田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園 第一部完  麻屋与志夫

2008-10-05 20:07:52 | Weblog
助かった。
だれか助けにきてくれた。
救助隊がきた。
どこから。
どこでもいい。
なんとか、たすかりそうだ。
武もそう思った。
麻屋さん。麻屋さん。
鹿未来の顔があった。
「あっ、わたしは……」
そこは、宙にういた鹿沼ではなかった。
玉藻の前の棺の脇だった。
「玉藻の紋章にふれたとたんに気をうしなってしまったのですよ」
生気をねこそぎ吸いとられたようだ。
からだがだるい。
宙にそれこそういているようだ。
無力感に麻屋はふるえていた。
「塾などやって、格闘技の精進をおこたっているから、わたしにはこの狐と闘う術がない。塾の経営で疲れ過ぎた。幻覚を打ち破る力がない。再度この狐の霊魂を封印することができない」
「いまわ悪い時代なのですね。悪いものほど宣伝がうまいから。適塾や松下村塾のような人間育成に力をいれる塾はほろびていくしかないのですね。いままでのあなたのご苦労がわかります。本物の生きにくい時代なのですよ」
「でも、いま戦っているこの子たちは立派です」                  

「よくもよくも……」
怨みがましい玉藻の声が棺おけの内部でする。
「わたしの血のあじはいかがかしら」
鹿未来の血を紋章の上からそそいだのだ。
同族間の争いをタブーとするためだ。
同じ種族の血をすうと、かれらは滅びないまでも、動きかとれなくなる。
棺からうすい煙りがわきでてきた。
「せんぱい」
洞窟の入り口からVセクション日本支部長の高宮の声がふってきた。

麻屋のむかしの同僚がかけつけてくれたのだ。
武の携帯の電波がとどいていたのだ。
武のSOSをキャッチしたの

吸血鬼掃討作戦はいまはじまったばかりだ。


エピローグ

家にもどった麻屋をあたたかな味噌汁が待っていた。
「あなた、朝から散歩ですか。まさかジョギングでないでしょうね」
夫の身をあんじる妻が、それでものんびりとした声をかける。

栃木テレビは鹿沼のホームレス殺人事件が解決したことをれ報じている。
路上で通学中の女子生徒にきりつけた通り魔が自白したというのだ。

しかし、市民はしらない。
このつかの間の鹿沼の平和がタカコたちおおくの若者の必死の闘いが支えてくれたことを。




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