★ 河原井・根津裁判
1・処分と判決
(図略)
2012年1.16最高裁判決以前の東京の「君が代」不起立処分は、
不起立1回が戒告、不起立2回で減給(1/10)1月、不起立3回で減給(1/10)6月、不起立4回で停職1月、不起立5回で停職3月、不起立6回で停職6月。
2.07年事件15年須藤・高裁判決16年最高裁決定
須藤・高裁判決は、「『過去の処分歴』は前回根津停職処分において考慮されて」おり、06年処分から07年処分に至るまでの間に「処分を加重する新たな個別具体的な事情はない」として、07年停職6月処分を取り消した。
根津が受ける不利益について、「停職6月処分を科すことは、…根津がさらに同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、次は地方公務員である教員としての身分を失う恐れがあるとの警告を与えることとなり、その影響は、単に期間が倍になったという量的な問題にとどまるものではなく、身分喪失の可能性という著しい質的な違いを根津に対して意識させざるを得ないものであって、極めて大きな心理的圧力を加える」と停職6月の過酷さを明示したうえで、
「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と判示。「君が代」起立を求める職務命令は憲法19条の「間接的制約」と性格付けをしてきた最高裁判決から一歩踏み込み、実質的制約に道を拓いた。
3.08年事件17年地裁判決
08年停職6月取消訴訟地裁判決(清水響裁判長)は、12年最判に従い河原井処分は取り消したものの、損害賠償は本件処分当時、12年1月の最判が出されておらず、処分の量定に際して都教委が注意義務を尽くさずに停職6月処分を選択したとまでは認めることはできないとして、損害賠償の必要はないとした。
根津については、15年須藤高裁判決・16年最高裁決定を無視して処分を適法とした。歴史を逆戻りさせる不当判決であり、また、安倍首相の息がかかった司法界の今後を予測させるものだった。
同判決は、「根津の過去の処分歴に係る非違行為は、積極的に式典や研修の進行を妨害する行為が含まれているほか、その頻度も、懲戒処分7回、訓告2回という高いものである…。また、トレーナー等着用行為を行い…根津はあえて学校の規律や秩序を乱す行為を選択して実行している。…このような過去の処分歴に係る一連の非違行為の内容や頻度等及び本件トレーナー等着用行為を含む根津の一連の言動に鑑みると、…学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から、…停職処分を選択することの相当性を基礎づける具体的な事情があったものと認めることができる」として、須藤判決が禁じた同一の「過去の処分歴」及び、日常の作業着として着用していたトレーナーのロゴを理由に停職6月処分を正当化した。
控訴審では都教委は、根津の「処分説明書」に「君が代」不起立の他、「日の丸 君が代 強制反対」「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」のロゴが入ったトレーナー着用が職務命令違反、職務専念義務違反だと記載。地裁判決はこれを、処分を加重して良い「具体的事情」とした。
「南大沢学園以前・以後の学校でもこれを着用していたが、尾崎校長の他には問題にした校長はいなかった」と根津が事実を陳述したところ、都側は控訴審進行協議の2回目に、「根津が着てきたことは1度あったが、始業前に注意したら着用をやめた。以降1度も着て来なかったから、職務命令を出さなかったまで」という虚偽の福田陳述書を提出。
根津は「着ていたのを見た」という当時の生徒5人の陳述書を提出。
去る7月12日、福田元校長と、「このロゴの入ったTシャツを着用していたが、注意を受けたことはなかった。『不起立』処分説明書にも記載されていない」という高校教員の井黒さんの証人尋問が行われた。
福田元校長は都教委が作成した嘘の陳述書に署名押印したが、本人にそれをしたことの自覚が感じられなかった。
また、井黒さんの証言に関しても、都教委は公文書を改ざんした。都教委が改ざん偽造したことが裁判の焦点になる模様。
3.09年事件18年地裁判決
またもや、河原井さんの処分は取り消し、根津の処分は適法とする。損害賠償は認めず一
09年事件判決が言う「過去の処分歴」(不起立前後の態度等)には、08年事件判決が「具体的事情」としたトレーナー問題も加わった。
「自己の思想及び良心と社会一般の規範等により求められる行為が抵触する場面において、校長の職務命令に違反して、勤務時間中に『強制反対 日の丸 君が代』または、『OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO』等と印刷された服を着用するという職務専念義務違反行為に及ぶなど、あえて学校の規律や秩序を乱すような行為を選択して実行したものも含まれており、規律や秩序を害した程度は相応に大きい」と。
