田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

影分身/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-17 17:13:17 | Weblog
影分身

2

そこには紅子が立っていた。
翔子はとっさに身構えて二三歩あとずさった。

「わたしのあとをつけまわしているわけ」
「ちがう。翔子、女同士で争うことはない。わたし翔子の実力はわかったシ」
「どちらが勝ってもよろこぶのは男たちよ」
「そんなこと、あれだけ戦ったのだ。信じるわけにはいかない」
「おだがい、傷つけあうことはない」

子犬が翔子の足もとで唸っている。

「わたしのこと、こんな小さいうちからわかるみたいね」
「なにいってるの」

翔子が声を低くして紅子の顔をみている。

「何いっているのか、わたしにもわかるように説明して」

翔子は注意しながら、それでも一歩だけ紅子に近寄った。

「わからない? その子犬は人狼の影に育っていくのよ」

紅子にいわれていることは、ますますわからなくなった。
まさか、紅子の口から人狼なんてことばがでるとは。

「忍者のこと翔子くわしいの? ナルトみてる??」
「なにいいだすの」
「影分身の技に似てる」

そこで、翔子はおもいだした。
留置所を模した部屋に黒犬があらわれたのは先週のことだ。
あれから各地でナイフによる傷害事件が突発した。
その事件も吸血鬼がらみではないかと、百目鬼刑事と純がこだわっていた。
翔子はパソコンで調べられるだけの情報をあつめた。
いそがしかった。やっとこうして、近所の公園まで散歩に出られた。
純は塾で万葉集の講義を大学受験コースでしている。

「犬の姿をみせておいて、本人はほかの場所に穏業する。
忍法の基本中の基本じゃないの」
「ここにこの犬をそだてている人狼がいるってことなの」
「だから、わたしはハッテいたのよ」

見張っていた。
とはいわないで、
ハツテいたなんて、
刑事ドラマまでみて日本語の勉強をしているらしい。

「そこへ、翔子があらわれたのよ」

紅子の長い説明が終わった。



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都市伝説 人狼/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-16 16:30:08 | Weblog
第三章 都市伝説 人狼

1 

売店でミルクパックを買ってもどった。
子犬は段ボールの箱の中でふるえていた。
紙トレーも買ってくればよかった。
翔子は手のひらに牛乳をすこしあけた。
手をさしだした。
子犬はためらうこともなくピチャピチャと翔子の手からミルクをのみだした。
よほど、お腹がすいていたのだろう。パックを全部のんでしまった。
といっても小型パックだ。
まだものたりないのか、短い尻尾をはげしくふっている。

「そこでなにしてるの」

ひくい唸り声がした。
子犬がかわいかった。
つい、見とれていた。
翔子にしてはめずらしく油断していた。
唸り声がするまで気づかなかった。
まったく無防備だった。
薄闇の中でなにかが動いている。
近寄ってきた。
鶴巻南公園の片隅だった。
もっと注意をはらうべきだった。
翔子は恐怖に震えていた。
いまおそわれたらチョウヤバイ。

相手を刺激しないようにゆっくりと振りかえった。


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夢うつつ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-15 17:58:46 | Weblog
夢うつつ

16

「どういうことなの」
婦警のコスチュームのホステスが席をはずした。
店長が「お馴染さんだ」と呼びに来た。
翔子が純に小声で訊ねた。
ホステスはさりぎわまで、
「わたし吸血鬼をまちがいなくみたよ。携帯がどうかしているのよ」
と主張した。

「吸血鬼には変化しなかった。
この黒犬の姿だってみえない彼女には吸血鬼なんてみえるはずがない。
おもいこみからくる、幻想だろう。
彼女は疲れていた。
日常の覚醒しているときでも、
疲労がたまり極度のストレスにおちいるとウトウトすることがある。
そのときに、
仮性のレム睡眠状態になることがある」
「ストレスのせいだというのか?」
百目鬼が真面目な顔で訊く。
「おれみたいなノンキャリアにもわかるように説明してくれ」
「むかし、第二次大戦のころ、
戦場行軍で疲労困憊して、
隊列から脱落しそうになる。
でも隊列から離脱することは、死を意味していた。
なにがなんでも、歩きつづけなければならない。
そこで、歩きながら仮レム睡眠状態におちいった。
それでも歩行はつづけていた。
こうしたときに、ひとはすごくリアルな夢をみたという。
故郷の山河であったり、
懐かしい母親があらわれたりとた。
母に会った。母がここにいた。兵士はそう主張した。
母に乳をあたえてもらい、
それで元気になって脱落をまぬがれたという記録がのこっている」

大学時代の恩師からきいたエピソードだった。

「なるほどなんとなくわかったような気がする」
「ほら、もっとシンプルな言葉かあります。
夢がうつつか幻か。
婦警さんは営業が忙しくて睡眠不足で幻覚をみたのでしょう」
「ではこの黒犬はどう説明してくれるの」

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黒犬が見える?/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-15 09:11:54 | Weblog
黒犬が見える?


