田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

追いかける/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-03 09:45:38 | Weblog
追いかける

9

純と翔子はルー・紅子をつけていた。
逃げ際にそう名のった。
「わたしは、紅子。ルー・紅子。そうおぼえておいてクンナマシィ」
なにから日本語を学んでいるのだろう。
テレビで江戸の遊郭ものでもみたのだろう。
いやアニメで吉原がでるものがあった。
紅子はときおり、とんでもない日本語をつかう。
そして、
ふたりに切りこまれて「サテイシェクス逃げるね」
といわれて理解するのに少してまどった。
なにが36計逃げるにしかず、だ。

そのまに、紅子は暗闇にまぎれてしまった。

西武新宿線を左手にみながら、新大久保方面に向かってふたりは歩いていた。
「見失ったわね」
「いや、まだなにか異様な気配はのこっている」
もう百人町にはいっている。
都知事のいった「第三国人」がきゅうにふえてきた。
あの言葉にはさまざまな批判があった。
差別用語にも指定されているとおもう。
なぜ、外人と簡潔にいわないのだろう。
だいたい日本なんて、どこにあるのだ。
株式の70%は外人買いだといわれている。
昨日の政局の混乱は……
と純はめずらしく日本の現状に想いを馳せながら歩きつづける。

どこのことばかわからない。
何か喚いている。
宵の口なのに泥酔したおとこたち。

追跡をあきらめかけた。
せまい飲み屋街だ。
両脇に屋台店ていどの店がうねうねとつづいている。

「スゲエ、金髪美人だったな」
「ああ。シャラポワにそっくりだった」

「そのシャラポワはどっちにいきましたか」

飲み屋街をぬけるとコンクリートの塀がつづく一角にでた。
広い屋敷だ。



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