「これ何だが本物っぽくねぇ?」
ダンボールの中には鈍く光る金属の部品があった。
良夫は一也に言った。
良夫は公立高校に通う高校2年生。
背は高く、端正な顔立ちをしている。
好意を寄せている女子も多いが、女性とおつきあいした経験は無い。
男友達と連んでいたい年頃。
何ともったいない。
「ネットで調べればこれが何であるのか分かるのではないでしょうか」と一也は言った。
一也はメガネを触りながらそう言った。
顔立ちは幼い。
おとなしい優等生。
それが一也に対する大人たちの共通の見解だった。
しかし本人は従順な自分をできるだけ演じていた。
年齢的にそうすることでうまくいく場合が多いと感じているだけだった。
早く独立したいと熱望していた。
それは良夫あてに届いた荷物だった。
送り主の名前は書かれていない。
父母は外出中で荷物は自分で受け取った。
「何だこれ・・・」
精密な機械部品がびっしり入っていた。
上からちらっと眺めただけ。
お手上げだ。
携帯を手に取り、電話をかける。
「おう、おれ。あのさあちょっと相談があるんだけど。」
「なんでしょうか?」とちょっと心配そうに一也は言った。
「とにかく部品なんだよね。部品だらけ。俺、これがなんだかぜんぜん分からない。分からないものが送られてきたんだ。」
「要領えませんね。とにかくそっちに行きますよ。」
一也の将来の夢は機械設計エンジニア。
機械関係はいつも一也に頼っていた。
近所にすむ一也は直ぐにやってきた。
夏休みなので一也も暇をもてあましていたらしい。
箱から部品を取り出し並べてみた。
大小のバネ、直線と曲線の混じりあった金属部品。
特徴的な部品は筒だった。
中を覗くと螺旋状の溝が何本も刻まれている。
「これは銃の部品ですね。2丁分です。しかもサイレンサーも付属されています。」と一也は言った。
「銃!なんでそんなものが俺に送られてくるの?」
「分かりません。が、組み上げてみますかこれ?」
「組むのこれ。組めるのこれ。」
4時間かけて2人は1丁の銃を組み上げた。
「あら~、一也君来てるの?」
母が帰ってきたらしい。
「まあ、今日はこんなところですね。帰ります。また明日考えましょう。しかし・・・考えるに・・・
これは・・・
大事なものがたりませんね。」
「何だよ、大事な物って。」
「実弾ですよ。」
次の日。
もう一丁も組み上げた二人は、その銃について話し合っていた。
「組んじゃったけど、これ何だと思う。」
良夫はベットの上で寝そべり、銃を握りながらそう聞いた。
「銃でしょう?」
ローテーブルの上にある銃を眺めながら一也は言った。
「それは分かってる。そうじゃ無いよ。どうしてこんなものが送られてきたかってことさ。」
「さあ、分かりません。手違いなのか、分かってここに送られたのか。いずれにしてもどうしますこれ。」
「弾は無いからなあ。」
そう言いながら良夫は目先の問題を考えていた。
それは銃の隠し場所だ。
バラバラの部品ならいざ知らず、大人に見つかったら言い訳が難しい状況になっているなと思った。
「2丁だとかさばるから1丁は一也が持っていてくれよ。」
「分かりました。しかしどこに隠しましょうか。」
「やっぱり部室かな。」
「そうですね。」
二人は同じ天体部に属している。
子供の頃から星を眺めるのが大好きな二人だった。
また次の日。
その日から1日1通、手紙が届くようになった。
差出人不明。
はじめてその手紙を手に取った時、ピンと来た。
封を手で破り、ひっくり返して中身を手の上に転がした。
ひんやりとした感触がした。
1発の実弾だった。
それから毎日手紙は届けられ、二人の銃のマガジンは実弾でいっぱいになった。
夏休みの間、二人は部室に集まり、日一日と増えていく実弾を眺めながら話し合っていた。
最初は気味悪がっていた二人だが、弾が増えるにつれ撃ってみたいという衝動にかられていた。
「試射してみませんか。」
そう切り出したのは良夫では無く、一也のほうだった。
「いいね、俺も考えていたんだ!」
一人では尻込みしていた良夫も共犯をすすんで提案したきた一也の言葉にうれしくてたまらない気持ちだった。
「決行はいつにする。」
「今夜はどうでしょう。」
「いいね。いつもみたいに夜中に家を抜け出して、裏山に登ろう。」
二人は深夜、家を抜け出してよく星を一緒に見ていた。
星の事はもちろん、将来の事を話し合う時間
は良夫にとって掛け替えの無い時間だった。
午前2時。
父母は眠っている。
学校の上靴を履いて窓を開ける。
屋根に上がり電信柱を伝って下に降りる。
今夜、銃は部室から持って帰っている。
警察に見つからないように裏道を選んで裏山に向かう。
30分後、待ち合わせ場所では一也が先に到着していた。
「よう、待った?」
「いいえ」
「やるか?」
「やりましょう」
一也はバックからクランプを取り出し銃を木に固定した。
「手で撃たないのか?」と良夫は不満そうな声で一也に言った。
「一点一点の部品の精度、部品同士の噛み合わせを見ても強度的に問題無いとは思うのですが、1発だけは遠隔で撃たせてください。」
トリガー部にはラジコンを利用した遠隔操作ユニットを取り付ける。
バンッ
近くの国道を走る車のバックファイヤーに似た音がした。