5

「ね、なんの話しているの」
婦警のコスチュームが三人の会話に割って入る。
「わたしは吸血鬼になるところを見たわ。黒犬だなんて!!」
「吸血鬼? なにねぼけたことを言ってる。黒犬だろうが!!!」
百目鬼が負けずに声をはりあげている。
刑事に恫喝されて怯むような婦警ではなかった。
婦警の制服が彼女を勇敢にしていた。

「これみてよ。ちゃんと動画で記録したんだから……」
「映っていないわよ」
「そんなバカな」
「疑うのだったら、じぶんの目で確かめたら」
と翔子に詰め寄られて、携帯を眺めた。
婦警は絶句した。
「いま何が見える? よく見て」
婦警は絶句した表情のまま首を大きく左右にふる。
「ただの男だぁ。わたしどうかしていたの???」

ダダのお客。
すこし腕が毛深いだけの男。
だが三人には黒犬に見える。
 

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黒犬に変身した!!/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-13 06:45:27 | Weblog
黒犬に変身した!!

14

「また通り魔事件だ」
携帯が振動した。純か開く。
「関西にいる友達からだ」
愛知県の一宮市の公園で女子高生が刺された。
と川久保が知らせてきた。
「塾の講師をして全国をさすらったから、
友だちの数は100人をこす。
みんなそれぞれ日本の未来について真摯に考えている仲間なんだ。
ただかれらには、吸血鬼はみることはできない。
だからこちらからも、
吸血鬼が事件にからんでいることを知らせることはできない。残念だよ」

ナイフによる通り魔。
その背後に吸血鬼の策謀がある。
必ずとは言えないだろうが。
 
百目鬼刑事の携帯が鳴った。
西武新宿駅前からエビ通りにはいるとその店はあった。
コスプレがウリのいかがわしい店だ。

婦人警官の服装をしたミグの目撃している前で変化した。
「タイホシチャウゾ!!」
彼女がおどけて、お客の男に迫った。
その彼女のキメ台詞が客の反応をひきおこしたらしい。
客は遊びと現実を混同している。
ほんとうに逮捕されるとおもってしまったようだ。
女のような白い肌にふいに黒い獣毛が生じた。
彼女をすくったのは漫画だった。
彼女の好きな「バンパイア戦争」によくこういうシーンがてくる。
まさかとはおもったが、留置場からとびだした。
これだけは本物の鉤をかけると店の外に逃げだした。――りは、しなかった。
交番に連絡した。
その場にのこった。漫画でもない。アニメでもない。liveだわ。
彼女は勇敢にも動画にして携帯をむけた。
夢中で、携帯をむけつづけた。

百目鬼刑事と純、翔子がほとんど同時にかけつけた。
「吸血鬼がらみの事件らしいのでな」
純に百目鬼が連絡した理由をいいながら店のおくにとびこむ。

鉄格子の中のモノは唇が裂けていた。
鋭い犬歯がナイフのように白く光っていた。
四足となって月のように丸い天井の照明にむかって吠えていた。
長く伸びた口吻を上にむけていた。
犬の遠吠えをあげていた。
「黒犬に変身するヤツははじめてだな」

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夜の子供たち/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-12 00:08:49 | Weblog
夜の子供たち


13

なにかヤバイ雰囲気がもどってきた。
紅子は敵。芝原は敵。かれらはみんな険悪な吸血鬼なのだ。
あれほど勢いこんで、勇躍のりこんだのに。
翔子の戦意はすっかり失せていた。
闘志がわかないのはオカシイ。
紅子の術中にはまっているのだ。
キーンと金属音がかすかにする。
かすかに耳のおくにひびいている。
緊張と恐怖がよみがえってくる。

翔子は手をひかれるままに座を後にする。
胸の動悸がたかまる。
それをしられまいと純の手を離そうとした。
いっそう強く握られる。
「いそごう」
純が翔子の耳もとで吐息をもらすような声をだす。
「そのほうがいいね。
わたしにも芝原をこれ以上とめておく力はないから。
ゴメンナサイ」
こころにひびいてきた。
いまどき、
日本の女の子からはなかなか聞かれない、
スナオナ謝罪のことばだった。
「話あえて、うれしかったよ」
こんどは純が紅子のこころに応えている。
耳にきこえない声で。なにかすこし翔子はジラシー。
「翔子、もっとロマンチックな気分になって……
手をつなぎたかったな。ともかくここをでよう」
「月がでてるよ。
獣心をよみがえらせているものは、
わたし達のほかにもいる。
夜の子どもたちが徘徊しているからね。
気をつけてお帰りください」
 
