◆ 「口元チェック」通知をこっそりと撤回した中原教育長
校長会で、「校長の責任と裁量で」「収束させていきたい」と指示
大阪府教育委員会は、2013年9月4日と2014年1月14日の2度わたって、卒業式・入学式で「君が代」を斉唱する時、教職員が起立した上で本当に歌っているかどうか、管理職に目視で確認し報告するよう求める通知を行いました。いわゆる「口元チェック」通知です。中原教育長は、自身のブログなどで、2011年6月の「国旗国歌強制条例」や2012年1月の「職務命令通達」を守らせるために当然のことで、府民もそれを求めていると説明してきました。
朝日新聞は「天声人語」で、この通知のおぞましさを次のように批判しています。「自主性が大切と普段から説いてきた先生が、信念を封じて口パクをする。想像したくない光景だ。
起立斉唱を義務づける条例がある以上、守るのは当然と考える人も少なくないだろう。だが、君が代をどう考えるか、歌うかどうかは個人の思想・良心の自由にかかわる。最高裁も去年の判決で教育への行き過ぎた処分に釘を刺している。先生がお互いに監視しあう。教育の場が荒廃しないか。多感な生徒の心に暗い影を落とさないか。」(2013年9月21日)
すでに、不起立で処分されることを避けるために卒業式や入学式に参列できなかったり、校長が起立できない教員を式に参列させない職務命令(卒業学年の担任に式場外勤務を命じる等)を行うなどが横行しはじめていました。
起立を命じる職務命令によって、重い気持ちで、やっとの思いで、形だけ起立している教職員は少数ではありません。これらに対して、マスコミだけでなく、現場の教職員も、多くの府民も、職務命令や通達・通知を乱発して教職員を萎縮させることには疑問を感じていました。ましてや、中原教育長に対する「口パク」通知には多くの批判が集まりました。
大阪ネットは、昨年9月から「口元チェック」通知撤回署名に取り組み、再三の要請行動を行って来ました。行動には、これまでにない手応えがありました。
◆ 追い込まれた中原教育長
2014年3月の卒業式では、3年生の担任に対する事前の「起立」確認を行い、「起立」を明言しない3年担任を式場に入れない職務命令を発したり、その職務命令をたてに「起立」を迫る校長が幾人も確認されました。中原教育長による「口元チェック」通知をたてに、歌っているかどうかの来賓によるチェックの可能性も噂されました。生徒はそっちのけで、「起立」「斉唱」のための式のようです。
一方で、教育現場にあるまじきこのような行為を認められないと考える校長もありました。式場外の命令を受けた3年担任複数から、弁護士会への人権救済申立の動きも生まれています。「口元チェック」は、現場からも、反対運動からも、マスコミからも、保護者や生徒を含む各方面からも批判され、中原教育長は追い込まれたと考えられます。
中原教育長は、自身の「口元チェック」指示に落としどころをつけるために、3月25日の教育委員会議及び4月3日の校長会で、「不起立者が少数になったため、起立斉唱をチェックする特別な体制が不要になった。今後、この問題は通常の校長によるマネジメントに委ねる。」との発言が行ったのです。
以下に4月3日校長会での関連部分の全文を掲載します。しかし、府教委は、3月25日教育委員会議で、中原教育長と陰山委員長の2名が上記と同主旨の発言を行っているにもかかわらず、誰でも閲覧可能な「教育委員会議議事録」に一切記載せず事実を隠蔽しています。
※ 「平成26年度当初府立学校長会 教育長あいさつ」(2014年4月3日)
――― 情報開示請求により公開
「5.入学式における国旗・国歌の指導について」部分の全文
国旗・国歌の指導に関してですが、これまで、起立せずに歌わない教員もいれば、起立して歌っていない教員もいるということがありました。こうしたこともあって、起立しているけれども歌っていないという教員も含め、きちんと確認しようということになりましたが、歌っていない教員は、起立していない教員とイコールだということが分かりました。
それが6人ということで、これは1万何千人の中の6人ですので、円滑に毎年実施している学校からすると、もういい加減にして欲しいという状況もあるかと思います。ですから、各校の状況に応じて、例えば職員会議で、「これは条例で決まっていることであり、職務命令が出ていますが、6人とはいえ、守らない教員がいるので、命令は致し方がないと思ってください。」といったように事前に確認をして、我が校は大丈夫だということであれば、当日教頭先生や事務長さんが見て確認するということはしないということも一つの選択肢です。
これはもう、他の法規違反と同じように扱っていきたいと思っています。例えば、車に乗ってきてはいけないのに乗ってくるとか、タバコを吸っている教員がいると近所からの通報があるとかいった場合にどうするのか、職員会議で「先生方、そのような事実がもしもあるのであれば、恥ずかしいので、やめていただきたい」と校長先生が一喝して、それで収まるというのであれば、見回るようなことはしないという選択肢もあるでしょうし、それでは心配だということであれば、教頭先生と一緒に1日1回見て回るということもあると思いますので、これはどちらがどうということではなく、マネジメントとして必要だということであれば、やらざるを得ないと思います。
一方で、チェックを簡単にした場合に、歌っていない教員がいるとか、起立してしない教員がいるとかいったことが、生徒・保護者や来賓の方から指摘されるということがあれば、処分がどうこうということはケースバイケースだと思いますが、残念ながらマネジメント力も含め、校長先生の責任が追及の対象となるというリスクはあります。
ですから、校長先生の方で、自分の学校は大丈夫だということであれば、事前に職員会議で確認するということにとどめてもいいでしょうし、ちょっとうちの学校は心配だというのであれば、これまでと同じような形で確認をしていただいても結構です。
あるいは、注意すべきは一人だけで、その他の先生は大丈夫だというような状況であれば、府教委と相談していただいて、その一人に対する対策を粛々と考えていった方が、他の先生方にご迷惑をお掛けしないということもあると思います。
事後の報告についても、きちんと立ちましたとか、歌いましたとかいうのはもうやめにして、残念ながら違反が出だという場合にのみ、ご報告いただくということにしようと、教育委員全員で話し合いをしました。
また、マスメディアの一部には、いつまでも大きく取り扱いたいというのがあって、また、運動をしている人からすると、取り上げてもらえばもらうほど、自分たらが主張したい論点がクローズアップされるということもあるのかもしれませんが、大多数の先生は、イデオロギーや内心の思想に関わらず、ルールで決まったことだから、好きとか嫌いとかではなく、きちんと守らないと子どもたらに示しがつかないという姿勢で行動して<ださっていると思います。
この件については、わずか6人のことですので、これ以上しつこく時間を使うのではなく、収束させていきたいと思っていまして、皆さんの責任と裁量において、確認の方法を考えていただければと思います。
「日の丸・君が代」強制反対、不起立処分を撤回させる
『大阪ネットニュース 第6号』(2014年6月29日)
校長会で、「校長の責任と裁量で」「収束させていきたい」と指示
大阪府教育委員会は、2013年9月4日と2014年1月14日の2度わたって、卒業式・入学式で「君が代」を斉唱する時、教職員が起立した上で本当に歌っているかどうか、管理職に目視で確認し報告するよう求める通知を行いました。いわゆる「口元チェック」通知です。中原教育長は、自身のブログなどで、2011年6月の「国旗国歌強制条例」や2012年1月の「職務命令通達」を守らせるために当然のことで、府民もそれを求めていると説明してきました。
朝日新聞は「天声人語」で、この通知のおぞましさを次のように批判しています。「自主性が大切と普段から説いてきた先生が、信念を封じて口パクをする。想像したくない光景だ。
起立斉唱を義務づける条例がある以上、守るのは当然と考える人も少なくないだろう。だが、君が代をどう考えるか、歌うかどうかは個人の思想・良心の自由にかかわる。最高裁も去年の判決で教育への行き過ぎた処分に釘を刺している。先生がお互いに監視しあう。教育の場が荒廃しないか。多感な生徒の心に暗い影を落とさないか。」(2013年9月21日)
すでに、不起立で処分されることを避けるために卒業式や入学式に参列できなかったり、校長が起立できない教員を式に参列させない職務命令(卒業学年の担任に式場外勤務を命じる等)を行うなどが横行しはじめていました。
起立を命じる職務命令によって、重い気持ちで、やっとの思いで、形だけ起立している教職員は少数ではありません。これらに対して、マスコミだけでなく、現場の教職員も、多くの府民も、職務命令や通達・通知を乱発して教職員を萎縮させることには疑問を感じていました。ましてや、中原教育長に対する「口パク」通知には多くの批判が集まりました。
大阪ネットは、昨年9月から「口元チェック」通知撤回署名に取り組み、再三の要請行動を行って来ました。行動には、これまでにない手応えがありました。
◆ 追い込まれた中原教育長
2014年3月の卒業式では、3年生の担任に対する事前の「起立」確認を行い、「起立」を明言しない3年担任を式場に入れない職務命令を発したり、その職務命令をたてに「起立」を迫る校長が幾人も確認されました。中原教育長による「口元チェック」通知をたてに、歌っているかどうかの来賓によるチェックの可能性も噂されました。生徒はそっちのけで、「起立」「斉唱」のための式のようです。
