星の王子さま | |
浅岡 夢二 | |
ゴマブックス株式会社 |
先日、何かのイベントで待ち時間がすご~~くあって暇だったのでKindleで何か買ってみようと買ったのがこの本。
「大切なものは目では見えないんだよ。ハートで見なくちゃ。」で有名なお話。
確か昔に買った気がするので何度も読んだ気がするんですが、改めて読んでまた感動。
王子さまと最後の別れのシーンなんか泣けて泣けて・・・。
こんなに悲しいお話だったっけ。
たくさんの「王様」や「地理学者」、「ビジネスマン」や「酔っぱらい」、そして「うぬぼれや」や「点灯夫」や「転轍手」のいるこの「地球」で、ハートでものを見て生きていくのは難しいかもしれない。
この王子さまのメッセージのように、私たちは今、探している「大切なもの」は何か思い出さなくちゃいけない時なのかもしれないですね。
操縦士でもあり作家でもあった作者サン=テグジュベリは、第二次世界大戦中にフランスからアメリカに亡命し、43才の時にこの「星の王子さま」を出版し、44才の時に大戦中の偵察飛行で地中海上空で撃墜されて亡くなっています。
もしかしたら星に帰ったのかもしれないですね。
−26−
───ああ、来たんだね。
そして、ぼくと手をつなぎました。
でも、まだ何かを心配してるようでした。
───来ない方がよかったのに。きっと、つらい思いをするよ。ボクは死んだみたいになるからね。でも、本当は死んでいないんだ・・・。
ぼくは、何も言いませんでした。
───わかるでしょ。ボクの星は遠すぎるんだ。このからだを持って行くことはできない。重すぎるからね・・・。
ぼくは、何も言いませんでした。
───でも、体は抜け殻と同じだから・・・。古い抜け殻を見たって、悲しくないでしょ?
ぼくは、何も言いませんでした。
王子さまは、ちょっと参ったようでした。でも、気力をふりしぼって、さらにこうつけ加えました。
───ねえ、お願いだから、わかって。
ボクも、きっと星を見るよ。どの星にも、滑車とロープのついた井戸があるんだ。そして、どの星にもボクに水をくれる・・・。
ぼくは、何も言いませんでした。
───すごく楽しいだろうね。だって、キミはたくさんの鈴を持つことになり、ボクはたくさんの井戸を持つことになるんだから。
それから、王子さまは黙りました。
見ると、王子さまは静かに泣いていました。
───さあ、着いたよ、ここからは、一人きりにしてね。あとほんの少し進むだけだから。
そう言って、王子さまはそこにしゃがみこみました。
きっと、すごく恐かったのだろうと思います。
王子さまは、しゃがんだまま、こう言いました。
───わかってるでしょ。ボクは、バラの花の面倒を見なくちゃいけないんだ。あの花は、とても弱い上に、世間知らずなんだから。
自分の身を守るために、役に立たないとげをたった4本持っているだけだしね。
ぼくも、立っていられなくなって、そこにしゃがみこみました。
王子さまは、こう言いました。
───さあ、もうさよならだよ。
少しためらったあとで、王子さまは立ち上がりました。そうして、一歩進みました。
ぼくは、金縛りにあったように、まったく動くことができませんでした。王子さまのくるぶしのあたりに、チラッと黄色い閃光が走ったように思われました。
叫ぶことさえしませんでした。
それから、木が倒れるように、ゆっくりと倒れました。
砂の上に倒れたために、何の音もしませんでした。
(『星の王子さま』より)