田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

GG歌舞伎町にただよう/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-10 09:23:45 | Weblog
3

おびただしい拍手が起きた。
おびただしい笑い声が湧いた。
おびただしい賞賛の声。

「路上のパフォーマンスかしら」

クノイチガールズがつぎつぎと駆けつける。
観衆にはルシファーの姿は見えない。
GGとクノイチガールズの剣の先に魔王が存在している。
でも、かれらには視認できない。 
必死で魔王との攻防に賭けるガールズとGGの剣にでも彼らは気づいた。

「竹光じゃないみたい」
「摸擬刀じゃないよ」
「キャア。『GG刀エクササイズ』の師範だぁ」
GGの顔をしつている女の子がいた。
「あれ真剣よ」
「わぁ、カッコイイ。サムライだあ」
 もうたいへんな騒ぎになった。
「後日、あいまみえよう」
GGの脳内にルシファーの思念がながれこんだ。
現われるのもふいであった。
さにに見事な消滅。
あとには、なにも残らない。

「これでは、後の追いようもない」
GGはゴールデン街をぬける。
「なんだこれは……?」
歩きだしたらさらに酔いがまわってきた。
酔いは、さめていたはずなのに。
……おかしい。

GGは木馬の階段を下りていた。
(おおい。沼尾いるか。スチールギター弾いているか。聖くん、アソビマショウ。いやちがう、木馬はジャズ喫茶だ。ダダッ広い店内だがライブハウスじゃない。沼尾、聖ちゃん、今君はどこで演奏しているんだぁ)ふいに、ギターの音が起きる。いるじゃないか。おれのすぐそばに、いるじゃないか。死んでなんかいない。うれしくて涙があふれた。
「GG、さあいきましょう。こんな階段で寝てしまってはだめよ」
「GGって泣きジョウゴなの……?」
ああ、むかしはヨカッタ。
ムカシはよかった。
GGはよろよろと歩きだす。
ガールズに両側から支えられて。
歳を重ねることの恐怖。
ジジイになることの不安。
いつか、ミイマとの別離がやってくる。
それがこわい。
それが恐ろしい。
Fとの思いでを断ち切ったミイマは強い女だ。
最強のMVだ。
おれは暗黒魔王に魂をうりわたしてもミイマのそばにいたい。
別れるのはいやだ。
「だったら、GG……ミイマに噛んでもらったら。噛んでもらったら」
麻衣の声がエコーとなって耳もとにひびく。
麻衣の顔が魔王の顔とダブル。
「いまからでも、遅くはないぞ」 
ああ、かぎりない高みから。
あるいはすぐ隣から。
おれに憑けいろうとしているものがいる。
ああ、おれの妄想のよき広がり。
都会の夜よ。
都市伝説よ。
ここに生まれでるのだ。
くるくる変わるイメージと魔王の念波から逃れたとき、GGは歌舞伎町交番にいた。
「そうか、翔子ちゃんのオジイチャンなのだ」
麻衣が恐縮して謝っている。
相手は百目鬼刑事だった。
「日名子さんの事件、やはり誘拐も、こんどの行方不明もじぶんから仕組んだことらしいですよ」
百目鬼が声をひくめた。
GGは一気に酔いがさめた。





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