新宿の大ガードまでもどっていた。
薄汚れたコンクリートの壁面から、
夜の子どもたちを産出されている。
ぐぐっと浮彫のように盛り上がる。
平らなわけの壁面なのに。
人の形が完成する。盛り上がり、分娩されたものは平然と歩きだす。
この壁の奥にもヤッラの隠れ家がある。
アジトがあるのだ。

「翔子。ラーメンでも食べていこうか」
「いいわよ。でも、まだ胸がどきどきしている」
「東京の夜が、
こんなに危険なところになっているなんて、
東北のほうにいたからわからなかった」

翔子の希望をいれて喫茶店「街角」に入った。
テレビはさきほどの通り魔事件を報道していた。
客の目はテレビにひきつけられていた。

「わたし、純と、こういうお店、はじめてだね」
「翔子。なにが起きても翔子のことは守るから」

翔子はモンブランをたいらげていた。
「もう一つくらいたべられそうだ」
「わたし興奮するとあまいものがたべたくなるの」
「でも、翔子は強くなった。守られているのは、ぼくほうかもしれない」
ほめられているのが、無性に照れくさかった。


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紅子との対話2/さすらいの塾講師  麻屋与志夫

2010-06-11 03:40:53 | Weblog
紅子との対話2


12

翔子は純と手を握りあっていた。
紅子とにらみあっていた。
「鬼はあんたらをわたしたちにけしかける作戦にでた。
あんたらはあいつらの味方している。
わたしたちつらいね。サンドイッチみたいだわさ。
このへんで休戦にしませんかよ」
だめ。だまされる。翔子はギュッと純の手をにぎりかえした。
純の手がそんな翔子の緊迫したこころを和らげてくれた。
優しくつつみこんでくれた。
あせることはない。あせらず紅子のいいぶんをきいてやろう。
翔子はおおきく深呼吸をした。
「翔子さんは若くて、これから青春だなんてうらやましいわ」
紅子はまるでふたりを相手に世間話をしているようだ。
「男たちは歌舞伎町の制覇だとか、
日本を牛耳るなんてたわごと並べたてる。
わたしは女だから正直あまり興味ない」
あれほどの戦いを翔子たちと演じたにしては、
しおらしい、いいぐさだ。
それに綺麗なひとだから、言っていることに説得力がある。
「翔子さんは、純ちゃんとラブラブ。
いいな。いいな。うらやましいぞよ」
「ぼくらだって、こちらからすすんで吸血鬼掃討はしたくない。
静かに生きていきたい。
ただひとが吸血鬼に襲われているとわかれば出動する。
ひとが血をすわれていれば助ける。ただそれだけのことだ」
「それができないのよね。
わたしたちは捕食動物の本能を残している。
弥生式へと進化した人間とはちがう道をえらんだの。
人工血液で生きられないことはないのだけど……
ひとの血をすうことに罪の意識はないわ。
ひとが動物の肉を食べるのになんのためらいもないのと同じよ。
でも、日本に出稼ぎにきて天敵、
あんたらみたいなひとに会うとはおもわなかった。
はるか東方のジパング、わたしたちの楽園だとおもってきたのにね……」

「こんど会うときは、また敵ですね」
「悲しいことだけど、そういうことになるわね」

翔子は純と紅子の対話にききいっていた。
手にグッショリと汗をかいている。

「このまま帰すんですか」
芝原たちが隣の部屋からなだれこんできた。
「おだまり。このひとたちは、わたしの客人よ」

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紅子との対話/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-09 06:56:39 | Weblog
紅子との対話

11

純ごめんね。あのままひきかえすべきだったのだ。
純ごめんね。わたしミスったかも。
翔子は必死のおもいで純をみつめる。
すぐそばにいる純。
なぜか、遠くにいるような感じ。

「わたしたちの当面の敵は、ご当地、日本産の吸血鬼〈鬼〉なのだわさ」
紅子のことばがまたあやしくなる。
紅子はことばの乱れには気づいていない。
日本語ではなせるのがたのしそうだ。
「平安時代の鬼がいまこの平成の都にきてのるヨ。
まさかトウキョウで鬼合戦するとはソウテイガイょ。
わたしたちイソガシイノョ。
ほうっておいてくれルカナ」
「そちらで仕掛けてきたのだろう。
翔子を池袋でストーカーしたから、
彼女が怯えて……ぼくのところへメールをくれた。
それが始まりだろうが」

