田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼の故郷  麻屋与志夫

2008-11-06 16:51:23 | Weblog
背中に扉の板の質感をたしかめながら。

古からの人狼と九尾族の確執を思いながら。

太刀を杖に立っていた。

「一匹も逃さない。この場所は知られたくないの」

「切り落とした人狼の首は火のなかに投げ込むのよ」

美智子は残酷なことを平気でいえる女ではない。
人狼との戦いに賭ける美智子の覚悟のほどが読みとれる。
道場まで侵入して、負傷者や老婆をむさぼり食らった。
許せるはずがない。
この敵を滅ぼすためにはいかようにも冷酷になれる。
過酷になれる。

首は火に投げ込む。
そうすれば、さすがの人狼もよみがえれないだろう。

美智子が、祥代にいいながら扉を開けた。
先頭にたって人狼の首を両手に扉をでた祥代が立ち止まっている。

凍り付いている。

まだ燃え盛っている火炎に気おされしたのか。

「どうしたのよ」

うっと妻が獣のような声をだした。

祥代が両手にさげた首をふたつ同時に取り落とした。

人狼の首が祥代の肩からはえている。

炎を逆光線にあびているがボスだ。

わたしにむかって笑ったようだ。 

そのまま、祥代がずるずると庭に引きずりだされた。

食いちぎられる。   

わたしはよろけながらその後をおった。

だが、わたしよりもはやく反応したものがいた。

獣の形をしていた。 

もはやひとの形はとどめていなかった。

「玉藻。おまえか? 再生していたのか」

ボスが口をきいた。
祥代が大地にたたきつけられた。
ばさっと音をたてて倒れた。

玉藻がボス狼に食らい付いた。 
圧倒的な俊敏さだ。    
ボスは避けることもできなかった。  
首筋にくらいつかれた。 

必死で玉藻をふるい落とそうもがいている。

わたしは祥代のところにはいよった。



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