マダガスカルで一番品質の良いパリサンダーを産出しているのは、南西部にあるツレアルである。材の硬さ、色合い、木目が数ある産地の中で最も良いとされている。新木場に限らず、全国の銘木屋の垂涎の的となっていた。而し、新木場で最大の銘木問屋であり、輸入会社であるH社が買いまくった為、材は枯渇状態であった。良い材を此処から集めるのは、その経済効率の点からマダガスカルの業者からは敬遠される状態となってしまった。
私はツレアル産のパリサンダーに拘らなかった。それと同等か、それより良ければ全て買うことにした。協力してくれる業者や商務省、森林省の役人から教えを受け、ツレアルより少し北にあるモロンダバの森に目を付けた。ご存じのように、此処はバオバブで最もよく知られている地域である。アンタナナリブからは直線で380キロほどの所にある。
木材、特に銘木の業界は特異な存在で、非常に保守的であり排他的である。銘木の輸入業者は、H社のような大手は別として、銘木関連業者の海外駐在員を経て独立する例が多い。彼らは人脈を持っているのですんなり業界に溶け込める。而し、彼らは海外駐在中に知り合った業者からしか買うことが出来ない。他の国や地域から買う方法を知らないのである。従って材の種類や産地も限られている。その点、私は貿易業からの参入なので、木材の種類、産地に関係なく、客の要望通りの材を世界中から集める自信はあった。だが、弱点はこの業界に人脈を持っていなかったことだ。一軒一軒当るしかなかった。売込みの段階で、パプア・ニューギニアの黒檀とマダガスカルからのパリサンダーの情報を得た。これから先のことは貿易屋である私の最も得意とするところだった。短期間で客の要望を満たせることになり、新木場の業者からの信頼を得た。
当時(ラチラカ大統領の在任中)の森林大臣ご夫妻。モロンダバの業者と接触するに当たり、細かい指示と助言を頂いた。
C社の社長は私と一緒にモロンダバに行くのを楽しみにしていたが、北部への出張と重なり実現出来なかった。代りに通訳兼運転手のラフィック君を付けてくれた。目的地に夕方までには着きたかったので、翌朝6時にコルベール・ホテルに迎えに来て貰うことにした。
モロンダバの手前の漁村。庭にナマコが干してあった。
このかわいい子も、親の手助けをして働いている。頭に乗せている籠には干す前のナマコが入っていた。
モロンダバの森には彼女ら姉妹も伐採の権利を持っていると聞き、挨拶に伺った。我々の来たことを他所から知らされる前に、彼女らに挨拶したことで非常な好印象を持ってくれた。そして当方の要望を全面的に聞き入れてくれた。
上の二枚はモロンダバの森の伐採権を持つ姉妹の住居。これでも周囲の住宅事情に比べれば「豪邸」の部類に入る。
どのような関係かは聞かなかったが、上の姉妹と一緒に住んでいるようだ。この辺りはアフリカ系のサカラバ族が多く住む場所である。以前のモロンダバはアンセルメ・ジャオリズィキー課長と同じサカラバ族とベゾ族(ともにアフリカ系)だけの居留地だったが、それ以外の部族が他所から移り住んだりしているようだ。
上の三枚はモロンダバで我々の居住する、一戸建てのバンガロー・ホテルとその内部である。意外と快適だった。窓とドアーを開けておけば涼しい風が入りきれないほど入って来ては、反対側の窓から抜けていく。ただ、シャワーからお湯が出ないのには困った。愛想のいいマネージャーに「お湯が出ないよ!」と云ったら、彼は落ち着いた態度で「此処は熱い国ですから」と云った。装置が壊れているのではなく、最初から水のシャワーなのだ。いくら熱い国だと云われても陽が沈んでからの水のシャワーには参った。次の日からは、少し早めに帰り、誰も使わぬうちに熱いお湯のシャワーをふんだんに使った。朝出かけるときに、母屋の屋根に水槽があるのを見つけたのだ。やはり私の考えてた通り、日中の太陽の熱で、水槽の水は相当に熱くなっていた。但し、それを使いきってしまえば水道から自動的にタンクに補充されるので、新鮮な、冷たい水のシャワーとなる。此のことは、他の客には勿論のこと隣のバンガローに住むラフィックにも黙っていた。お蔭で滞在中は熱いシャワーを満喫出来た。