よかった。
純は紅子の思念の支配下にはないみたいだ。
すごくたよりになる。
そしてわたしのことをすごく心配してくれているのだ。
うれしい。
純がすく隣にいる。
わたしの……手をにぎってくれた。
そうこの手だ。
小学生のわたしを鶴巻公園の砂場でおもいっきり遊ばせてくれた。
あのころよく手をつないで歌をうたいながら道場にもどった。
夜には塾の教室で勉強をみてくれた。
あのころから、純のこと好きだった。
たよりになる、なつかしいお兄ちゃん。
自然とほほがあつくなった。
こころがほんわかと温かくなる。
お兄ちゃん。
お兄ちゃん。
純。純。純。と唱えていると体に精気がみなぎってくる。
こんどは紅子がとおのく。
小さくみえる。吸血鬼の呪縛から解放された。

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捕らわれる/さすらいの塾講師  麻屋与志夫

2010-06-08 04:36:19 | Weblog
捕らわれる


10

「どうしてふみこまないの」
「紅子は夜の一族だ。
いまが彼女の能力がいちばん強い。
わざわざそんなときに戦いを挑むことはない」

そういわれても、翔子は不満だった。
蒼然とした古屋敷だった。
すたすたと門をはいる。
門の瓦はずれていた。
いまにもおちてきそうな瓦屋根の門をくぐった。

庭には日本式庭園なのにバラが一面に咲き誇っていた。
玄関には堂々と板看板。
墨痕鮮やかに『在京ルーマニア人協会』。

「あら、よくわかったね」
紅子がにこやかに出迎えてくれた。
なにか、おかしな雰囲気だ。
いままでの兇暴な態度はどうしたのだ。
背後から芝原たち黒服がドカドカとあらわれる。
翔子と純の歯をむく。

「あなたたちだれのおかげで鯨飲馬食できるの。
きょうだって飲みすぎよ」

芝原たちはだまってしまった。
紅子はとんでもない四字熟語をしっている。
翔子は純と共闘できることがうれしくてしょうがなかった。
だか、この激しい疲労感はどこからくるのだ。
純のいうことをきいて引きかえしたほうがよかった。
だがもう遅い。
乞われるままに、座敷にあがりこむ。
なにも紅子のいうことには逆らえない感じだ。
純にいわれたように、あのままひきかえせばよかった。
危険だ。
このままではヤバイ、と頭の中で警鐘がなりひびいている。

「どう、バラの花きれいでしょう」
庭に面した部屋に通された。
畳の部屋だ。
座布団がだされた。
芝原がお盆にお茶をいれてくる。
なにからなにまで日本式だ。
でも、翔子からみれば、
外国映画のなかのひとコマみたいで、
背筋がむずむずする。
なにか、やはりオカシイ。
なにか、どこかに狂いがある。
逃げたほうがいいかも。
怒ることができない。
闘うことができない。
闘争心がまつたくわかないのだ。
牙をぬかれたようだ。

「平和に話し合いましょう」
余裕の声で紅子がいった。



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追いかける/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-03 09:45:38 | Weblog
追いかける

9

純と翔子はルー・紅子をつけていた。
逃げ際にそう名のった。
「わたしは、紅子。ルー・紅子。そうおぼえておいてクンナマシィ」
なにから日本語を学んでいるのだろう。
テレビで江戸の遊郭ものでもみたのだろう。
いやアニメで吉原がでるものがあった。
紅子はときおり、とんでもない日本語をつかう。
そして、
ふたりに切りこまれて「サテイシェクス逃げるね」
といわれて理解するのに少してまどった。
なにが36計逃げるにしかず、だ。

そのまに、紅子は暗闇にまぎれてしまった。

西武新宿線を左手にみながら、新大久保方面に向かってふたりは歩いていた。
「見失ったわね」
「いや、まだなにか異様な気配はのこっている」
もう百人町にはいっている。
都知事のいった「第三国人」がきゅうにふえてきた。
あの言葉にはさまざまな批判があった。
差別用語にも指定されているとおもう。
なぜ、外人と簡潔にいわないのだろう。
だいたい日本なんて、どこにあるのだ。
株式の70%は外人買いだといわれている。
昨日の政局の混乱は……
と純はめずらしく日本の現状に想いを馳せながら歩きつづける。

どこのことばかわからない。
何か喚いている。
宵の口なのに泥酔したおとこたち。

追跡をあきらめかけた。
せまい飲み屋街だ。
両脇に屋台店ていどの店がうねうねとつづいている。

「スゲエ、金髪美人だったな」
「ああ。シャラポワにそっくりだった」

「そのシャラポワはどっちにいきましたか」

飲み屋街をぬけるとコンクリートの塀がつづく一角にでた。
広い屋敷だ。



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