田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

死なないで玲加/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-09-25 06:40:41 | Weblog
奥様はバンパイァ 55

○「玲加がいない」

Mがふいにきづいた。

なにか体に力がはいらない。

玲加がすぐそばで戦っていると思いこんでいた。

玲加のことをかんがえてあげられないでいた。

その余裕をなくしていた。

「おとうさん。玲加がいない……? 玲加はどこ?? どこなの???」

「わたしは始めから玲加をみていない。玲加も一緒にきていたのか」

Mは寒気に襲われた。

分断されていた。

人狼のバラ園への侵入を阻止することばかりかんがえていた。

玲加と引き離されていたことにきづいていなかったのだ。

人狼のすさまじい悪意にとりかこまれていた。

玲加の存在に気配りができなかった。

すさまじい妖気と邪気の集団を前にしていた。

必死で戦っていた。

戦いぬいていた。

この人狼の群れに、美しいバラ園を荒らされることを恐れていた。

すさまじい凶念をあびてバラが枯れるのではないか。

わたしたちが生きる糧でもあるバラが凋んでしまうのではないか。

そのことばかり心配していた。

Gは意識の波を周囲にひろげた。

意識の隅に玲加の悲鳴が流れ込んできた。

「林の奥よ」

叫んだときにはGは走りだしていた。

林が忽然と消えていた。

草原になっている。

草いきれがする。

那須野が原だ。

青い草の海に陽炎が立っている。

あのときと同じだ。

もう玉藻さまは、いや玲加は食いちぎられてしまったのかもしれない。

あまりに静だ。

陽炎の中でGは過去の記憶をよみがえらせていた。

過去の悲惨な記憶に支配されていた。

わたしたちの駈けつけるのが今少し早ければ。

もつと速く走ることが出来ていければ……。

玉藻さまは死なずに済んだ。

歴史はかわっていた。

その時歴史は玉藻さまの死をきめてしまった。

そして今、21世紀。

玲加の死を酷くも刻印するのか。

玲加!

玲加!!

玲加!!!

負けないで。

直ぐいくから。戦っていて。

     イントゥリーグ
       

       
      pictured by 「猫と亭主とわたし




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