日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
http://onimimicola.jimdofree.com

◎おおざっぱに幸福(未来探偵 その1)

2024年01月03日 | ◎本日の想像話
 後頭部の鈍い痛みでミツオは目を覚ました。真っ暗で何も見えない。どこにいるのかも分からない。無意識に後頭部に手をやる。ぬるりとした感触を指先に感じる。指先の液体は血液特有の匂いを発している。自分が、どの程度の傷を負っているのかと想像して血の気が引いた。しかし傷の痛みは出血を伴うものでもなく、どうやら自身の血ではないという結論にたどり着いた。
 では一体誰の血なのか……
 ミツオは上着の内ポケットをまさぐる。オイルライターを確認してすぐさま着火する。
 コンクリート打ちっぱなしの壁、床を見て、直感的にどこかの地下室だとミツオは思った。血だまりの端を見たミツオは炎を横にふる。
 首から血を流す和服姿の老人が断末魔の表情を浮かべて横たわっている。ミツオはおそらくすでに息絶えているであろう人物に近づく。
 ライターをかざして誰なのかをよく見た。

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◎霧中(おしまい)

2023年12月27日 | ◎本日の想像話
 治療を懇願した遠山の作業はあっけないほどすぐに終わる。
 外に出たミツオ達はサイレンが鳴り響く街の異変に気づく。
 暴徒が店を襲い、警察が走り回っている。
「大抵のシステムが遠山のプログラムを使っていたから、しばらくはしょうがない」
 ミツオはたばこの煙を深く吐き出しながらエリーに続けてつぶやく。
「これから、あんたはどうする」
「私は消失を免れたようです」
 エリーは視線を落とし、自身の身の振り方に困惑しているようにミツオには見えた。
「俺んちに来るかい」
 エリーは顔を上げてミツオを見る。「いいんですか」
「ああ」
 ミツオは歩き出す。
 エリーがミツオの後を追いかける。


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◎霧中(その34)

2023年12月26日 | ◎本日の想像話
 引き金にかかる指先がかすかに動く。
 衝撃音と共にミツオがこの部屋に入ったドアが吹き飛んだ。複数のレーザーサイトの軌道が煙に浮かびあがる。手下達の手に持つ短銃がすべて吹き飛ぶ。ミツオは瞬間的に遠山との距離をつめた。棒立ちになっている遠山の首筋に、ミツオはオートマチックの銃身をめり込ませる。
「動くな」
 ミツオは一喝し、その場にいる人間の動きが止まる。
 爆音と共に入ってきたのは、外にいたガードロボットだ。
「本体をガードロボに移しておいたの。その子は遠隔操作で動いているコピー」
 ひざまずいて動かないロボットを手で指し示しながら、あらたな個体に乗り変わったエリーがミツオに説明した。
「さあ、遠山さん。今度こそ停止プログラムを発動してもらおうか」
 ミツオはちゃぶ台の上に無造作においてあるラップトップを指さした。「はい分かりましたと俺が言うとでも思っているのか」
 遠山は憎々しげにミツオをにらみつける。
 直後、銃声が2発響き渡る。
 一発はミツオが放った銃弾。遠山の右肩に当たった。
 もう一発はエリーが放った。右太ももに当たった。
 遠山は完全に戦意を喪失したように見えた。

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◎霧中(その33)

2023年12月25日 | ◎本日の想像話
「しっかりしろ」
 ミツオは動かなくなったエリーに駆け寄る。力一杯ゆすっても、エリーには何の反応もなかった。
 奥の扉が開き、多数の手下と共に、ある人物が現れた。
「次に会った時には、命はないと忠告したはずだ」
「遠山」
 彫刻刀で彫ったような粘着質の目をミツオ達に向けている。
 遠山の姿を確認した権堂は、遠山達に歩み寄り、頭を下げた。遠山はねぎらうように権堂に顎で挨拶を返した。そして懐から封筒を取り出し権堂に渡す。封筒を大事そうに受け取った権堂は、感謝の言葉を残して部屋から出て行った。
「あいつはお前達をおびきだす囮だけの役目だ。プログラムは俺が書いた。あいつには会社の看板を利用して全世界に、俺の悪巧みをばらまいてもらったというわけだ」
「エリーは誰が……」
「あの大家の息子だよ。俺たちの企みを察知したあいつがどうやら忍び込ましたらしい。今エリーが読み込んだのは、俺のプログラム実行阻止コードではない。エリー自身のアンインストールコードだ」
 無駄話はおしまいだというように遠山は手下に目で合図する。
 複数の銃口がミツオに向く。

