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田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

人狼月にほえる イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-15 07:36:34 | Weblog
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「やっぱり……あのときのコゾウか」

声だけがひびいてきた。  
枯れ草の動きが止まっている。 
静かな宵の静寂が破られようとしている。

「おまえの横にいる。マゴだな。名前はなんという」
「翔太だよ」
「ほう、翔太にもおれの声がきこえるのか。勝平よ、あのときのおまえとそっくりだな。ずっとおまえのことは、気になっていた」
「おれを追いかけてきたのは人狼、おまえだったのか」
「副谷軍曹と呼んでもらいたいな」    

人狼が吠えた。
怒号だ。

「なんでなんだ。どうしてだ。今頃になって動きだすとは……食欲を満すだけではあるまい。なにがねらいだ」
「人狼の世界を拡大するためさ」
「どうして、いまになって」
「わからないのか。終戦の日から、六十年と六か月六日……経過したのだ。その日に完全に人狼として復活したのだ」

666。
やはりこの者は悪魔なのだ。

史上まれにみる残虐な犯罪が増えている。
とくに児童にたいする鬼畜にひとしい殺しが起きている。
ここから5キロとは離れていない日光の今市大沢で。
1年生の女児が刺殺される残虐な事件がおきた。
人狼の放つ凶悪な波動に触発されている。
変質者がその波動に同調しているのだ。
鋭利なナイフを人狼の牙がわりにして児童を襲いだしている。

勝平は呆然と副谷をみる。
こいつらやはり悪魔だ。

「それにしても、人間ってやつは、どうしてそんなに早く歳をとる。わしが、うとうとしている間に、すっかりジジイだな……」
「いうな。だからおれには、息子がいる。孫がいる。こうして永遠にいきつづけるのだ」
「人はこうして……命を長らえていくんだよ。ジンロウのオジサン」
「気安く、呼び掛けるな」
「もういちど訊く。なぜおれたち迫害する」
「わかっているはずだ。人狼の姿を見ることのできるあんたらの能力が邪魔なんだ」
「やはり、ただそれだけのことで」

人狼はあの頃から井波と副谷の体をのっとって生きてきたのだ。
いままでも、むかしから、つぎつぎと人の体をうばってきたのだろう。
勝平に理解できるようにいまは副谷の体で現われている。

だがすべて擬態だ。  
いかなる姿にも変容することができる。

悪魔だ。 
こいつらは悪魔の化身だ。
青白く冴えた月。
銀色に粉を人狼の周辺にまきちらしている。

銀色に輝く星々のなかの女王。
青白き月。 
狼は月に吠えている。
遠吠えに呼応して群れてきた。
 


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