トンボの影が
煙草の紫煙を横切っていった
まるであの頃みたいに
ずっと
信号待ちのぼくの真上を
トンボはまるで
故郷のイコンのステンドグラス
ビリビリと震えながら
活字みたいに飛んでいってしまったから
小脇に抱えていた
アイヌ人彫刻家ビッキさんの本の表紙を
しげしげと見つめる秋風のなか
「風の王ー砂澤ビッキの世界」という
青い表紙のやけに重たい本
たったひとり会いたかった君の
たったひとつの君の形見
煙草の紫煙を横切っていった
まるであの頃みたいに
ずっと
信号待ちのぼくの真上を
トンボはまるで
故郷のイコンのステンドグラス
ビリビリと震えながら
活字みたいに飛んでいってしまったから
小脇に抱えていた
アイヌ人彫刻家ビッキさんの本の表紙を
しげしげと見つめる秋風のなか
「風の王ー砂澤ビッキの世界」という
青い表紙のやけに重たい本
たったひとり会いたかった君の
たったひとつの君の形見