日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の空想話(きっかけは・・・)

2014年01月18日 | ◎これまでの「OM君」
あれはいつの事なのだろう。
小学生ぐらいの時か・・・
収穫の終わった田んぼを走る。
吐く息は白い。
靴もズボンも泥だらけ。
関係ない。
とにかく走る。
そういう遊びに興じていた。
あぜ道に男が立っていた。
不思議な服を着ていた。
テカテカと光沢をおびた生地。
体にぴったりと沿ったデザイン。
私を見つけるとくるりと背を向け逃げるようなそぶりを見せた。
私は、走っているそのままの勢いでおじさんに話しかけた。
「おじさん何してるの?」
おじさんはぎこちなく言った。
「やあ、こんにちは、おじさんは何してるのかねえ。おじさんが知りたいくらいなんだよ」
「変なこというおじさんだな。仕事なの」
「仕事か・・・仕事と言えば仕事だな。」
しばしの沈黙の後こう聞いた
「ぼうやは大きくなったら何になりたい」
「そうね、僕は作るのが好きだから物を作る仕事をするよ」
「そうか・・・そいつはいいねと言いたいが、ぜひおじさんの忠告を聞いてほしい。物を作る職業には携わらないでくれ」
そう言うと、ポカンと口を開ける僕を置いて逃げるように走っていった。
おじさんにはそう言われたけど、逆にファイトが沸いてきた。
なんでそんなこと言われなきゃならないのか!


研究所には誰もいない深夜。
遠い昔、研究者になる決意をした出来事を思い出していた。
今夜は感傷的だ。
いよいよ完成した。
後はスイッチを押すばかり。
カエルがほっぺをふくらませてシャーレに座っている。
四角く光るボタンを押し込む。
ブーン
起動音はだんだん大きく唸りを上げる。
我が身が光を帯び始める。
あっ・・・
思ったがもう遅い。
こんなはずではなかった。
過去に飛ぶのはカエルのはずだった。
気が付いた時には田んぼのあぜ道に立っていた。
寒い。
吐く息が白い。
ここは・・・
もしかして・・・
20年前のあの日。
自分の服をみる。
テラテラと光る素材の作業スーツを着ていた。

私はこれからどうなるのか。
思考がグルグルまわる。
未来に帰る方法は無い。
戸籍の無い未来人はどうやって生きていけば良いのか。

子供が走り込んできた。
ヤバイ
子供の頃の俺だ。
「おじさん何してるの?」
話しかけられる。
どうすれば将来タイムマシンの開発をしない人生を歩んでくれるのか。
必死で考えていた。

主の失ったカエルだけが、研究所にいた。
網膜暗証キーをあけて入室する男。
仕立ての良いスーツを着た老人。
20年前の過去に飛び、20年が経過した現在の自分。
現在の俺が過去に飛んだのを確認した。
これで俺の戸籍が使える。

過去に飛んだあの日より、記憶を頼りにビジネスに没頭した20年。
自宅に戻り、今夜はゆっくりと眠ろう。
過去に飛んだ俺は俺なりに生きるさ。
コメント
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