一方で、教育現場にあるまじきこのような行為を認められないと考える校長もありました。式場外の命令を受けた3年担任複数から、弁護士会への人権救済申立の動きも生まれています。「口元チェック」は、現場からも、反対運動からも、マスコミからも、保護者や生徒を含む各方面からも批判され、中原教育長は追い込まれたと考えられます。
中原教育長は、自身の「口元チェック」指示に落としどころをつけるために、3月25日の教育委員会議及び4月3日の校長会で、「不起立者が少数になったため、起立斉唱をチェックする特別な体制が不要になった。今後、この問題は通常の校長によるマネジメントに委ねる。」との発言が行ったのです。
以下に4月3日校長会での関連部分の全文を掲載します。しかし、府教委は、3月25日教育委員会議で、中原教育長と陰山委員長の2名が上記と同主旨の発言を行っているにもかかわらず、誰でも閲覧可能な「教育委員会議議事録」に一切記載せず事実を隠蔽しています。
※ 「平成26年度当初府立学校長会 教育長あいさつ」(2014年4月3日)
――― 情報開示請求により公開
「5.入学式における国旗・国歌の指導について」部分の全文
国旗・国歌の指導に関してですが、これまで、起立せずに歌わない教員もいれば、起立して歌っていない教員もいるということがありました。こうしたこともあって、起立しているけれども歌っていないという教員も含め、きちんと確認しようということになりましたが、歌っていない教員は、起立していない教員とイコールだということが分かりました。
それが6人ということで、これは1万何千人の中の6人ですので、円滑に毎年実施している学校からすると、もういい加減にして欲しいという状況もあるかと思います。ですから、各校の状況に応じて、例えば職員会議で、「これは条例で決まっていることであり、職務命令が出ていますが、6人とはいえ、守らない教員がいるので、命令は致し方がないと思ってください。」といったように事前に確認をして、我が校は大丈夫だということであれば、当日教頭先生や事務長さんが見て確認するということはしないということも一つの選択肢です。
これはもう、他の法規違反と同じように扱っていきたいと思っています。例えば、車に乗ってきてはいけないのに乗ってくるとか、タバコを吸っている教員がいると近所からの通報があるとかいった場合にどうするのか、職員会議で「先生方、そのような事実がもしもあるのであれば、恥ずかしいので、やめていただきたい」と校長先生が一喝して、それで収まるというのであれば、見回るようなことはしないという選択肢もあるでしょうし、それでは心配だということであれば、教頭先生と一緒に1日1回見て回るということもあると思いますので、これはどちらがどうということではなく、マネジメントとして必要だということであれば、やらざるを得ないと思います。
一方で、チェックを簡単にした場合に、歌っていない教員がいるとか、起立してしない教員がいるとかいったことが、生徒・保護者や来賓の方から指摘されるということがあれば、処分がどうこうということはケースバイケースだと思いますが、残念ながらマネジメント力も含め、校長先生の責任が追及の対象となるというリスクはあります。
ですから、校長先生の方で、自分の学校は大丈夫だということであれば、事前に職員会議で確認するということにとどめてもいいでしょうし、ちょっとうちの学校は心配だというのであれば、これまでと同じような形で確認をしていただいても結構です。
あるいは、注意すべきは一人だけで、その他の先生は大丈夫だというような状況であれば、府教委と相談していただいて、その一人に対する対策を粛々と考えていった方が、他の先生方にご迷惑をお掛けしないということもあると思います。
事後の報告についても、きちんと立ちましたとか、歌いましたとかいうのはもうやめにして、残念ながら違反が出だという場合にのみ、ご報告いただくということにしようと、教育委員全員で話し合いをしました。
また、マスメディアの一部には、いつまでも大きく取り扱いたいというのがあって、また、運動をしている人からすると、取り上げてもらえばもらうほど、自分たらが主張したい論点がクローズアップされるということもあるのかもしれませんが、大多数の先生は、イデオロギーや内心の思想に関わらず、ルールで決まったことだから、好きとか嫌いとかではなく、きちんと守らないと子どもたらに示しがつかないという姿勢で行動して<ださっていると思います。
この件については、わずか6人のことですので、これ以上しつこく時間を使うのではなく、収束させていきたいと思っていまして、皆さんの責任と裁量において、確認の方法を考えていただければと思います。
「日の丸・君が代」強制反対、不起立処分を撤回させる
『大阪ネットニュース 第6号』(2014年6月29日)
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