だが、番場にはまだ異界の気配は感じられない。
「空気が濁っていない。だれかが出入りしている証拠だ」
じめじめした空気。
だがたしかに。
空気は淀んでいない。
抜け穴はほどなくつきた。
御殿山の裾の今宮神社のあたりだ。
「封印を解き。
この穴にもぐりこむことのできる人間が。
鹿沼にはいないと思われている。
なめられたものだ。
それがさいわいした。
わたしは、結界をはり。
長いこと鹿沼の若者のために塾をやってきた。
こんなちかくに悪意を噴き出す場所があったとはな」
「先生。
故郷鹿沼のためなら。
ぼくは先生の教えにしたがい闘います」
三津夫と番場。
ふたりが声をそろえて麻屋を支える。
やや広くなった行き止まりに大谷石の台があった。
生贄台?
石室とも見えた。
「ケイコさん」
三津夫がかけよった。
人型の窪みにケイコが綱で固定されていた。
「だいじょうぶ。息はしている。しっかりろ」
三津夫が夢中で縛めをとく。
綱は9本あった。
綱からは血がながれていた。
綱の先にはそれぞれ9個の小さな壺がある。
「先生……麻屋先生。わたし、わたし」
ケイコが泣いている。
弱りきっている。
このまま発見がおくれれば失血死していたろう。
「どんなことがあっても……。
どんな理由があっても……。
ケイコが犬飼の人たちのために生贄となって。
人柱となって死ぬなんてことは許されない。
応援のクリックありがとうございます
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「空気が濁っていない。だれかが出入りしている証拠だ」
じめじめした空気。
だがたしかに。
空気は淀んでいない。
抜け穴はほどなくつきた。
御殿山の裾の今宮神社のあたりだ。
「封印を解き。
この穴にもぐりこむことのできる人間が。
鹿沼にはいないと思われている。
なめられたものだ。
それがさいわいした。
わたしは、結界をはり。
長いこと鹿沼の若者のために塾をやってきた。
こんなちかくに悪意を噴き出す場所があったとはな」
「先生。
故郷鹿沼のためなら。
ぼくは先生の教えにしたがい闘います」
三津夫と番場。
ふたりが声をそろえて麻屋を支える。
やや広くなった行き止まりに大谷石の台があった。
生贄台?
石室とも見えた。
「ケイコさん」
三津夫がかけよった。
人型の窪みにケイコが綱で固定されていた。
「だいじょうぶ。息はしている。しっかりろ」
三津夫が夢中で縛めをとく。
綱は9本あった。
綱からは血がながれていた。
綱の先にはそれぞれ9個の小さな壺がある。
「先生……麻屋先生。わたし、わたし」
ケイコが泣いている。
弱りきっている。
このまま発見がおくれれば失血死していたろう。
「どんなことがあっても……。
どんな理由があっても……。
ケイコが犬飼の人たちのために生贄となって。
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