17日、朝日新聞の今月の世論調査が発表され、内閣支持率は7ポイント減の33%となった。自民党の政党支持率も下がり、先月の35%から30%に落ちている。感染が拡大すると政権の支持率が急落する。そして、東京五輪開幕予定の7月23日まで残り67日となった。開催可否の政治決定が大詰めの時期を迎えている。16日に下村博文が「6月上旬に観客数の上限を示すべき」と発言していて、このタイミングで中止か強行かを決めるという意味に解釈できる。ここへ来て東京と大阪の感染者数が漸減していて、微分視的に見れば、日本全体の第4波が峠を超えたような状況を示している。五輪を強行したい菅義偉とIOCにとっては曙光に映る期待材料だろう。5月後半の注目は東京の感染者数がどう動くかであり、五輪の政治局面に大きく関わってくる。15日の人出の数を見ると、渋谷・新宿・銀座では1週間前より増えていると報告されていて、すなわち感染拡大の原因となる人流はGWより増加している。GWも東京は人出が多かった。が、大阪のような感染爆発に繋がっておらず、早めにネオン消灯などの措置を講じた結果だと言われている。
東京の今後の感染状況を予測するのは難しいが、尾身茂は、東京の新規感染者数がステージ3から2に下降する傾向が確実になったときに宣言を解除すると言っていた。ステージ3の指標は、10万人あたりの新規感染者数が1週間で15人以上であり、すなわち東京では1週間で2100人以上、1日あたり300人という水準になる。ステージ2とは、(静岡の資料だが)10万人あたりの新規感染者数が1週間で1.9人以上で、すなわち東京では1週間で266人、1日あたり24人という低い水準になる。マスコミで屡々言われる1日100人はステージ2の基準を超えている。つまり、尾身茂の言う宣言解除の要件の中身が、1日100人ということが分かる。この水準のまま維持することが明確で、上がらないと確信できるときに宣言を解除すると言っている。素人目には、東京で1日300人を切ることは容易そうだが、1日100人を切るのは至難の業だ。東京都のグラフから辿ると、100人を切った最後は昨年11月2日の87人で、以後半年間一度も記録していない。感染力が従来型と比べて1.4倍と言われる変異種を相手に、東京の1日感染者数を100人以下に抑えることは容易ではないだろう。
だが、尾身茂や館田一博に言われるまでもなく、1日100人以下に抑える前に宣言を解除すれば、すぐに感染拡大してしまうことは誰もが経験で理解している。ワクチン接種の進捗はスピードが追いつかず、第4波の抑止には役立たない。菅義偉の公約どおりに進捗したとしても、7月末に全人口の30%の高齢者3600万人が接種を終えるだけだ。どれほど接種を急いでも、6月末まではワクチンが感染抑制に効果を発揮することはないだろう。そこから考えると、5月末で東京の宣言を解除するのでなく、6月末まで宣言を続けるという見通しになる。分科会の専門家たちの認識と立場はこの方向性で一致しているはずで、6月も宣言を延長せよと今後も菅義偉に強く求めて行くはずだ。支持率が落ちた菅義偉は、専門家に抗することができず、宣言延長を認めざるを得ない。14日の「暮令朝改」の政変で力関係が変わった。菅義偉の手から感染対策のヘゲモニーが奪われ、専門家の手に移った。たとえ東京で1日300人を切って小康状態の観を呈しても、これまでのように菅義偉の恣意と独裁で宣言解除に出ることはできないだろう。菅義偉はこれから3週間、宣言が続く中で東京五輪の可否を迫られる。
