田舎町のひとたちは、鬼畜米英ということを忘れていない。夫や息子兄弟に戦死されたひとがまだあのころは大勢生きていた」
「だってそれは先生とは関係ないでしょう」
「東京生まれの妻に嫉妬した老婆もいた」
「美智子先生きれいでしたものね。ぼくらはファンでした」

妻はは寂しさを紛らわすために猫を飼った。
すると野良猫の死骸を塀越しになげこまれた。

わたしはなんの弁明も抵抗もしなかった。
妻は毎晩、東京に戻りたいと泣いていた。
こちらが沈黙していれば、いつかイジメの火も消える。
投げこまれ猫はそのつど庭に穴を掘って埋葬した。
妻は毎晩泣きつづけた。ひざのうえにミューがいつものっていた。
わたしはなんの報復もしなかった。
ひとつ抵抗すれば倍になって戻ってくる。因果応報。黙っているに限る。
老婆たちは次々と交通事故。病死。ついには、じぶんたちの家から火をだして、裏長屋は全焼した。
「ぼくがお世話になったのはそのころでしたね」
いまは焼け跡はひろびろとした駐車場になっている。
こちらにヘッドライトをむけて停めてある車。何百台という車に睨まれているように感じる。老婆たちの顔に見えてくる。
女の人の嫉妬心て怖いよな。
 

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