判決は続けて、「①本件不起立自体は……着席したという消極的な行為・・・であること、②平成19年3月30日付停職6月の処分が取り消されていること等を考慮しても、③過去の処分に係る非違行為の内容及び頻度、重要な学校行事等における教員の職務命令違反であるという……諸事情を綜合考慮すれば、……具体的事情があったものと認めることができる。」(①~③は筆者)と。
判決は①②を「考慮した」と書くが、考慮した形跡がないまま、③の結論に行く。
「過去の処分」を「具体的事情」にすることは二重処分だとこちらが主張してきたことについて判決は、「前回の平成20年3月の停職6月の処分を更に加重するものではなく、前回と同じ量定の懲戒処分を科すものであるところ、一般的に、同じ態様の非違行為を繰り返している場合、前回の処分よりも軽い処分とせず、同一の量定の処分を行うことは、公務秩序を乱した職員に対する責任を問うことで、公務秩序を維持するという懲戒処分の意義や効果に照らし不合理であるということはできない。」と、加重処分ではないと開き直った。
こちらは、複数回体罰をした教員の体罰事案では、前回処分よりも次の処分が軽い事例を列挙して主張したが、判決はこれについても全く無視し、「前回の処分よりも軽い処分とせず」と平然と嘘を判示した。
また、「平成19年3月30日付停職6月の処分が取り消されていること等を考慮しても」と言いながら、「同判決は本件とは事案を異にする高裁判決であって」とだけ言い、考慮の跡はない。
更には、「同判決も、前回と同一の停職3月の処分を科すことについてはこれを許容する余地があることを前提としているものと解される」と、加重処分ではないことの弁解に都合よく須藤判決を援用した。(須藤判決は、前年の停職3月処分が12年最判で適法と判断されたことを、最判を判断基準とする判例主義の性質上、否定できなかった・しなかっただけのこと)
こうして見てくると、判決は先に結論ありきで、しかも、09年の根津の不起立行為を裁いたのではなく、「過去の処分歴」を使いまわして、根津の人格、思想を裁き、根津を全否定したもの。「他の人の不起立は多少大目に見るが、思想犯根津の不起立は容赦しない」というのか。
1・処分と判決
(図略)
2012年1.16最高裁判決以前の東京の「君が代」不起立処分は、
不起立1回が戒告、不起立2回で減給(1/10)1月、不起立3回で減給(1/10)6月、不起立4回で停職1月、不起立5回で停職3月、不起立6回で停職6月。
2.07年事件15年須藤・高裁判決16年最高裁決定
須藤・高裁判決は、「『過去の処分歴』は前回根津停職処分において考慮されて」おり、06年処分から07年処分に至るまでの間に「処分を加重する新たな個別具体的な事情はない」として、07年停職6月処分を取り消した。
根津が受ける不利益について、「停職6月処分を科すことは、…根津がさらに同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、次は地方公務員である教員としての身分を失う恐れがあるとの警告を与えることとなり、その影響は、単に期間が倍になったという量的な問題にとどまるものではなく、身分喪失の可能性という著しい質的な違いを根津に対して意識させざるを得ないものであって、極めて大きな心理的圧力を加える」と停職6月の過酷さを明示したうえで、
「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と判示。「君が代」起立を求める職務命令は憲法19条の「間接的制約」と性格付けをしてきた最高裁判決から一歩踏み込み、実質的制約に道を拓いた。
3.08年事件17年地裁判決
08年停職6月取消訴訟地裁判決(清水響裁判長)は、12年最判に従い河原井処分は取り消したものの、損害賠償は本件処分当時、12年1月の最判が出されておらず、処分の量定に際して都教委が注意義務を尽くさずに停職6月処分を選択したとまでは認めることはできないとして、損害賠償の必要はないとした。
根津については、15年須藤高裁判決・16年最高裁決定を無視して処分を適法とした。歴史を逆戻りさせる不当判決であり、また、安倍首相の息がかかった司法界の今後を予測させるものだった。
同判決は、「根津の過去の処分歴に係る非違行為は、積極的に式典や研修の進行を妨害する行為が含まれているほか、その頻度も、懲戒処分7回、訓告2回という高いものである…。また、トレーナー等着用行為を行い…根津はあえて学校の規律や秩序を乱す行為を選択して実行している。…このような過去の処分歴に係る一連の非違行為の内容や頻度等及び本件トレーナー等着用行為を含む根津の一連の言動に鑑みると、…学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から、…停職処分を選択することの相当性を基礎づける具体的な事情があったものと認めることができる」として、須藤判決が禁じた同一の「過去の処分歴」及び、日常の作業着として着用していたトレーナーのロゴを理由に停職6月処分を正当化した。