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◎霧中(その32)

2023年12月24日 | ◎本日の想像話
「やあ、お待ちしておりました。これがあなたたちが探しているものです。どうぞお持ちください」
 権堂は食べ終わったカップラーメンの器が何個も散乱する、ちゃぶ台の座椅子に座っていた。ミツオ達を確認するとうれしそうに立ち上がってきた。
「待て、どうして素直に教える。おかしいじゃないか」
「このコードを信じるか信じないかはあなた次第です。この軟禁生活から早く解放されたいのです。ここにあなたたちがやってきたのは、磯山会の護衛プランのミスです。わたしには関係ありません」
「それはそうかもしれないわ」
 エリーは権堂の示したカードを読み込ませ始めた。
「おい大丈夫なのか」
 ミツオは焦りながらエリーの顔を見る。エリーには今のところ異常はない。
「ミツオさん……」
 エリーが振り返ってミツオを見た。「どうした」
「どうやら大丈夫じゃなかったみたいです」
 エリーはがっくりとひざまずき、活動を停止する。

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◎霧中(その31)

2023年12月23日 | ◎本日の想像話
 権堂は一番奥まった部屋にいる。エリーはそう言った。ミツオはステンレスのライターを手でこする。まるで鏡のようになったライターを廊下の角に差し出す。奥の様子が映り込む。廊下には八体以上のロボットが集合していた。
「ロボ大集合ですよ。エリーさんどうします」
「最後の護衛をロボットに任せてくれてラッキーでした」
 青色に点灯しているエリーの瞳が暗くなった。ミツオは一体何が始まるのかと見守る。直後、圧縮空気で動く人工筋肉の音が停止した。
「とりあえずガードロボに全員に細工しました。行きましょう」
 二人は機能を停止したロボを避けながら一番奥のドアの前に立つ。エリーがドアノブに手をかける。鍵がかかっている。
「どいてくれ」
 ミツオが鍵穴を見ながらかがむ。アナログな解錠はミツオの得意技であった。鍵が開く音が廊下に響く。扉が開く。 

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霧中(その30)

2023年12月22日 | ◎本日の想像話
 エリーの動きは素晴らしかった。見つけた手下を片っ端から倒していく。
「地下一階に権堂がいるらしい」
 ついていくのがやっとのミツオは息を切らしながらエリーに続く。
「そうね、この子のメモリーに具体的な場所が記されている」
 振り返ったエリーに敵がせまる。ミツオは狙いを定める間もなく腰の位置からオートマチックを発砲する。手下の肩に弾丸が当たり、傷口を押さえて手下はひざまづいた。即座にエリーがとどめの蹴りを顎先に見舞う。意識をなくした手下は、人形のようにばったりと崩れ落ちた。
「ありがとう」
 エリーがおどけて会釈する。
「どういたしまして」
 ミツオは倒れ込んだ手下の様子を見る。反撃は出来そうもない状態を確認して走り出す。
「権堂は素直に停止コードを教えてくれるのか」
 ミツオは最大の疑問をエリーに問いかける。
「私に考えがあるの」
エリーがかすかに笑ったようにミツオには見えた。 


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◎霧中(その29)

