とある日の夕方、小学六年生のひろし君はいつものように下校していた。
「ひろし君、ひろし君」校門のそばの木から声がした。ひろし君は声の出所を探すが人影は無い。首を傾げながら帰ろうとすると、再び声が聞こえた。
「ここじゃ」魔法のようにジャージ姿の博士が立っていた。博士はひろしのお隣に住む発明家だ。手には木目が印刷された風呂敷を持っている。
「すごいじゃろ」博士は得意顔で風呂敷をひらひらさせた。
「すごいね。忍者みたいだ」ひろし君も興奮気味だ。博士は残念そうにため息をついた。
「忍者と同次元に考えてもらうと困るよ。この風呂敷に見える物はワシの発明した、光学迷彩フィルムじゃ。つまりこのフィルムの裏側にあるものをフィルムの表面に映し出す。この風呂敷をまとえばワシの姿は消えるということだ。ただしこいつの欠点は表裏を間違えてかぶると、なぜか裏のワシが表に映し出されて姿まるだしになるんじゃあ」博士は豪快に笑う。
「風呂敷のほうがいいかもね」
「まあこんなものは発明のうちに入らん。そんなことよりもワシが君を待ちかまえていたほかでもないまたひとつ発明してしまったんじゃ。自慢話をしたくていても立ってもいられなかったんじゃ」博士は前のめりになる。
「何を発明したの」ひろし君も前のめりになった。
「冷蔵庫じゃ」
「冷蔵庫?」ひろし君は少し興味を失った。
「ただの冷蔵庫じゃあないぞ。知らない間に足りない物が補充される冷蔵庫じゃ」
「それってすごいの」
「すごいじゃあないか。発明した覚えも無いのにあるとき気づいたんじゃ。冷蔵庫にない食料が補充されるとな。ただ、気になるのは……」
「気になるのは」
「最近蛍光色のブルゾンを着た若者が食料の話をしにくるんじゃ。何が足りないとかな。そうすると勝手に食料が玄関においてあるんじゃ。ワシは直感した。自分でも気づかない発明をしてしまったと。食料を作り出す冷蔵庫を発明してしまった。なくなった食材を冷蔵庫が自動で検知して、合成する。なおかつ玄関先においていく。ただ気がかりな事は毎月覚えのない現金が引き落とされてることぐらいかな。ちょうどワシの食費ぐらいの金額なんじゃ」
「それは業者が注文をとりにきて配達してくれてるだけだね。便利だからそのまま続けなよ」
ひろし君は手に持っているサッカーボールをリフティングしながら言った。
「ひろし君、ひろし君」校門のそばの木から声がした。ひろし君は声の出所を探すが人影は無い。首を傾げながら帰ろうとすると、再び声が聞こえた。
「ここじゃ」魔法のようにジャージ姿の博士が立っていた。博士はひろしのお隣に住む発明家だ。手には木目が印刷された風呂敷を持っている。
「すごいじゃろ」博士は得意顔で風呂敷をひらひらさせた。
「すごいね。忍者みたいだ」ひろし君も興奮気味だ。博士は残念そうにため息をついた。
「忍者と同次元に考えてもらうと困るよ。この風呂敷に見える物はワシの発明した、光学迷彩フィルムじゃ。つまりこのフィルムの裏側にあるものをフィルムの表面に映し出す。この風呂敷をまとえばワシの姿は消えるということだ。ただしこいつの欠点は表裏を間違えてかぶると、なぜか裏のワシが表に映し出されて姿まるだしになるんじゃあ」博士は豪快に笑う。
「風呂敷のほうがいいかもね」
「まあこんなものは発明のうちに入らん。そんなことよりもワシが君を待ちかまえていたほかでもないまたひとつ発明してしまったんじゃ。自慢話をしたくていても立ってもいられなかったんじゃ」博士は前のめりになる。
「何を発明したの」ひろし君も前のめりになった。
「冷蔵庫じゃ」
「冷蔵庫?」ひろし君は少し興味を失った。
「ただの冷蔵庫じゃあないぞ。知らない間に足りない物が補充される冷蔵庫じゃ」
「それってすごいの」
「すごいじゃあないか。発明した覚えも無いのにあるとき気づいたんじゃ。冷蔵庫にない食料が補充されるとな。ただ、気になるのは……」
「気になるのは」
「最近蛍光色のブルゾンを着た若者が食料の話をしにくるんじゃ。何が足りないとかな。そうすると勝手に食料が玄関においてあるんじゃ。ワシは直感した。自分でも気づかない発明をしてしまったと。食料を作り出す冷蔵庫を発明してしまった。なくなった食材を冷蔵庫が自動で検知して、合成する。なおかつ玄関先においていく。ただ気がかりな事は毎月覚えのない現金が引き落とされてることぐらいかな。ちょうどワシの食費ぐらいの金額なんじゃ」
「それは業者が注文をとりにきて配達してくれてるだけだね。便利だからそのまま続けなよ」
ひろし君は手に持っているサッカーボールをリフティングしながら言った。