バンガロー・ホテルからの眺め。地平線の向うにアフリカ大陸のモザンビークがある。此の砂浜から600キロ程の所だ。
私はツレアル産のパリサンダーに拘らなかった。それと同等か、それより良ければ全て買うことにした。協力してくれる業者や商務省、森林省の役人から教えを受け、ツレアルより少し北にあるモロンダバの森に目を付けた。ご存じのように、此処はバオバブで最もよく知られている地域である。アンタナナリブからは直線で380キロほどの所にある。
木材、特に銘木の業界は特異な存在で、非常に保守的であり排他的である。銘木の輸入業者は、H社のような大手は別として、銘木関連業者の海外駐在員を経て独立する例が多い。彼らは人脈を持っているのですんなり業界に溶け込める。而し、彼らは海外駐在中に知り合った業者からしか買うことが出来ない。他の国や地域から買う方法を知らないのである。従って材の種類や産地も限られている。その点、私は貿易業からの参入なので、木材の種類、産地に関係なく、客の要望通りの材を世界中から集める自信はあった。だが、弱点はこの業界に人脈を持っていなかったことだ。一軒一軒当るしかなかった。売込みの段階で、パプア・ニューギニアの黒檀とマダガスカルからのパリサンダーの情報を得た。これから先のことは貿易屋である私の最も得意とするところだった。短期間で客の要望を満たせることになり、新木場の業者からの信頼を得た。
当時(ラチラカ大統領の在任中)の森林大臣ご夫妻。モロンダバの業者と接触するに当たり、細かい指示と助言を頂いた。
C社の社長は私と一緒にモロンダバに行くのを楽しみにしていたが、北部への出張と重なり実現出来なかった。代りに通訳兼運転手のラフィック君を付けてくれた。目的地に夕方までには着きたかったので、翌朝6時にコルベール・ホテルに迎えに来て貰うことにした。
モロンダバの手前の漁村。庭にナマコが干してあった。
このかわいい子も、親の手助けをして働いている。頭に乗せている籠には干す前のナマコが入っていた。
モロンダバの森には彼女ら姉妹も伐採の権利を持っていると聞き、挨拶に伺った。我々の来たことを他所から知らされる前に、彼女らに挨拶したことで非常な好印象を持ってくれた。そして当方の要望を全面的に聞き入れてくれた。
上の二枚はモロンダバの森の伐採権を持つ姉妹の住居。これでも周囲の住宅事情に比べれば「豪邸」の部類に入る。
どのような関係かは聞かなかったが、上の姉妹と一緒に住んでいるようだ。この辺りはアフリカ系のサカラバ族が多く住む場所である。以前のモロンダバはアンセルメ・ジャオリズィキー課長と同じサカラバ族とベゾ族(ともにアフリカ系)だけの居留地だったが、それ以外の部族が他所から移り住んだりしているようだ。
上の三枚はモロンダバで我々の居住する、一戸建てのバンガロー・ホテルとその内部である。意外と快適だった。窓とドアーを開けておけば涼しい風が入りきれないほど入って来ては、反対側の窓から抜けていく。ただ、シャワーからお湯が出ないのには困った。愛想のいいマネージャーに「お湯が出ないよ!」と云ったら、彼は落ち着いた態度で「此処は熱い国ですから」と云った。装置が壊れているのではなく、最初から水のシャワーなのだ。いくら熱い国だと云われても陽が沈んでからの水のシャワーには参った。次の日からは、少し早めに帰り、誰も使わぬうちに熱いお湯のシャワーをふんだんに使った。朝出かけるときに、母屋の屋根に水槽があるのを見つけたのだ。やはり私の考えてた通り、日中の太陽の熱で、水槽の水は相当に熱くなっていた。但し、それを使いきってしまえば水道から自動的にタンクに補充されるので、新鮮な、冷たい水のシャワーとなる。此のことは、他の客には勿論のこと隣のバンガローに住むラフィックにも黙っていた。お蔭で滞在中は熱いシャワーを満喫出来た。
バンガロー・ホテルからの眺め。地平線の向うにアフリカ大陸のモザンビークがある。此の砂浜から600キロ程の所だ。