2023年12月21日 | ◎本日の想像話
 階段を目指す。
 すぐ背後に、気配が迫る。
 ミツオは素早く振り返り、捨て身の足払いをくりだす。
 ひょい
 ちょっとした跳躍でミツオの蹴りはかわされる。
 ロボはミツオを見下ろす。
 ミツオの思考は完全停止。
 終わった。
「よかった間に合った」
 抑揚のとぼしい合成音声が響く。
 一瞬何が起こったのか分からない。ようやく声がでた。
「エリーか?」
「そうです。ようやく乗っ取ることができました。とにかく急ぎましょう。今夜の騒動がきっかけかはわかりませんが、今夜12時にプログラムが開始する指令が下っています」
 ミツオは声にならないうめきで応答しながら起き上がる。腕時計を確認する。12時まであと30分もない。
「急ごう」
 ミツオは屋上の見張りから奪ったオートマチック拳銃を確認する。
 こうなったら、銃声がしようがしまいが、関係ない。
 二人は階下を目指して駆けだした。

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◎霧中(その28)

2023年12月20日 | ◎本日の想像話
 男の上着に、その発信器はあった。ライターぐらいの大きさ。これを持つものを格闘アンドロイドは味方と判断する。
 ちなみに男からの情報で、権堂は地下一階の部屋でかくまわれている。屋上から1フロア下がった廊下に再び戻ってきた。
 アンドロイドがいる気配はある。 大丈夫と分かっていても足は震える。
 意を決して廊下を横切り、階下に向かう階段へと足をすすめる。
 キシュシュシュ
 一段と甲高い音が廊下の奥に響く。 アンドロイドが全速力でミツオに向かって走りだす姿が見えた。
「うそでしょう」
 ミツオは毒づきながら、階段を目指す。
 しかし、アンドロイドの跳躍はすばらしく素早く、一瞬でミツオのすぐそばに肉薄する。

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◎霧中(その27)

2023年12月19日 | ◎本日の想像話
 この建物に権堂がいることは間違いない。しかし具体的にどこにいるのだろう。
 ミツオは不安しか感じない。でも行くしかない。震える足を押さえつけて、慎重に階段を下る。
 踊り場をひとつ周り、1フロア下がる。廊下が左右に伸びている。中腰になり、首を出す。
 いる。
 格闘タイプのアンドロイドだ。
 圧縮空気の音と共に、しなやかな人工筋肉の動く音がする。
 このまま、もう1フロア下がりたいが、一度廊下に出ないと、下りの階段にたどりつけない構造になっている。
 敵と味方の人間を区別する何かがあるはずだとミツオは思った。
 あわてて屋上に引き返す。
 先ほどの手下が同じ位置に転がっている。
「お前、ロボットが敵と味方を判断する発信装置を持っているだろう」
「なんのことだ」
 ミツオはため息をつきながら、男を自分の肩に抱え上げる。
 わめく男を、屋上の手すりに乗せた。
「そんなこと言っていて良いのか。このまま俺が手を離したら、あんたどうなる」
 男は自分の首をねじって確認した。地上まで20メートル以上ある。ここから落ちたら確実に命を失う。
 男が内情を説明するのに、そんなには時間はかからなかった。

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◎霧中(その26)

2023年12月15日 | ◎本日の想像話
 倉庫の遙か上空からエンジンの出力をしぼる。車体は徐々に高度を下げていく。屋上に見張りの男が一人見えた。懐に手を差し入れてタバコの箱を取り出す。口元に一本くわえる。ライターの調子が悪く、なかなか火がつかない。いらいらする男に火を差し出すものがいた。
「どうも」
「どういたしまして」
 火を点けてやったのはエアバイクにまたがったままのミツオだ。
「おまえ」
 見張りの男が手に持つ短銃をミツオにむける。
 ミツオは素早くアクセルをあおる。
 車体がくるりと半回転する。
 車体側面が見張りの男にぶち当たる。ミツオはバイクを屋上に下ろして、うずくまる男にとびかかった。手足を器用に持参したタイラップで縛り上げた。
 屋内へと続くドアに向かう。

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◎霧中(その25)