控訴審では都教委は、根津の「処分説明書」に「君が代」不起立の他、「日の丸 君が代 強制反対」「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」のロゴが入ったトレーナー着用が職務命令違反、職務専念義務違反だと記載。地裁判決はこれを、処分を加重して良い「具体的事情」とした。
「南大沢学園以前・以後の学校でもこれを着用していたが、尾崎校長の他には問題にした校長はいなかった」と根津が事実を陳述したところ、都側は控訴審進行協議の2回目に、「根津が着てきたことは1度あったが、始業前に注意したら着用をやめた。以降1度も着て来なかったから、職務命令を出さなかったまで」という虚偽の福田陳述書を提出。
根津は「着ていたのを見た」という当時の生徒5人の陳述書を提出。
去る7月12日、福田元校長と、「このロゴの入ったTシャツを着用していたが、注意を受けたことはなかった。『不起立』処分説明書にも記載されていない」という高校教員の井黒さんの証人尋問が行われた。
福田元校長は都教委が作成した嘘の陳述書に署名押印したが、本人にそれをしたことの自覚が感じられなかった。
また、井黒さんの証言に関しても、都教委は公文書を改ざんした。都教委が改ざん偽造したことが裁判の焦点になる模様。
3.09年事件18年地裁判決
またもや、河原井さんの処分は取り消し、根津の処分は適法とする。損害賠償は認めず一
09年事件判決が言う「過去の処分歴」(不起立前後の態度等)には、08年事件判決が「具体的事情」としたトレーナー問題も加わった。
「自己の思想及び良心と社会一般の規範等により求められる行為が抵触する場面において、校長の職務命令に違反して、勤務時間中に『強制反対 日の丸 君が代』または、『OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO』等と印刷された服を着用するという職務専念義務違反行為に及ぶなど、あえて学校の規律や秩序を乱すような行為を選択して実行したものも含まれており、規律や秩序を害した程度は相応に大きい」と。
判決は続けて、「①本件不起立自体は……着席したという消極的な行為・・・であること、②平成19年3月30日付停職6月の処分が取り消されていること等を考慮しても、③過去の処分に係る非違行為の内容及び頻度、重要な学校行事等における教員の職務命令違反であるという……諸事情を綜合考慮すれば、……具体的事情があったものと認めることができる。」(①~③は筆者)と。
判決は①②を「考慮した」と書くが、考慮した形跡がないまま、③の結論に行く。
「過去の処分」を「具体的事情」にすることは二重処分だとこちらが主張してきたことについて判決は、「前回の平成20年3月の停職6月の処分を更に加重するものではなく、前回と同じ量定の懲戒処分を科すものであるところ、一般的に、同じ態様の非違行為を繰り返している場合、前回の処分よりも軽い処分とせず、同一の量定の処分を行うことは、公務秩序を乱した職員に対する責任を問うことで、公務秩序を維持するという懲戒処分の意義や効果に照らし不合理であるということはできない。」と、加重処分ではないと開き直った。
こちらは、複数回体罰をした教員の体罰事案では、前回処分よりも次の処分が軽い事例を列挙して主張したが、判決はこれについても全く無視し、「前回の処分よりも軽い処分とせず」と平然と嘘を判示した。
また、「平成19年3月30日付停職6月の処分が取り消されていること等を考慮しても」と言いながら、「同判決は本件とは事案を異にする高裁判決であって」とだけ言い、考慮の跡はない。
更には、「同判決も、前回と同一の停職3月の処分を科すことについてはこれを許容する余地があることを前提としているものと解される」と、加重処分ではないことの弁解に都合よく須藤判決を援用した。(須藤判決は、前年の停職3月処分が12年最判で適法と判断されたことを、最判を判断基準とする判例主義の性質上、否定できなかった・しなかっただけのこと)
こうして見てくると、判決は先に結論ありきで、しかも、09年の根津の不起立行為を裁いたのではなく、「過去の処分歴」を使いまわして、根津の人格、思想を裁き、根津を全否定したもの。「他の人の不起立は多少大目に見るが、思想犯根津の不起立は容赦しない」というのか。
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