14タイムリープ
男は弁天池の鯉や亀を眺めていた。
亀は百年生きるというのはほんとうなのかな。
ぼくが、初市の露店商から買った亀、10円だった。
「無駄遣いしゃがって」
父の怒声が耳元にひびいてくる。
あの亀はまだ生きているかな。
家に着くと誰もいない。
国産の材木が輸入材におされて売れなくなった。
妙にだだっ広い屋敷に人の気配がない。
家業である材木問屋は成り立たなくなった。
せっかく家業をついだのに……。
みなれた景色ではない。
どうやら、帰る……戻る時代を間違えたらしい。
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