2023年12月14日 | ◎本日の想像話
 ミツオは一度遠回りをして海上に出る。波の音と磯の香りに支配される。ヘッドライトを消した状態で海上から倉庫を観察する。人の気配があるのはこの倉庫だけだ。漆黒の闇の中、ライトが煌々と点いている。ミツオには、ベランダに出てタバコを吸う男達が見て取れた。手には短銃が握られている。何かしらの情報が届いているとミツオは思った。ご丁寧にアンドロイド型ロボットも警備についている。戦闘に特化したタイプに見える。これだけの装備がここに集まっているのは政府が、関与している証明でもあった。
 無性にタバコが吸いたくなったが、ここで火を灯すわけにはいかない。意を決して視線をあげる。アクセル全開で、上空に高く跳ね上がった。

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◎霧中(その24)

2023年12月13日 | ◎本日の想像話
 浮遊力を失ったバイクは自由落下を始める。後ろを向いているロボは何が起こったか分からずフリーズしている。ミツオは自分でやったことなので、こうなることは十分に分かっている。一瞬の隙をミツオは見逃さない。ハンドルをしっかりもったまま、体を左に傾ける。ハングオンの姿勢をつくる。バイクはくるりと回転しながら落ちていく。フリーズを起こしているロボをバイクから蹴落とし、ミツオはメインスイッチを入れる。即座に命を吹き返したバイクが浮遊力を回復した。地面に激突寸前だった。
 バイクの性能を確かめつつミツオは地面を確認する。
 ロボはうつ伏せのまま動かない。ミツオはアクセルを開けた。
 霧の空を進む。空中の運転は慣れないが、出来ないこともない。埠頭の倉庫にハンドルを向ける。

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◎霧中(その23)

2023年12月12日 | ◎本日の想像話
 ミツオはゴミための中を走る。酸性雨はあらゆる物を腐食させ、道に転がっている。身を隠しながらビルの階段を駆け上がる。10フロアーは登っただろうか、ミツオは息を整えながら階段に座り込む。
 だめだ。
 バイクは正確に、ミツオの後を追いかけてくる。ミツオが廊下の壁から階下を見る。ロボはこちらを見上げながらまっすぐ上昇してきた。ミツオは壁に手をかけ、自らの体を空中に投げ出す。真下にはホバーバイクがいる。ロボの背中に蹴りを入れながら、タンデムシートにミツオは収まった。地上10メートルの格闘。ロボの上半身がくるりと回転した。180度後ろ向きになり、ミツオと手四つになる。ミツオは思う。きっと格闘のプログラムがインストールされているに違いない。ロボは手を振りほどいて、銃口をミツオに向ける。ミツオはロボの胴体にタックルしながら自らの手を伸ばす。指先にあるのはバイクのメインスイッチ。ミツオはバイクの電源をオフにする。

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◎霧中(その22)

2023年12月11日 | ◎本日の想像話
 霧中の視界は、まるでミルクの中だ。感覚だけでミツオは走る。バイク2台は、ミツオの車にすぐに追いついた。両側に一台ずつ並ぶ。ミツオが首を振って左右を確認する。ホバーバイクを運転しているのはやはりロボットだった。ロボットはハンドルから片手を離す。腕をミツオの車に向ける。手のひらの中に銃口が見えた。直後に衝撃と共に車内にはガラスが散乱する。サイドとフロントのガラスが粉々に吹き飛んだ。奴らは躊躇なく発砲した。
「なるほど」
 ミツオは静かにつぶやく。
 ハンドルを左右に素早く切る。
 バイクは車体の側面にぶつかりながらバランスを崩した。ハンドルを切り続け、バイクを車体とガードフェンスの間に挟みこむ。火花を散らしながらバイクは転倒した。
 もう一台のエアバイクはたまらず上空に逃げる。天井に複数の弾痕が続けざまに開いた。急ブレーキを踏む。上空のエアバイクはミツオを追い抜いた後、Uターンしてくるのが見えた。ミツオは車外に飛び出した。

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