先週から、猛烈な勢いで海外マスコミの五輪中止論が盛り上がる情勢になり、まさに燎原の火の如く燃え広がって、IOCと菅政権を追い詰める言論状況になっている。ワシントンポストに続いてニューヨークタイムズ、フランスのリベラシオンとル・モンド、英国のBBC、そして米国の公共ラジオ放送も参戦した。欧米のマスコミは一致してIOCの銭ゲバ体質を糾弾し、併せて菅政権の感染対策の無能を批判、東京五輪中止を正論として要求する姿勢に固まった。日本国内では8割が中止延期を求める圧倒的な世論になっていて、新しい世論調査報道が出るほどに中止延期論が増えている。そして、菅義偉が意固地になって五輪強行の態度を強調するほど、支持率が落ちる構図になっている。八方塞がりの菅義偉は、子飼いのマスコミを使って小池百合子叩きを繰り返し、諸悪の根源は小池百合子だと指弾して世論の矛先を向けさせる工作に狂奔、小池百合子への佞悪な牽制に余念がないが、卑劣で姑息な工作は思うような成果を上げていない。先週、菅マスコミの方面から、小池百合子が都議選が始まる6月初に東京五輪中止を打ち上げるのではないかと牽制をかける記事が相次いで上がった。誰に向けてのどういう世論工作なのだろう。
今でも8割の世論が東京五輪7月開催に反対なのに、6月初の時点で、小池百合子が中止延期を言い出したところで何の不都合があるだろう。誰に不利益があるだろう。当然、世論は支持するし、選挙に臨む諸党派は五輪中止を公約にするだろう。と言うより、その時点で五輪中止が決まってない方が不自然だ。中止延期になる場合は、最低でも1か月前、6月中旬には決定されていると想像される。私は、五輪中止が混乱なくプロセスされるには、世界の誰もが承服するオーソライズの儀式が必要で、オーソリティ(権威)による仕切りが不可欠だと考えるから、6月11日からのG7サミットがその機会提供の場になるのではないかと予想している。バイデン政権は、北京五輪をボイコット・中止に追い込む上で、東京五輪中止を奇貨と捉え、戦略上必須の経過点と位置づけているに違いない。先週から意外なほど強烈に、一斉に欧米マスコミが中止論を騒ぎ始めたのを見ると、その背後に政治的な差配と後押しの影がある疑いを禁じ得ない。その思惑の示唆なのか、兆候なのか、米国の陸上チームが事前合宿の中止をキャンプ地に通告してきた。米国の陸上選手はNBCの五輪コンテンツの中でも目玉の存在で、その影響は非常に大きい。
IOCも、風向きを見て戦略方針を徐々に変え、東京五輪を無理やり強行するのではなく、日本側から中止要請を出させるよう巧妙に仕向ける策に転ずるのではないか。日本の感染対策が無能だったから中止に追い込まれたという被害者立場の言説を工作し、日本政府にすべての責任があるという世論を醸成し、カネをぼったくる手だてに出るのではないか。バイデンとEUがそれをエンドースしそうな気がする。被災者を切り捨てて9年越しで準備に興じた、カネまみれ・ウソまみれ・中抜きボッタクリの、世紀のネオリベ祭典である安倍五輪が、総決算のときを迎えつつある。
Commented by ハワイアン at 2021-05-17 20:44 x
ブログ主さんがツイッターで書かれていたシステム問題、該当年齢ではないので大規模接種会場には全く興味もなかったですが、架空の市町村コードでも、架空の接種券番号でも、65歳未満でもネットから予約出来るそうです。システムを作っている会社の顧問は、竹中平蔵だそうですね。
自分の自治体との二重登録が可能なことは指摘されていました。今頃、ネット民が更なる問題点を探しているかもしれませんね。
それよりも怖いのは、インド株の蔓延です。あちこちの自治体で出ています。いまの変異株がインド株に置き換わったら、ひとたまりもありません。
ブログ主さんが書かれているように、多少減ったからと言って解除してはいけない、リバウンドもそうですが、インド株を蔓延させてはいけないからです。
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それよりも怖いのは、インド株の蔓延です。あちこちの自治体で出ています。いまの変異株がインド株に置き換わったら、ひとたまりもありません。
ブログ主さんが書かれているように、多少減ったからと言って解除してはいけない、リバウンドもそうですが、インド株を蔓延させてはいけないからです。
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