日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
http://onimimicola.jimdofree.com

◎本日の想像話「ラッキーアイテム」

2013年09月23日 | ◎これまでの「OM君」
深夜3時。
ラジオの占いコーナーを聞くのがここ30年の日課だ。
仕事にもさしさわるが習慣で聞かないとなんとなく気持ちが悪い。


学生時代のくせが抜けない。
今日のラッキーナンバーは「3」
次の日のテストで「3」を選んだ。
正解だった。
自動販売機でおつりが出ないぴったりの金額を入れてジュースを買う。
買った後、釣り銭の確認をする行動と似ている。
いいことがあるとついついやめられない。
そんな事がきっかけで、今日のラッキーカラーは「青」と言われれば必ず青いものを身につけていった。

今日のラッキーアイテムは「三味線耳(さんみせんみみ)のついた花瓶」
ん・・・
何それ。
そんな聞いたことのないラッキーアイテムを言われたのは初めてだ。
あわててパソコンを立ち上げネットで調べた。

三味線耳とは:
陶磁器につけられた耳の一種。
三味線の棹頭に似た形をしたもの。
鼓筒形の花瓶などに見られる。

仕事は休んで、銀座の茶道具屋さんに行った。
あった。
40万円。
ラッキーのために購入した。

何かラッキーな事は無いか。
用もないのにうろうろと歩きまわった。
人気の無い公園に迷い込んだ。
後ろから男が一人ついてくる。
「すいませーん」
そう言いながら男が近づいてきた。
「はい?」
「三味線耳のついた花瓶を出せ」
ナイフを突きつけながら男が言った。
「・・・・」
恐怖のあまり声も出ない。
「持っていないのなら殺す。理由なんてどうでもいいんだ。そちらが悪いから殺す。三味線耳のついた花瓶をたまたま持っていなかったから殺す。持っていれば殺さない。そういう話に俺自身がしたいだけ。まあ、殺したいだけなんだ」
「あります。あります」
「そうか命拾いしたな。あんたラッキーだったな」
そういって男はナイフをポケットになおし逃げていった。


1週間前・・・
「それではそういう事でおねがいします。もう最近は茶の道具はなかなか買ってもらえないんで、まあ、こういう商売があるってお聞きしたもんで、ぜひ宣伝じゃあ無いですが、うちの茶道具をラッキーアイテムとしてアナウンスしてもらいたいとこういう訳で・・・」
とあるラジオ局の打ち合わせ室。
占いコーナーのディレクターがラッキーアイテムの紹介枠をCMとして売っていた。

今日の深夜3時・・・
ラジオを聞く男。
手にはナイフ。
「なんだこのラッキーアイテムは・・・。ふざけやがって。よし俺がラッキーかどうか試してやろう。何人殺しても同じだ」
男はつぶやいた。
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◎本日の想像話「よみがえらない話」

2013年09月23日 | ◎これまでの「OM君」
さあ、会社に行くか。
アパートのドアを開けると、そこにスーツ姿の男が立っていた。
血みどろで、ポタポタと髪の毛の先から血が落ちている。
「ふう」
ため息をついて、その男の体を通り抜ける。
そう、僕は見えちゃうんです。
霊が。
見えないほうが幸せってもんです。
結構、いるんです。
見えないだけでね。
例えば、ほら今電車が来ました。
快速急行。
当然、殺人的な混み具合です。
会社に行きますからこれに乗ります。
いてててて、この駅員さんの押しはどうにかなりませんか。
ああ、体が宙にうく。
てすりてすり。
ふう。
ああそうそう。僕には見えているんですよ。
いま乗り込んでいる人間と同じくらいの数の霊が。
もう人間に重なってぶれぶれの写真みたいに見えています。
そんなこんなで会社に着きました。
放送関係の仕事です。
自分のこの能力をテレビに売り込めないかと考えたこともありましたが自分には芸能の才能はありません。
ただ見えるというだけです。

トイレの前に頭が坊主の男が立っていました。
噺家さんのようにみえます。
仕事柄そういう人々が日常的に歩いています。
「おはようございまーす」
面識はありませんでしたが、挨拶を一応してすれ違いました。
「あんた、わしが見えるんか」
「えっ」
振り返って見ると、男の下腹部は血でべっとりと塗れています。
たたたっと男が走りよってきます。
顔を5センチまで近づけて男は言いました。
「あんたわしが見えるし、話せるんやな」
「はいー、ひいいー」
そう言うのが精一杯でした。
「あのな、説明するわ。よう聞いてな」
「はいー」
「あのな、この世とあの世は表裏一体なんや。
あの世の住人もこの世界に共存してるんや。
でもお互い見えたら気持ち悪いやろ。
だから、あの世の住人も現実世界の人間は見えとらん。
共存共栄や」
「はあ、でも僕には見えますよ」
「せや、わしかて見える。まあ突然変異同士みたいなもんっちゅうわけやろ。だからこうやってあの世の住人とこの世の住人がはっきり話してる。これ不思議」
「はあ。何だか分かったような分からないような。それでご用は」
「せや!飲み込みの早い男やなキミは。気に入ったで。
実はワシが死んだんは江戸時代なんや。当時うれっこの落語家として真打ち間近。まあ調子にのっとったんやろなあ、おなごに刺されてチーン、ポクポクや。
あの世のシステムでまた生まれ変われるんやけど、そうすると、リセット。
一度記憶なんかみんななくなるんや。
わしそれ知っとるから、逆に逃げまくってるんや。
わし新作落語をやりたいや」
「新作ですか(江戸時代に亡くなってるのに新作って)」
「あっ、バカにしたやろ。呪うぞ」
「いえいえいえ」
「こう見えて、江戸時代から平成の時代までじっくり観察してきたんやでワシ。アイフォーンもキンドルも知ってるでワシ」
「そうなんですか。まだ話が見えてこないですね。ちょっと仕事があるんで」
「待て待て待て。ワシを売り出せっちゅうことや」
「えっ」
「お前をとおして落語をやる。やるのはお前やけどな。くすくすくす」
「僕?無理ですって」
「大丈夫や。わしが横にいつもおる。まあ練習はしてもらうが、いやなら呪うぞ」
かくして世界初、いたこ漫談落語家が誕生した。
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