ダンボールの中には鈍く光る金属の部品があった。
良夫は一也に言った。
良夫は公立高校に通う高校2年生。
背は高く、端正な顔立ちをしている。
好意を寄せている女子も多いが、女性とおつきあいした経験は無い。
男友達と連んでいたい年頃。
何ともったいない。
「ネットで調べればこれが何であるのか分かるのではないでしょうか」と一也は言った。
一也はメガネを触りながらそう言った。
顔立ちは幼い。
おとなしい優等生。
それが一也に対する大人たちの共通の見解だった。
しかし本人は従順な自分をできるだけ演じていた。
年齢的にそうすることでうまくいく場合が多いと感じているだけだった。
早く独立したいと熱望していた。
それは良夫あてに届いた荷物だった。
送り主の名前は書かれていない。
父母は外出中で荷物は自分で受け取った。
「何だこれ・・・」
精密な機械部品がびっしり入っていた。
上からちらっと眺めただけ。
お手上げだ。
携帯を手に取り、電話をかける。
「おう、おれ。あのさあちょっと相談があるんだけど。」
「なんでしょうか?」とちょっと心配そうに一也は言った。
「とにかく部品なんだよね。部品だらけ。俺、これがなんだかぜんぜん分からない。分からないものが送られてきたんだ。」
「要領えませんね。とにかくそっちに行きますよ。」
一也の将来の夢は機械設計エンジニア。
機械関係はいつも一也に頼っていた。
近所にすむ一也は直ぐにやってきた。
夏休みなので一也も暇をもてあましていたらしい。
箱から部品を取り出し並べてみた。
大小のバネ、直線と曲線の混じりあった金属部品。
特徴的な部品は筒だった。
中を覗くと螺旋状の溝が何本も刻まれている。
「これは銃の部品ですね。2丁分です。しかもサイレンサーも付属されています。」と一也は言った。
「銃!なんでそんなものが俺に送られてくるの?」
「分かりません。が、組み上げてみますかこれ?」
「組むのこれ。組めるのこれ。」
4時間かけて2人は1丁の銃を組み上げた。
「あら~、一也君来てるの?」
母が帰ってきたらしい。
「まあ、今日はこんなところですね。帰ります。また明日考えましょう。しかし・・・考えるに・・・
これは・・・
大事なものがたりませんね。」
「何だよ、大事な物って。」
「実弾ですよ。」
次の日。
もう一丁も組み上げた二人は、その銃について話し合っていた。
「組んじゃったけど、これ何だと思う。」
良夫はベットの上で寝そべり、銃を握りながらそう聞いた。
「銃でしょう?」
ローテーブルの上にある銃を眺めながら一也は言った。
「それは分かってる。そうじゃ無いよ。どうしてこんなものが送られてきたかってことさ。」
「さあ、分かりません。手違いなのか、分かってここに送られたのか。いずれにしてもどうしますこれ。」
「弾は無いからなあ。」
そう言いながら良夫は目先の問題を考えていた。
それは銃の隠し場所だ。
バラバラの部品ならいざ知らず、大人に見つかったら言い訳が難しい状況になっているなと思った。
「2丁だとかさばるから1丁は一也が持っていてくれよ。」
「分かりました。しかしどこに隠しましょうか。」
「やっぱり部室かな。」
「そうですね。」
二人は同じ天体部に属している。
子供の頃から星を眺めるのが大好きな二人だった。
また次の日。
その日から1日1通、手紙が届くようになった。
差出人不明。
はじめてその手紙を手に取った時、ピンと来た。
封を手で破り、ひっくり返して中身を手の上に転がした。
ひんやりとした感触がした。
1発の実弾だった。
それから毎日手紙は届けられ、二人の銃のマガジンは実弾でいっぱいになった。
夏休みの間、二人は部室に集まり、日一日と増えていく実弾を眺めながら話し合っていた。
最初は気味悪がっていた二人だが、弾が増えるにつれ撃ってみたいという衝動にかられていた。
「試射してみませんか。」
そう切り出したのは良夫では無く、一也のほうだった。
「いいね、俺も考えていたんだ!」
一人では尻込みしていた良夫も共犯をすすんで提案したきた一也の言葉にうれしくてたまらない気持ちだった。
「決行はいつにする。」
「今夜はどうでしょう。」
「いいね。いつもみたいに夜中に家を抜け出して、裏山に登ろう。」
二人は深夜、家を抜け出してよく星を一緒に見ていた。
星の事はもちろん、将来の事を話し合う時間
は良夫にとって掛け替えの無い時間だった。
午前2時。
父母は眠っている。
学校の上靴を履いて窓を開ける。
屋根に上がり電信柱を伝って下に降りる。
今夜、銃は部室から持って帰っている。
警察に見つからないように裏道を選んで裏山に向かう。
30分後、待ち合わせ場所では一也が先に到着していた。
「よう、待った?」
「いいえ」
「やるか?」
「やりましょう」
一也はバックからクランプを取り出し銃を木に固定した。
「手で撃たないのか?」と良夫は不満そうな声で一也に言った。
「一点一点の部品の精度、部品同士の噛み合わせを見ても強度的に問題無いとは思うのですが、1発だけは遠隔で撃たせてください。」
トリガー部にはラジコンを利用した遠隔操作ユニットを取り付ける。
バンッ
近くの国道を走る車のバックファイヤーに似た音がした。