=教育現場からの報告(『いまこそ』)=
◆ 吹田市教委の「君が代」暗記調査問題についての報告
梅原 聡
今年6月、吹田市教育委員会が、全ての小中学校を対象に入学式や卒業式での「君が代」斉唱の実態を調べるとして、子どもたちへの君が代の暗記状況調査を行ったと新聞が報道しました。
実際に調査が行われたのは卒業式直前の3月初旬、学年ごとの在籍数と暗記している者の人数を答えさせるという内容でした。
一部の教員が管理職の指示で、「君が代」を暗記している子どもに手をあげさせて人数を調ぺ、この問題が明るみに出ましたが、ほとんどの教員には知らされておらず、教職員組合も含めて驚きをもって受け止められたのが実情です。
組合と市教委の協議で、自民党の市議の議会での質問に答えるために調査を行ったと説明され、驚くべきことに、2012年以降すでに6回も同様の調査が行われていたことが明らかになりました。調査の実態は、管理職と一部の教員の間での推測等を含めた非常にいい加減な調査であったようです。
報道以降、地域の組合を始め、さまざまな市民団体から抗議が殺到しました。
このような調査は、子どもや保護者・教員に「君が代」は暗記して歌うべきもの、暗記させ歌わせる必要があるものと強く意識させ、憲法の保障する「思想・良心の自由」「内心の自由」を侵す。
教育委員会がこのような調査を行うことは、学校での教育内容に直接的に影響を与え、教育の独立性を侵す。
今回の調査は市会議員の圧力によるものであり、特定の考え方を持っ者による教育への政治介入を許したことになり、「教育は、不当な支配に服することなく行われるべきものである」とした教育基本法に明らかに違反する。etc
教育委員会は、当初、調査方法の指示をしなかったことなどには問題があったが、調査そのものは必要であるとして、今後の調査については慎重に検討するという答え方に終始していました。
しかし、市民850人の署名を添えた抗議文を携え、小中学生の保護者を含む50人近い市民有志が市教委に押しかけ、調査の不当性を訴えた結果、今後は今回のような暗記率を求めるような調査は行わないという言葉を引き出すことができました。
また、今回の件について、教育委員会は自ら問題点を検証して教育委員会議で報告するという、これまでにない姿勢も見せました。
市民や組合が結集して働きかけた結果だと、少し手ごたえも感じています。
この問題をきっかけに、私たちの間に、卒業式のあり方などに関心が高まった面もあります。また一方で、議会・教育委員会の活動にもっと目を向けようという声も、あちこちからあがりました。
現在は、卒業式にむけて、卒業証書の生年月日の表記の西暦・元号を子どもが自由に選べる形に戻そうという取り組みや、壇上での証書授与ではなくフロア形式の卒業式を取り戻そうという取り組みが始まろうとしています。
また、議会傍聴などを積極的に行おうという呼びかけも拡がって、傍聴報告を共有することも行われるようになりました。今回の騒動を今後に生かしていきたいと考えています。
予防訴訟をひきつぐ会通信『いまこそ 29号』(2023.09.20)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます