国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

2013年3月11日:フォークランド諸島の住民投票が引き金を引く「ヴェネツィアの悪の遺産」の滅亡

2013年01月14日 | イスラエル・ユダヤ・国際金融資本
●<フォークランド諸島>英国とアルゼンチンの対立が再燃  毎日新聞 1月13日(日)

 【メキシコ市・國枝すみれ】約30年前に南大西洋のフォークランド(アルゼンチン名・マルビナス)諸島の領有権を巡って戦った英国とアルゼンチンの対立が再燃している。同諸島の返還を迫るアルゼンチンに対し、英国は必要とあれば軍事力の行使も辞さない構え。島では3月に帰属を決める住民投票が予定されており、緊張は高まっている。

 フォークランド諸島はアルゼンチン沖にあるが、英国が1833年から実効支配し、住民の多くは英国系。1982年、アルゼンチンが奪取を目指して侵攻したが英国に反撃され、約2カ月半の戦闘の末に敗退した。この紛争で、アルゼンチン軍は649人、英軍は255人が戦死した。

 今回の対立再燃の直接のきっかけは3日、英国のガーディアン紙に掲載されたフェルナンデス・アルゼンチン大統領の公開書簡だ。「180年前、英国はアルゼンチンからマルビナス諸島を奪った」と訴え返還を迫る内容。アルゼンチン政府は同じ書簡を国連の潘基文(バン・キムン)事務総長にも提出した。

 一方、英国のキャメロン首相は「島民は自らの意思で(英国に所属することを)選択してきた」と反論し、帰属は島民が決めるべきだと主張する。英BBCテレビの取材に対しては「英国は世界5位の軍事予算を誇る」と話し、フォークランド諸島の領有権が脅かされた場合、必要ならば軍事力で対応する姿勢を示唆した。

 英国の大衆紙サンも「数百万の読者を代表して言う。(島に)手を出すな」と強い表現でフェルナンデス大統領に警告。「フォークランド諸島はアルゼンチンが建国される以前から英国のもので、アルゼンチンが所有したことは一度もない」と主張、大統領の歴史認識を批判した。

 アルゼンチン国民の一部は、サン紙の主張が掲載された英字紙や英国旗を燃やして怒りを示した。一方で、「国内問題から国民の目をそらすために領土問題を利用している」と英国側の大統領批判に理解を示す声もある。

 両国は90年に国交を回復している。しかし、2010年に英企業がフォークランド諸島沖で油田開発を始めたことでアルゼンチン政府が態度を硬化させ、「島を取り返すため政治、文化、外交などあらゆる手法で戦う」と宣言した。

 地元議会は紛争から30年の12年6月、帰属を問う住民投票の実施を決定。住民の大部分は英国系で、改めて英国への帰属を制度化する狙いがあるとみられる。

 ★フォークランド諸島 アルゼンチンの東約480キロの南大西洋上にある約200の島。総面積約1万2173平方キロで英国人約3000人が暮らす。スペインから独立したアルゼンチンが1820年にスペイン領だった同諸島の領有権を主張したが、1833年に英国が海軍を駐留させ実効支配を開始。1982年にアルゼンチンが侵攻したが英国に敗退した(フォークランド紛争)。近海に油田があるとされ、領土問題の一因になっている。

 ◇フォークランド諸島を巡る出来事

1820年 アルゼンチンが領有権を主張

1833年 英国が実効支配を開始

1982年 フォークランド紛争(4月2日~6月14日)

1990年 英国とアルゼンチンが国交回復

1994年 アルゼンチン憲法改正、フォークランド諸島に対する主権を明文化

1995年 英首相とアルゼンチン大統領が紛争後初の会談。資源共同開発で合意

1998年 アルゼンチン大統領が訪英

2001年 英首相がアルゼンチン訪問

2007年 アルゼンチンが共同開発破棄

2010年 英企業が同諸島沖油田の調査

2012年 ウィリアム英王子を同諸島に派遣(2月)。周辺海域に英駆逐艦(4月)。アルゼンチンが石油採掘英企業に法的措置をとると決定(6月)

2013年 フェルナンデス・アルゼンチン大統領が島の返還求め意見広告。キャメロン英首相は領土交渉に応じない考え(1月)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130113-00000009-mai-int






●Britain set to up military presence in Falkland Islands | Mail Online 13 January 2013

Islanders will vote on March 11 on whether they wish to remain an overseas territory of the UK.
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2261616/Britain-set-military-presence-Falkland-Islands.html





●フォークランド諸島とYPF:中南米の国際金融資本からの独立戦争 2012年04月21日
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/71990ac5c547c6fea34fd402bd435241





●第二次フォークランド戦争:米国とブラジルが敵に回りイギリスの敗北が既に確定 2012年04月24日
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/f89fd0c9a700847190babe7bb5298425




●英国旗掲揚の制限、衝突で警官16人負傷 北アイルランド - MSN産経ニュース 2013.1.13

 英国旗掲揚の制限をめぐり抗議行動が続く英国・北アイルランドのベルファストで12日、制限に反発するプロテスタント系市民が警官隊と衝突、BBC放送によると警官16人が負傷した。

 AP通信などによると、抗議デモを終えたプロテスタント系市民を、カトリック系市民が挑発したことをきっかけに衝突が発生。警官隊が放水車などで鎮圧を図ったが、プロテスタント系市民の一部が暴徒化した。

 北アイルランドでは、英統治を望むプロテスタント系とアイルランドへの帰属を求めるカトリック系が対立。非プロテスタント系が多数派の市議会が昨年12月3日、毎日行われていた市庁舎の英国旗掲揚を年間18日に制限すると決めて以来、抗議デモが頻発している。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130113/erp13011315190004-n1.htm






●「どこまでが英国か?」:北アイルランド騒乱の深淵(六辻 彰二) - 個人 - Yahoo!ニュース 2013年1月5日 13時53分
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mutsujishoji/20130105-00022935/






●英首相、ジレンマ 国内高まるEU脱退論 欧米諸国は阻止へ圧力 産経新聞 1月13日(日)7時55分配信

 【ロンドン=内藤泰朗】英国のキャメロン首相が、国内で高まる欧州連合(EU)からの脱退論と、英国のEU脱退を阻止すべく圧力をかける欧米諸国との間で、ジレンマに立たされている。政府内からも、EUへの権限集中が緩和されない限り脱退も致し方ないとの見方が出始めた。首相が今月22日に行うとされるEUについての重要演説の内容に注目が集まっている。

 英国におけるEU脱退論の高まりは、近年のユーロ危機や東欧圏からの移民の増大など、英国の国家主権を揺るがす事態が起きていることが背景にある。英国は銀行同盟の創設など最近の統合深化をめぐる協議でも一線を画し、孤立感を深めている。世論調査ではすでに、EU脱退派が過半数に達している。

 キャメロン首相は「脱退は国益に反する」と訴えてきたが、与党・保守党の強硬派は、来年にもEU脱退の可否を問う国民投票を実施するよう要求。2015年の総選挙後に国民投票を実施すると語っていた首相への突き上げはさらに厳しくなっている。

 一方、英国の最大の同盟国、米国のゴードン国務次官補(欧州問題)が訪英し9日、英メディアに「米国はEU内で英国が持つ発言力に期待する」と述べて脱退論を牽制(けんせい)。国民投票実施に懐疑的な立場を示した。

 米国にとっては、「価値観を共有する特別なパートナー」である英国を通じてEUやユーロ圏への政治的な影響力を保持したいとの思惑がある。だが、英保守系議員らが「米国は英国の内政に干渉をすべきではない」と猛反発。逆に国民投票の実施を急ぐべきだとの意見も出てきている。

 ただ、オズボーン英財務相はドイツ紙に対し、「英国はEUの加盟国であり続けたいが、そのためには、EUの改革が不可欠である」との考えを示した。英国側は司法や行政、労働政策などこれまでEU側に譲渡していた権限を取り戻さない限り、脱退論は収まらないとみる。

 しかし、EU側やドイツなどは「英国側の要求をのめば、それに続こうという国々が現れ、EU崩壊というパンドラの箱を開けることになりかねない」との危機感から、譲歩する姿勢は一切見せていない。

 英紙フィナンシャル・タイムズは10日付の社説で、1980年代、欧州単一市場や統合拡大を主導したサッチャー元首相のように「キャメロン首相もEUで主導的な立場をとるべきだ」と主張。経済界も脱退の経済的な打撃はかなり大きいとしており、首相は、難しいかじ取りを迫られている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130113-00000075-san-eurp






●『悪の遺産ヴェネツィア』: 舎人学校 2012年3月 9日 (金)

天童竺丸氏の『悪の遺産ヴェネツィア 黒い貴族の系譜』を漸く読み終えた。読了してつくづく思うのは、己れを産み育んでくれた瑞穂の国・日本への天童氏の温かい眼差しであり、憂国の至情であった。そのあたり、以下の同氏の言葉にも滲み出ているのが分かる。

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あえて蟷螂の斧をもって、ヴェネツィアとは何なのかを考えることにしたのも、ヴェネツィアの「悪の遺産」が脈々として世界権力の現在の工作に生きているからであり、その歴史的実体の解明が日本にとって緊急に重要な課題のひとつであると信ずるからである。(『悪の遺産ヴェネツィア』p.10)

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主題の「ヴェネツィア」だが、以下に天童氏が簡素に述べている。

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 地中海交易を中心に欧亜を結ぶ国際交易を支配し、その後ヴェネツィア党として英国の中枢を乗っ取って東インド会社を設立、アジア植民地を開拓し、アフリカおよび南北両米大陸の資源を手中に収めながら、両次の世界大戦と冷戦とによって露独日など民族主義国家を壊滅させたのち、米国を世界の警察権執行人として使嗾しつつ、経済至上の世界一元化を推進してきた寡頭世界権力の中枢を為す重要な系脈として、ヴェネツィアはこんにちなお依然として侮るべからざる存在である、と私は考える。(『悪の遺産ヴェネツィア』p.9~10)

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ここで筆者が注目したのは「露独日など民族主義国家」の行である。ここ数年、ヴェネツィアが壊滅させたはずの露独日が、再び不死鳥のように蘇りつつあることから、ヴェネツィアが今度こそ露独日の息の根を止めようと、あらゆる手段を数年前から講じていることをご存じだろうか。そうしたヴェネツィアの気持ちを代弁しているのが、フランスの知の巨人ジャック・アタリのようで、コスモポリタン某が自身の掲示板に以下のように述べている。

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ジャック・アタリがフランスの放送で、「消滅への道をたどっているのは、日本とドイツとロシアだ・・・」と断言していたのを知り、これは凄い発言だと思った日が偲ばれますが、日本では。米国、中国、北朝鮮の没落を言う人が多いようです。

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コスモポリタン某には祖国日本への“温かい眼差し”が感じられず、ジャック・アタリの発言を褒めちぎっているだけで終わっているのは誠に残念だった。それは兎も角、ジャック・アタリの「露独日」という発言の裏を筆者なりに読み取れるようになったのも、天童氏の『悪の遺産ヴェネツィア』のお陰である。『悪の遺産ヴェネツィア』は世の中に1冊しか存在していないことから、同書に述べているヴェネツィアの“歴史的実体の解明”を、簡単な解説を交えて今後も時折読者にお伝えしていきたいと思う。それにより、ヴェネツィアの正体を一人でも多くの読者が知り、ヴェネツィアという凶暴な台風の今後の進路を予測し、十分な事前対策を講じるためのヒントにして欲しいと思う。

最後に、飯山一郎氏の掲示板『放知技(ほうちぎ)』で同書の「世界権力の正体を明かす」という章を筆者は紹介しているが、此処でも改めて紹介することで今回は終わりとしたい。

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●世界権力の正体を明かす

 前回までウェルフ家の消長を追ってドイツの黒い森や地中海、はてはパレスティナまでさんざん彷徨ってきた。やたらカタカナ名前がいっぱい出てきて、しかも同じ名前で父子だったり敵同士だったり、読みづらくて仕方がないとの苦情をさんざん頂戴した。

 そして何よりのご批判は、こんな西洋中世史の些細な事柄をいまさら読まされて、いま国家存亡の危機にあるときに何の意味があるのかというお怒りだった。

 ごもっともである。そして、そのお怒りに対しては、わが筆力の不足をただただお詫びするしかない。ただ、なぜにいまさら西洋中世史をなぞり返して、ウェルフ家という一貴族の歴史をたどってきたのか、弁明をしておく必要は感じている。それが改めて、本稿の意図をご説明することにもなるからである。

 歴史を偶然の所産と観る見方もあれば、特定の勢力の意図に基づいた人為の所産と観る見方もある。

 われわれは後者、すなわち世に謂う「陰謀史観」にかならずしも与するものではない。ひとつの意図で貫かれていると見ると、その意図に反する事柄や逸脱・祖語とも見るべき事件が歴史の随所に見られるからである。

 歴史はそれほど単純ではあるまい。大きくはこの地球の変動があり、ときどきに剥き出しになって人間を圧しつぶしてきた自然の猛威もある。また、敵対する強力な勢力が出現し彼らの前に立ちはだかることもあるだろう。ひとつの勢力の意図通りに歴史が作られたと見ることは、とてもできない。

 しかしまた一方、歴史をすべて偶然の所産と観るには、あまりにも暗合・符合するもの、出来すぎた事件が多いのも事実である。

 とくに「戦争の世紀」ともいわれ、戦争と殺戮に彩られた先の二〇世紀には、天然資源の独占を通して世界を支配しようという意図が数々の事件の背後に見え隠れする。そして、天然の膨大な資源に恵まれたアフリカ大陸がいま、数々の戦争と革命とクーデタと疫病とによる殺戮の果てに、荒涼たる死の大陸と化しつつあることを偶然と見るならば、それは知の怠慢であり精神の荒廃であると誹られても仕方あるまい。アフリカ大陸に住み着いていた人々は天然の富に恵まれていたがために、その富の纂奪・独占を狙う勢力の犠牲となって大量殺戮に処されたのである。

 二一世紀には彼らの邪悪なる意図の鉾先が、このアジアに向けられる徴候がある。すなわち、エネルギーをめぐっての血で血を洗う動乱が仕掛けられようとしているのだ。アフリカ大陸の悲劇はけっして他人事ではない。

 われわれは、世界の覇権的支配を意図するこの特定の勢力を、「世界権力」と呼んでいる。日本でも戦前からこの一派をユダヤ人と観て、「ユダヤの陰謀」なるものへの警戒を発した諸先輩があった。たしかにユダヤ人は世界権力の一翼を担う重要分子ではあるが、その本質はあくまで「宮廷ユダヤ人(ホーフユーデン)」に止まるというのが、現在の研究成果の教えるところである。すなわち、黒い貴族という主人に仕える従僕の地位にすぎない。

 それは、一介の運転手から米国国務長官へと成り上がりながらエリザベス女王に忠誠を貫いて爵位を得たヘンリー・キッシンジャーの役割に端的に見ることができる。また最近では、「金融の神様」ジョージ・ソロスもこうした「宮廷ユダヤ人」の典型的人物である。

 永年にわたって英国アリストテレス協会を牛耳った哲学者カール・ポッパーは、かつて一世を風靡したアダム・スミスやトーマス・ホッブス、ジョン・ロック、チャールズ・ダーウィンやハックスレー兄弟、バートランド・ラッセルなどと同じく、英国ヴェネツィア党による世界支配のための理論を提供する御用学者である。

 その主著『開かれた社会とその敵』は自由な市場原理による競争社会という理論を掲げつつ、実は社会秩序ないし国家存在を目の敵にしてその破壊を指示する戦闘指令書だった。カール・ポッパーの忠実な弟子となり、恩師の過激な理論の祖述的実践者となったのが、ハンガリーに生まれたナチス協力ユダヤ人の息子であるソロスだった。

 ソロスは恩師の「開かれた社会」理論を実践する役割を与えられて、金融バブルを世界各国で仕掛けたが、ソロスの投資会社であるクォンタム・ファンドに原資を提供したのは誰あろう、英国女王その人である。

 英国女王の私有財産の運用を任されて実力を発揮したソロスは「金融の神様」などと畏怖され、またマレーシアのマハティール首相など各国指導者の怒りを買ったが、何のことはないインサイダー情報によるインサイダー取引の実行責任者だったにすぎない。

 注目すべきはソロスのもうひとつの活動である。彼は世界各国とりわけ東欧圏を中心に「開かれた社会基金」(Open society Fund)を創設して、「慈善事業」にも精を出しているといわれたが、じつはこの「慈善事業」なるものが曲者で、ソロス基金こそソ連の崩壊を導き、東欧圏の社会主義からの離脱を促進した「トロイの木馬」であったのだ。

 中共の支那に対しても、ソロスの「開かれた社会」工作は仕掛けられていた。その支那側の協力者が趙紫陽である。一九八九年に起きたいわゆる「天安門事件」は、このソロスによる中共政権解体工作に対し、小平など当時の中共指導部が断固たる粉砕措置に出た事件である。

 汚れ役はもっぱら「宮廷ユダヤ人」に任せみずからは超然としているのが、英国女王を表看板とする黒い貴族である。その英国王室という表看板を掲げるに当たって、いかに永年の執拗な粒々辛苦があったか、その前端をつぶさに見るために、縷々ウェルフ家の歴史を本稿でたどってきたのである。ゲルフ領袖とされたウェルフ家が現英国王室ウィンザー家となるには、永い永い紆余曲折の歴史がある。それこそ、「特定の勢力」の意図通りには、歴史が進まないという何よりの証拠である。

 そして、中世イタリアの都市国家の間あるいは貴族同士の争闘という矮小化された形で一般にも伝えられている教皇派(ゲルフ)と皇帝派(ギベリン)の争いは、ドイツないしイタリアをも巻きこんで一大地中海国家へと国家的統合を目指す勢力に対して、これを分断し宗教的・精神的呪縛の軛に縛りつけてみずから地上権力としても君臨しようとするローマ教皇と国家間の分裂抗争こそ商売の最大好機と見るヴェネツィアとが結託して粉砕しようとした動きにほかならない。

 ダンテ・アリギエーリやニッコロ・マキアヴェッリが悲願としたイタリアの国家的統合を妨げた最大の障害は、ヴェネツィアという一都市国家とローマ教皇庁の存在であった。そしてさらに言えば、ローマ教会をして地上権力へと変質させたのは、ヴェネツィアの無神論的自由市場理論だった。

 この「市場経済理論」すなわち「自由交易理論」は、なにも英国ヴェネツィア党の御用学者たるアダム・スミスやカール・ポッパーらの発明ではない。もともとヴェネツィアの専売特許的主張なのである。

 キッシンジャーが唱えた「勢力均衡理論(バランスオブパワー)」とて、その地政学的粉飾を剥ぎ取ってみると、「自由にのびのびと商売ができるのが何よりいいのだ」というヴェネツィアの本音が聞こえてこよう。

 その本音はのんきに聞こえるかも知れないが、こと「自由交易」が犯されそうになるや、ヴェネツィアは本気になった。国家の存亡を賭けても、「自由交易」を犯す敵との戦いを敢然と挑んで止まなかった。第四次十字軍を誑かして東ローマ帝国を一時的に中断しラテン帝国を樹立したのも、トルコ帝国との度重なる海戦にめげなかったのも、「自由交易」という国家的悲願を守るためだったのだ。

 寡頭勢力による巧妙な支配の機構によってみごとなまでに自国の国家的秩序を保ちつづけた(もちろん例外的な国家危機もあった)ヴェネツィアは、イタリアないしヨーロッパの各国に対してはさまざまな粉飾を凝らした「自由な競争こそ社会発展の原動力」などという御都合主義理論を撒き散らして徹底的な不安定化工作を発動しつづけた。これすべて、みずからが商売をやりやすい状態を保つためである。

 イグナティウス・ロヨラのイエズス会創設とマルティン・ルターによる宗教改革運動の両方とも、そのスポンサーはヴェネツィアだった。ゲルフとギベリンの抗争では味方同士だったローマ教会の強大化を牽制するためである。宗教改革は外から仕掛けられた揺さぶりであり、イエズス会は内奥深く打ちこまれた楔に喩えることができよう。

 そしてさらに、このヴェネツィアの主張はみずからいっさいの歴史記録を残さなかったフェニキア=カルタゴが黙々孜々として実践したところのものである。

 メソポタミア文明とエジプト文明の狭間にあって海洋交易都市として繁栄したフェニキアの存在は、いまではアルファベットの元になるフェニキア文字の発明によってわずかに記憶されるにすぎないが、もし彼らをして語らしめれば、「自由交易経済」こそ人類発展の原動力であると言いつのって、まるでソロスの口吻を彷彿とさせるに違いない。

 ユダヤ人の王ダヴィデが思い立ちその息子ソロモンによって実現されたエルサレム神殿およびソロモン宮殿の建設は、設計から資材の調達、施工に至るまでことごとくテュロスの王ヒラムの協力なしには実現できなかったであろう。

 ソロモンの栄華をもたらした「タルシンの船」による交易も、いわばヒラムの勧誘による投資事業だったのだ。強権による独占を主張しないかぎり、投資家は多いほどリスクが分散されるのは古今の真理である。交易品の調達から交易船の建造、そして実際の交易事業まで、すべてはテュロスの王ヒラムの意のままに運ばれたに相違ない。

 二大文明の間隙に位置し交易で栄えたフェニキア海岸都市群は一時期ペルシア帝国に従属させられ、最終的にアレキサンダー大王によって破壊されたが、そのひとつテュロスは地中海全域に交易中継のための植民都市を建設しており、それらの中心だったアフリカ大陸北岸のカルタゴに拠って生きのびた。

 そのカルタゴは数次のポエニ戦争によってローマ帝国に滅ぼされたとされるのだが、実はカルタゴは亡びなかったというのが、本稿の仮説である。たしかに、アフリカ大陸北岸の植民都市そのものはローマによって徹底的に破壊されつくし、塩まで撒かれて地上から姿を消した。そして、カルタゴがスペインなどの各地に建設した交易拠点もローマに簒奪された。

 しかしカルタゴの遺民たちは秘かにローマや各地に潜入し、ジッと時の経つのを窺いつづけた。そして、ローマ帝国の分裂・衰退の時が来るや、アドリア海の深奥、瘴癘はびこる不毛の小島に忽然として姿を現わしたのである。

 フェニキア=カルタゴの遺民でなくして、誰がこのような悪条件の重なる不毛の地に都市を建設しようなどと企てよう。テュロスしかり、カルタゴしかり、ニューヨークしかり、彼らが拠る海洋都市は、「海に出るに便なる」ことが必要にして充分な条件であるらしい。彼らには、陸の民には窺い知れない嗅覚と美学とがあるのであろう。その不毛の地に都市国家を建設するために注ぎこまれた途方もない富と努力を想像すると、気も遠くなるほどだ。

 彼らを誰がヴェネツィアと呼びはじめたのか。自称か他称かは知らないが、VeneziaのVeni- は紛れもなくローマ人がフェニキア=カルタゴを呼ぶときの名称Poeniである。V音とP音ないしPH音は相互に容易に転訛しうるからである。ローマに破壊され尽くしたカルタゴの末裔ヴェネツィアが、ローマを再建しようとするあらゆる試みを粉砕してきたのも、無理からぬところではある。

 二〇世紀はフェニキア=カルタゴの末裔たちが自らの最終的勝利を宣言して繁栄を謳歌した世紀であった。一八世紀に呱々の声を挙げた革命の嬰児は一九世紀の一〇〇年をかけてじっくりと養育され逞しい闘士へと成長を遂げる。そして二〇世紀に入ると、最初に血祭りにされたのが「新たなるローマ」を標榜していたロマノフ王家のロシア帝国であったのは革命勢力の本当の出自がどこにあるかを示して象徴的である。そして、「連合国」なる新たなる装いを纏った革命勢力は第一次の世界大戦によってハプスブルク帝国とトルコ・オスマン帝国を倒し、第二次世界大戦によって独第三帝国と日本帝国を解体させたのである。二〇世紀前半に各帝国に対する武力制覇を成し遂げた世界権力は執拗にも第三次世界大戦というべき金融戦争を各国に仕掛け、国家破綻を世界中に撒き散らかしてきた。そして二一世紀が到来する。「自由市場」「開かれた社会」「グローバリゼーション」を地球規模に蔓延させ、向かうところ敵無しとなったはずの彼らを自滅が襲ってくる。その運命や、如何に?
http://pro.cocolog-tcom.com/edu/2012/03/post-091b.html






●悪の遺産ヴェネツィア(1): 舎人学校 2012年3月12日 (月)

過日、天童竺丸氏が著した『悪の遺産ヴェネツィア』について簡単な書評を試みたが、いきなりヴェネツィアだの黒い貴族だのと書いても、何のことか分かって戴けなかったと思うので、以降数回にわたって解説を試みたい。

最初に筆者の場合、ロスチャイルドやロックフェラーなどの宮廷ユダヤを操る、得体の知れない“黒い貴族”(世界権力またはワンワールド)が存在していることは既に知っていたが、“肝心な黒い貴族”の正体がよく分かっていない状態であった。ところが、『悪の遺産ヴェネツィア』に目を通すことによって、長年の疑問が一気に氷解したのである。

9年前、筆者の頭の中にあった世界権力像は、米国と英国というアングロ・サクソン、およびロスチャイルドやロックフェラーといった宮廷ユダヤの連合体であった。当時、「国際政治のすすめ」と題した記事を、某国際契約コンサルティング会社のウェブに掲載して戴いたことがある。その時に最も参考になったのが、『国際寡占体制と世界経済』(岩城淳子著 御茶の水書房)であった。同書の場合、ヴェネツィアについて言及していないものの、少なくとも“狭義”の世界権力を理解するには優れた書籍であったと今でも思う。当時の記事を以下に転載しておくが、何分にも大分長い記事のため、宮廷ユダヤについてある程度理解している方は読み飛ばして戴いて結構である。それにしても、今日に至って読み返してみるに、世界権力についての考察が未熟な記事であり、赤面の至りだ。

ところで、以下の記事に登場する物部氏の定義「アングロ・ユダヤ金融戦略」だが、物部氏は「米国は、英国、ユダヤ資本と組み、3者で、国際経済を牛耳る密約をした(これを「アングロ・ユダヤ金融戦略」という)と考えられる」と書いている。しかし、正しくは「ヴェネツィアに乗っ取られた英国、その英国の支配下にある米国、およびヴェネツィアに仕えている宮廷ユダヤ」なのだが、このあたりの解説は次回以降に回したい。



国際政治のすすめ(政治編)

物部一二三氏の筆による「日本人と日本国の現状と将来 -ミレニアム提言-」というシリーズが、『海援隊』に二年間にわたって連載されていた時期がある。筆者も物部氏のシリーズを毎月楽しみにしていた一人であるが、その中で「アングロ・ユダヤ金融戦略」なる言葉がしばしば登場していたのを読者は覚えておられるだろうか。今思うに、「アングロ・ユダヤ金融戦略」という言葉には実に不気味な響きがあった。そこで、本稿では「アングロ・ユダヤ金融戦略」にメスを入れ、「世界の政治・経済のエスタブリッシュメント(支配層)」のグランドストラテジー(大戦略)が、世界の政治・経済にどのような影響をもたらしているのかについて検証してみたいと思う。

最初に、物部氏の定義する「アングロ・ユダヤ金融戦略」については、以下に目を通していただきたい。


1980年頃、米国は、英国、ユダヤ資本と組み、3者で、国際経済を牛耳る密約をした(これを「アングロ・ユダヤ金融戦略」という)と考えられる。そこでは、「金融のビッグバン」と言う標語の下に、金融のアングロサクソン・スタンダード=グローバル・スタンダードを創り上げた。この戦略では、米英を益することを条件に、ユダヤ資本に国際金融のコントロール権を与えた。この結果は、地球上に、実体経済社会とは別に、金融経済社会を創り上げることになった。正に、新しい時代の資本主義(個々の資本主義からグローバル資本主義)制度の誕生が謀られたのである。米国と英国にとっては、自国通貨の過不足分を調整するユダヤ資本の才能は望むところであるし、ユダヤ資本に取っては、世界の実体経済を金融経済で完全にコントロールできる利権を取得することになったので、両者は完全に利害を一致させることができたわけである。

物部一二三著 「日本人と日本国の現状と将来 -ミレニアム提言-」




 1980年頃の米国と言えば、1981年にレーガン政権が発足し、1985年にプラザ合意が成立するといった一連の流れから想像できるように、「アングロ・ユダヤ金融戦略」すなわち米国主導の世界経済支配が確立した時期であった。そして、その米国の世界経済支配の一角を担ったのがシティ銀行、チェース・マンハッタン銀行といった多国籍銀行だったのである。また、その時期は金融分野をはじめとする多国籍企業同士の熾烈な競争が展開されたのであり、競争に打ち勝って生き延びていくために力のある多国籍企業同士が提携・合併を繰り返していった。無論、その陰で競争に敗れた力のない多国籍企業の屍の山が築かれたのは言うまでもない。そのあたりについての詳細は、広瀬隆氏が著した『アメリカの経済支配者たち』および『アメリカの巨大軍需産業』をはじめ、その他の国際政治・経済コメンテーターの書籍を参照されたい。なお、広瀬氏の場合は実際にロスチャイルド一族といったエスタブリッシュメントとの交流があったわけではないため、アメリカおよびヨーロッパのエスタブリッシュメントの本質を広瀬氏が捉えていないという情報を、実際にロスチャイルド一族などと交流を持つ某識者から直接筆者は聞いている。よって、広瀬氏の著書は割り引いて読む必要があり、アメリカの支配層を鳥瞰図的に捉えるための参考資料程度に利用すればよいと思う。

一方、1980年代から1990年代にかけての米国は、「雇用なき繁栄」という大量失業と不安定就業が恒常化して中流階級が没落していった時期であり、一握りの富裕層と圧倒的多数の困窮層という極端な二極化が進行した時期であった。不幸にして、現在の日本も二極化が進行しているのはご存じのとおりである。このように、低開発国の民衆や先進国の低所得層の民衆の犠牲の上に成り立っているのが、「世界の政治・経済のエスタブリッシュメント」が主導する「アングロ・ユダヤ金融戦略」の実体であることを忘れるべきではない。

次に、「世界の政治・経済のエスタブリッシュメント」のグランドストラテジー(大戦略)が世界の政治・経済にどのような影響をもたらしているのかについて筆を進めてみよう。

物部氏の指摘にある米国経済、さらには世界経済をコントロールしているというアングロ・ユダヤ連合による金融ヘゲモニーをはじめ、軍事・情報など他分野のヘゲモニーも視野に入れて考察するにあたり、最良の指南書の一冊が『国際寡占体制と世界経済』(岩城淳子著 御茶の水書房)である。




(1) 国際的金融ヘゲモニー

(2) 国際的情報ヘゲモニー

(3) 国際競争力としての生産性優位の確保

(4) 世界の科学・技術分野におけるリーダーシップの掌握

(5) 原料・エネルギー資源の囲い込み

(6) 国際関係の戦略的構成

(7) 地球ないし宇宙規模の軍事ヘゲモニー


出典:『国際寡占体制と世界経済』(岩城淳子著 御茶の水書房 P248)

戦後の米国の歩みを振り返ってみると、第二次世界大戦後から1970年代初頭までは戦禍を免れた唯一の参戦国であった米国が圧倒的な力を固持していたことに気づく。しかし、ベトナム戦争などにより米国が国力を消耗している間、戦禍に見舞われたヨーロッパおよびアジアの諸国が復興を遂げ、ついに米国を1971年8月のニクソン・ショック(金ドル交換停止)が襲い、戦後の国際経済秩序の根幹をなしていたIMF・GATT体制、所謂ブレトンウッズ協定に終止符が打たれたのであった。このように書くと、パクス・アメリカーナが終焉を迎えたかのような印象を読者に与えかねないが、実際はニクソン・ショック以降のパクス・アメリカーナの基盤は一層強固なものとなったのである。そうした米国主導による世界体制が確立された時期が1980年代であったと言えよう。

ここで、『国際寡占体制と世界経済』を下敷きに、岩城教授の図にある(1)~(7)を筆者なりに解釈すると以下のようになる。

(1) 国際的金融ヘゲモニー

国際的金融ヘゲモニーとは、本稿で取り上げている世界経済の支配層そのものを指し、それが岩城教授の描いたヘゲモニー構造図の頂点に置かれているのも、国際的金融ヘゲモニーこそが中核的なヘゲモニーだと岩城教授が捉えていたからである。ニクソン・ショック以降、今日に至っても相変わらず不換紙幣ドルが世界の基軸通貨として流通し、巨大銀行がニューヨークに集中している事実そのものが、米国主導の国際的金融ヘゲモニーの重要性を示す何よりの証となる。尤も、国際金融市場におけるドルの垂れ流しという米国のしたい放題に歯止めをかける意味で、ヨーロッパ諸国が2002年1月にEUの統一通貨であるユーローを登場させたことの意義は大きく、今後の米国主導による経済支配層に少なからぬ影響を与えると見て間違いない。

(2) 国際的情報ヘゲモニー

国際情報通信分野における米国の情報ヘゲモニーは、上記の(1)国際的金融ヘゲモニーと密接な関連性を持つ。何故なら、投機的金融市場では一瞬の差、一瞬の情報格差が勝敗の決め手となるためからである。1815年6月19日に大英帝国とフランス両国の命運を賭けたワーテルローの戦いの結果を誰よりも早く入手したネイサン・ロスチャイルドが、ロンドンの株式取引所で巧妙な手口を使って濡れ手に粟の莫大な大金を手にしたという逸話を思い出せば、情報の大切さは一目瞭然となる。尤も、ネイサン・ロスチャイルドの入手した情報は“素材”に過ぎず、来る情報化社会においては素材である情報を分析・統合した上で判断を下すという “インテリジェンス”の方が重要視されることは間違いない。

(3) 国際競争力としての生産性優位の確保

「アメリカが金融ヘゲモニーとして優位に立つためには、米国系の多国籍企業が他国系の多国籍企業に対して競争上優位な地位を確保していることが必要であり、そのためには設備の近代化・人減らし合理化による労働生産性の向上すなわちコスト・ダウンで優位に立たねばならない」と『国際寡占体制と世界経済』の著者である故岩城淳子教授は説いており、筆者も同意見である。なお、生産性について考察するのであれば、併せて情報ヘゲモニーの一環であるCALS(生産・調達・運用支援統合情報システム)の脅威を知っておく必要がある。すなわち、米国においては、政府、官庁、軍隊、民間、果てはアカデミーすらもCALSによって統括されているという現実である。日本では光ファイバー網云々と騒いでいるが、これではあまりにもハード志向に偏り過ぎていると言えないだろうか。もっとソフトウェアなどのインタンジブルなものにも目を向けていくようにしないことには、今世紀に本格化する地球規模の情報化において日本は立ち後れていくばかりだ。

(4) 世界の科学・技術分野におけるリーダーシップの掌握

日欧米系の多国籍企業では、利潤を獲得していくために常に新製品開発に力を注いでいるが、そのためには科学・技術両分野において他をリードしていくことが不可欠となる。そのためには基礎科学も含め、将来を見通した科学・技術分野の戦略を立てることが必要であろう。しかし、ロケットで有名な故糸川英夫博士がいみじくも「日本にはサイエンスがない」と語っておられたように、基礎研究・科学を軽視している日本には残念ながら科学の名に値するものは皆無に近い。日本人の科学軽視の傾向はセマンティックス音痴に由来するものであり、日本の将来を思うにかえすがえすも残念なことである。

(5) 原料・エネルギー資源の囲い込み

産出・生産地域の偏った石油、レアメタル、食糧などに関して、米国は二国間協定等により資源の囲い込みを進めてきたが、これは高度な戦略の部類に属す。最近の例を挙げるならば、9・11事件を引き金として発生した米国によるアフガン侵略も、一種の原料・エネルギー資源囲い込み戦略である。さらに、一つ上の次元から眺めれば前世紀は石油を中心に世界は動いてきたことが一目瞭然であり、これは21世紀に入った今日においても変わるところがない。尤も、情報大革命の前夜に相当する現在、エネルギーの中心が石油から情報にシフトしつつある現実にしっかりと目を向けることが大切だ。

(6) 国際関係の戦略的構成

「米国を頂点として、その下位に米国と特別の関係にある諸国(日・英・独・サウジアラビア・イスラエルなど)を結集し、更にまた、その下位に戦略上重要な諸国を…という具合に、戦略的重要性にもとづいて重層的に編成された国家関係をさす。この戦略的重要性は、ヘゲモニー構造の維持と資本主義体制の維持の観点から見たもので、当然、ヘゲモニーの各要素とも深く関連している。(中略)戦略的な国家関係の確立にあたっては、その奥深い背後にある人的コネクションが重要な役割を果たしているが、それを可能にしたのは、政・官・財界その他諜報分野にいたるまでの内外の各種人材、特に外国の人材を長期間にわたって大量に育成し、全世界に戦略的に配置してきたことである。こうした人材育成のスポンサーとしては、米国政府だけではなく、ロックフェラー財団、フォード財団などの諸団体やフルブライト基金のようなさまざまな奨学基金があげられよう」と『国際寡占体制と世界経済』の著者である故岩城淳子教授は説いている。筆者も基本的に岩城教授の意見に同意するものの、岩城教授と意見を異にする部分もある。第一に、英国やドイツと同一レベルに日本を岩城教授は取り上げているが、米国は戦略的に英国やドイツの下位に日本を位置づけていると筆者は思う。第二に、人的コネクションについて言及するのであれば、フリーメーソンについても言及しないことには片手落ちという点も指摘しておきたい。

(7) 地球ないし宇宙規模の軍事ヘゲモニー

「圧倒的に優勢な核兵器体系や人工衛星システムを軸とする宇宙覇権を背景に、各種軍事協定によって戦略的に重要な地域をコントロール下に置きながら(6)、各々の地域の特殊性に応じた、科学・技術の先端部分、原料・エネルギー資源などの囲い込み(4・5)や、地球を覆う情報・通信網の構築(2)などを実現させてグローバルな管理体制に万全を期するという構図である。また、ケインズ的有効需要政策においても、科学・技術戦略においても、軍産複合体が果たす役割はきわめて大きい。こうした全体的関連の中で体制保証の支柱をなしているという意味で、(7)がヘゲモニー構造全体を支える基盤の位置を占めているといえよう」と『国際寡占体制と世界経済』の著者である故岩城淳子教授は説いている。岩城教授の主張のとおり、軍事力はパクス・アメリカーナを維持し、(2)~(6)を貫いていくためにも不可欠なものであろう。ようするに、(1)の金融ヘゲモニーと(7)の軍事ヘゲモニーは、岩城教授の言う諸ヘゲモニーを推進していく両輪に相当すると言えよう。

以上、パクス・アメリカーナをさまざまな角度から検証してきたが、ここでふと筆者の脳裏にパクス・ブリタニカが浮かんだ。ご存じのとおり、かつてはパクス・ブリタニカの覇者たる英国は、ボーア戦争、第一次大戦、第二次大戦と半世紀にわたって続いた三つの戦争で国力を消耗・衰退させ、ついにはパクス・アメリカーナに覇権が移行したというのが『国際寡占体制と世界経済』の岩城教授をはじめとする世間の一般的な見方である。しかし、果たしてそうであろうか。寧ろ米国は未だに真の独立国とは言えず、深奥は相変わらず英国の「植民地」のままではないのだろうか。英国本土だけに目を向ければ確かに王室と労働者しか残っていないが、真に優秀な英国人は世界中に散らばっていて世界のソフトウェアといったインタンジブルな分野に深く関与している事実を見過ごしてはいないだろうか。
http://pro.cocolog-tcom.com/edu/2012/03/post-c225.html







【私のコメント】

天童竺丸氏が著した『悪の遺産ヴェネツィア』を読んだ。この本は、国際金融資本の中枢がフェニキア→カルタゴ→ベネチア→オランダ・イギリスと移動してきたと主張している。フェニキアは現在のレバノンに相当しユダヤ人の住んでいた古代のパレスチナに近いが、フェニキア人は無神論者で貿易の利益を追求するのに対して、ユダヤ人は一神教で神の救いを追求するという決定的な違いがある。

この本では、現在の英国皇室のウィンザー朝の先祖であるドイツ貴族のウェルフ家がベネチアによって神聖ローマ帝国の国家統一を阻害するために送り込まれたエージェントであったことが詳しく述べられている。恐らく現在の英国王室もエージェントに過ぎず、真の中枢は匿名の存在なのだろう。ユダヤ陰謀論も表向きはキリスト教徒だが実際には無神論者であるフェニキア・カルタゴ系の黒い貴族達という真の中枢を隠すための手段に過ぎず、ユダヤ人は(アシュケナジーもスファラディも)古代から現在まで彼らのエージェントとして利用され続けてきたのだと思われる。ノルマン人の民族移動も名誉革命も宗教改革もイエズス会も、欧州の主要な大事件の多くはベネチアの仕業なのだという。

その国際金融資本の中枢である英国が現在危機に瀕している。2013年3月11日にフォークランド諸島で行われる住民投票は第二次フォークランド戦争の引き金になる可能性が高い。この投票の日付は東日本大震災と同日で国際金融資本の好む数字であり、大事件に繋がるはずだ。戦争になれば英国が無残な敗北を喫する可能性が高く、英国の海外領は草刈り場になろう。また、北アイルランドでは出生率の高いカトリックの住民の割合が支配階層のプロテスタントに拮抗する水準まで増えており、首都のベルファストでは既に逆転していることで緊張が高まっている。近未来に北アイルランド・スコットランドは英国から独立し、ロンドンの金融業が破綻して英国はスペインやポーランド、ウクライナと並ぶ欧州の貧困国家に転落するだろう。これは、国際金融資本が長らく寄生していた英国とともに滅亡する事に他ならず、「ベネチアの悪の遺産」の破滅を意味すると思われる。

かつてカルタゴがローマ帝国に滅ぼされた時、滅亡前に脱出したカルタゴ支配階層は帝国内部に潜伏し、帝国滅亡後にベネチアやジェノバを建国した。我々にとって最も重要なのは、国際金融資本の支配階層の脱出を許さず全て捕らえて全員死刑にすることで彼らの復活の可能性をなくすことであると思われる。






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59 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-01-14 14:46:54
EUは古来からのイタリア領土
返信する
Unknown (Unknown)
2013-01-14 15:11:15
ロックフェラー米上院議員、来年の再選目指さない意向表明
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MGH3N76TTDS301.html
返信する
Unknown (Unknown)
2013-01-14 19:13:08
オヤビンの破滅に南朝鮮は・・・
返信する
Unknown (面白い発想だが)
2013-01-15 00:19:54
歴史的な議論いいですね。

カルタゴとヴェネツィアの隠された関係は
晴耕雨読さんに書かれている記事に近いものでしょうか。


ttp://sun.ap.teacup.com/souun/328.html

> イタリアの国家的統合を妨げた最大の障害は、ヴェネツィアという一都市国家とローマ教皇庁の存在であった。そしてさらに言えば、ローマ教会をして地上権力へと変質させたのは、ヴェネツィアの無神論的自由市場理論だった。


近代以降ではヴェネツィア本体は力を失っているので、これは「ヴェネツィア」ということでしょうか。ユダヤ人宮廷貴族は大航海時代になると、スペインからオランダ、イギリスへと移っていますが、その時代「ヴェネツィア」本体はどこにあったのでしょうか?

> 教皇派(ゲルフ)と皇帝派(ギベリン)の争いは、ドイツないしイタリアをも巻きこんで一大地中海国家へと国家的統合を目指す勢力に対して、これを分断し宗教的・精神的呪縛の軛に縛りつけてみずから地上権力としても君臨しようとするローマ教皇と国家間の分裂抗争こそ商売の最大好機と見るヴェネツィアとが結託して粉砕しようとした動きにほかならない。

面白い見方です。近代から現代でもあてはまる。あらためてヴェネツィアからみると、近代でのフランスやオーストリアは厄介な存在です。やはりプロイセン建国はやはり意図的に行われ、オーストリアやフランス、ロシアを牽制する目的があったと妄想したくなります。管理人氏の仮説。ドイツは東プロイセンを切り離すために第2次世界大戦を行ったはなにやら重要な意味を持つかと。

> 我々にとって最も重要なのは、国際金融資本の支配階層の脱出を許さず全て捕らえて全員死刑にすることで彼らの復活の可能性をなくすことであると思われる。

近代に入ると、オスマントルコが勢力を増し、イタリアの都市国家が地中海の制海権を失った。これが結局大航海時代を呼び寄せ、イタリアの都市国家が世界システムに飛躍していった。国際金融資本の支配階層にはこのときのオスマントルコのような役割を担って欲しいです。システムが極限に達すると自壊し、他のものにとって代わられるようなイメージです。何が取って代わるものなのかはわからないですが
返信する
中国が戦争準備 (中国が戦争準備)
2013-01-15 01:42:47
「戦争の準備をせよ」対日想定…中国軍指導部が全軍に指示
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130114/chn13011419050004-n1.htm
【北京=矢板明夫】中国人民解放軍を指揮する総参謀部が全軍に対し、2013年の任務について「戦争の準備をせよ」との指示を出していたことが明らかになった。14日付の軍機関紙、解放軍報などが伝えた。また、国営中央テレビ(CCTV)など官製メディアは最近、連日のように日本との戦争を想定した特集番組を放送し、軍事的緊張感をあおっている。

 沖縄県・尖閣諸島周辺での自衛隊との軍事衝突を意識して、習近平新指導部がその準備と雰囲気作りに着手し始めた可能性がある。

 解放軍報によれば、総参謀部が全軍に向けて出した2013年の「軍事訓練に関する指示」の中で、「戦争準備をしっかりと行い、実戦に対応できるよう部隊の訓練の困難度を高め、厳しく行うこと」と記されている。総参謀部は昨年も訓練指示を出していたが、「軍の情報化や部隊間の横の連携の重要性」などを強調する内容が中心で、今年のような戦争を直接連想させる表現はなかった。

中国指導部が戦争準備に向けて大きく一歩踏み込んだことがうかがえる。

 同紙は今年の訓練目標について、昨年11月に就任した習近平・中央軍事委員会主席の重要指示に基づいて作成したと解説している。

 また、中国の主要メディアは今年に入って、「尖閣戦争」を想定した番組を連日のように放送している。中国軍事科学学会の副秘書長、羅援少将や、元海軍戦略研究所長の尹卓少将ら多くの軍関係者が出演し、主戦論を繰り広げている。そのほとんどは習総書記と同じく太子党(元高級幹部の子弟)のメンバーで、習総書記の意向が反映している可能性が高い。

 一方、日本と外交交渉を通じて尖閣問題の解決を主張する学者らはほとんどメディアに呼ばれなくなったという。ある日本研究者によると、最近北京で行われた尖閣問題に関するシンポジウムで、「論争の中心は対日戦争を小規模にとどめるか、全面戦争に突入するかが焦点になりつつある。小規模戦争を主張する人はハト派と呼ばれ、批判されるようになった」という。

 共産党筋によれば、習近平総書記は昨年11月の党大会で、軍人事の主導権を胡錦濤国家主席が率いる派閥に奪われた。習氏は現在、軍内の保守派と連携して、日本との軍事的緊張を高めることで、自身の求心力を高め、主導権を取り返そうとしているとみられる。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-01-15 15:24:47

23 名前:名無しさん@13周年[] 投稿日:2013/01/14(月) 22:29:01.66 ID:vk4ZClp00
■これ、年末の書き込みみたいだけど、見事に当たってるよね■

519 名前:可愛い奥様[] 投稿日:2012/12/31(月) 10:01:15.46 ID:Wk1V85AwO
皆さん、
中国共産党や朝鮮政府から各新聞社・テレビ局宛てに
日本の将来の同盟国候補であるインド・インドネシア・ミャンマー・ベトナム・
フィリピン・豪州・ロシア・台湾に対するsage指令
ネガキャン指令が出ているハズです

シナ共産党・朝鮮政府指令で、
来年から壮絶なるインドsage、ロシアsage、フィリピンsageなどが開始されるでしょう
しかし決して騙されないで下さい
ロシアからフィリピンを経てインドに至る「特ア包囲網」を崩そうと
中国・朝鮮は必死です
騙されないよう、今から心の準備をして下さい


返信する
Unknown (なーる)
2013-01-15 16:44:28

国際金融資本に対するこのような処置は是非
必要で、実際にゆっくりと進んでいることが
わかりますが、これらの処置は一体誰がどの
ような資金、動機で行っているのかがわかり
ません。「動機」というのは、たとえば世界
の平和のために等といった子供向けの動機で
はなく実行後の目に見える利益がどう出るか
や特殊プロ組織を動かす力がどこから出るの
かという意味です。公開できる情報が何かあ
りましたらお願いいたします。


>我々にとって最も重要なのは、国際金融資本の支配階層の脱出を許さず全て捕らえて全員死刑にすることで彼らの復活の可能性をなくすことであると思われる。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-01-15 20:42:17

人の居るところに権力あり、まあそういうこった。

しかし日中のプロレス合戦はまだ続くようだね。
返信する
外務省の連中は視野狭窄である (Unknown)
2013-01-16 17:20:09
石油は中東諸国・ロシア・中央アジア・南米などにあり、すべてをユダヤが支配しているわけではありません。

プーチンが日本と接近したいのは、

1、石油・ガスを買ってくれ!
2、ロシアが資源依存経済から脱却できるよう「ハイテク」をくれ!
3、中国に任せると極東・東シベリアをのっとられる。だから日本が開発してくれ!

こんな感じになります。

・・・・

日本、アメリカ、インド、オーストラリア、韓国、東南アジア諸国で中国を封じ込めるのはよいこと。

しかし、北(ロシア)から無尽蔵にエネルギーと武器が供給されるようなら効果は半減します。

北(ロシア)からの資源と武器の供給を止めれる。
これでようやく「中国包囲網」は完成するのです。

強調しておきますが、「包囲網」は戦争に勝つためではありません。
「戦争を回避するため」のものです。

というわけで、「中ロ分断」のための「ロシア接近」。
これは、本当によいことなので、どんどんやっていただきたい。
http://archive.mag2.com/0000012950/index.html
返信する
Unknown (Unknown)
2013-01-16 18:56:31
>2013-01-16 17:20:09

北野の解説は簡単で解りやすいな。

順番としては米との集団的自衛権を認める→日露平和条約締結が望ましいだろうね。その為にも尖閣による日中対立が偶然であろうと企図したものであろうと好機を生み出してはいるな。
返信する

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