田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園/吸血鬼浜辺の少女外伝 麻屋与志夫

2008-09-16 07:37:04 | Weblog
 だが、番場にはまだ異界の気配は感じられない。
「空気が濁っていない。だれかが出入りしている証拠だ」
 じめじめした空気。
 だがたしかに。
 空気は淀んでいない。 

 抜け穴はほどなくつきた。
 御殿山の裾の今宮神社のあたりだ。
「封印を解き。
 この穴にもぐりこむことのできる人間が。
 鹿沼にはいないと思われている。
 なめられたものだ。
 それがさいわいした。
 わたしは、結界をはり。
 長いこと鹿沼の若者のために塾をやってきた。
 こんなちかくに悪意を噴き出す場所があったとはな」
「先生。
 故郷鹿沼のためなら。
 ぼくは先生の教えにしたがい闘います」
 三津夫と番場。
 ふたりが声をそろえて麻屋を支える。
 
 やや広くなった行き止まりに大谷石の台があった。
 生贄台? 
 石室とも見えた。
 
「ケイコさん」
 三津夫がかけよった。
 人型の窪みにケイコが綱で固定されていた。
「だいじょうぶ。息はしている。しっかりろ」
 三津夫が夢中で縛めをとく。
 
 綱は9本あった。
 綱からは血がながれていた。
 綱の先にはそれぞれ9個の小さな壺がある。
「先生……麻屋先生。わたし、わたし」
 ケイコが泣いている。
 弱りきっている。
 このまま発見がおくれれば失血死していたろう。
「どんなことがあっても……。
 どんな理由があっても……。
 ケイコが犬飼の人たちのために生贄となって。
 人柱となって死ぬなんてことは許されない。




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