日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日のお話「懺悔する人々」

2016年07月09日 | ◎これまでの「OM君」
とある懺悔室。

「神父様お聞きください。私は人を殺めました。決して許される罪では無いとは思います。でも懺悔したいのです。」
カーテンの降ろされた小窓が音も無く開いた。
「神はそれでも許されるでしょう。続けなさい」
姿の見えない神父は穏やかにそう言った。
「あれは10年前。
結婚を考えておつきあいしていた女性がおりました。その女性からある日、別れを告げられました。いくら理由を聞いても答えてくれません。
何故なんだ。
寝てもさめても考えるのは彼女の事ばかり。

一目彼女の姿を見たい。
その一心で彼女のアパートの周辺を歩いていた時です。
偶然目撃してしまいました。
仕事仲間と一緒にアパートに入る彼女の姿を。
頭がかーっとしました。
裏切られた怒りに私の思考は支配されました。
当時、私は家業の運送業を営んでおりました。冷凍食品などを保管する巨大な冷凍庫を保持しておりました。
ここに二人とも閉じこめてしまおう。
私の頭の奥でどす黒い閃きがありました。
これしかない。
そう信じて疑いませんでした。

私は別々に二人を呼びだし、まんまと冷凍庫に閉じこめる事に成功しました。

あれから10年。
一度も冷凍庫の扉は開けていません。

神父様、このような作り話を長々と話してしまった私の罪を神様はお許しくださるでしょうか」

しばしの沈黙。

「そうですか、作り話、うそであって本当に良かったと思います」
神父は深いため息をついた。
「そうそう、私も一つ、許しを神にこう必要があります。
私は神父ではありません。
下世話に人々の懺悔を盗み聞きしているただの中年なのです。神はこんな私を許してくださるでしょうか」

この時、二人にはどこからともなく声が聞こえました。
「二人とも、有罪」
神はスマホをいじりながらそう言いました。
コメント
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