影分身
2
そこには紅子が立っていた。
翔子はとっさに身構えて二三歩あとずさった。
「わたしのあとをつけまわしているわけ」
「ちがう。翔子、女同士で争うことはない。わたし翔子の実力はわかったシ」
「どちらが勝ってもよろこぶのは男たちよ」
「そんなこと、あれだけ戦ったのだ。信じるわけにはいかない」
「おだがい、傷つけあうことはない」
子犬が翔子の足もとで唸っている。
「わたしのこと、こんな小さいうちからわかるみたいね」
「なにいってるの」
翔子が声を低くして紅子の顔をみている。
「何いっているのか、わたしにもわかるように説明して」
翔子は注意しながら、それでも一歩だけ紅子に近寄った。
「わからない? その子犬は人狼の影に育っていくのよ」
紅子にいわれていることは、ますますわからなくなった。
まさか、紅子の口から人狼なんてことばがでるとは。
「忍者のこと翔子くわしいの? ナルトみてる??」
「なにいいだすの」
「影分身の技に似てる」
そこで、翔子はおもいだした。
留置所を模した部屋に黒犬があらわれたのは先週のことだ。
あれから各地でナイフによる傷害事件が突発した。
その事件も吸血鬼がらみではないかと、百目鬼刑事と純がこだわっていた。
翔子はパソコンで調べられるだけの情報をあつめた。
いそがしかった。やっとこうして、近所の公園まで散歩に出られた。
純は塾で万葉集の講義を大学受験コースでしている。
「犬の姿をみせておいて、本人はほかの場所に穏業する。
忍法の基本中の基本じゃないの」
「ここにこの犬をそだてている人狼がいるってことなの」
「だから、わたしはハッテいたのよ」
見張っていた。
とはいわないで、
ハツテいたなんて、
刑事ドラマまでみて日本語の勉強をしているらしい。
「そこへ、翔子があらわれたのよ」
紅子の長い説明が終わった。
プチしていただければ作者の励みになります。
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そこには紅子が立っていた。
翔子はとっさに身構えて二三歩あとずさった。
「わたしのあとをつけまわしているわけ」
「ちがう。翔子、女同士で争うことはない。わたし翔子の実力はわかったシ」
「どちらが勝ってもよろこぶのは男たちよ」
「そんなこと、あれだけ戦ったのだ。信じるわけにはいかない」
「おだがい、傷つけあうことはない」
子犬が翔子の足もとで唸っている。
「わたしのこと、こんな小さいうちからわかるみたいね」
「なにいってるの」
翔子が声を低くして紅子の顔をみている。
「何いっているのか、わたしにもわかるように説明して」
翔子は注意しながら、それでも一歩だけ紅子に近寄った。
「わからない? その子犬は人狼の影に育っていくのよ」
紅子にいわれていることは、ますますわからなくなった。
まさか、紅子の口から人狼なんてことばがでるとは。
「忍者のこと翔子くわしいの? ナルトみてる??」
「なにいいだすの」
「影分身の技に似てる」
そこで、翔子はおもいだした。
留置所を模した部屋に黒犬があらわれたのは先週のことだ。
あれから各地でナイフによる傷害事件が突発した。
その事件も吸血鬼がらみではないかと、百目鬼刑事と純がこだわっていた。
翔子はパソコンで調べられるだけの情報をあつめた。
いそがしかった。やっとこうして、近所の公園まで散歩に出られた。
純は塾で万葉集の講義を大学受験コースでしている。
「犬の姿をみせておいて、本人はほかの場所に穏業する。
忍法の基本中の基本じゃないの」
「ここにこの犬をそだてている人狼がいるってことなの」
「だから、わたしはハッテいたのよ」
見張っていた。
とはいわないで、
ハツテいたなんて、
刑事ドラマまでみて日本語の勉強をしているらしい。
「そこへ、翔子があらわれたのよ」
紅子の長い説明が終わった。
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