ここ、リューデスハイムにもようやく春の足音が聞こえ始めました !
身に染みる冬の寒さが徐々にやわらぎ、桜やクロッカスの花が少しずつですが開き始めました。それに合わせて静かだった街にも旅行者の方々の姿が増え始め、我々のお店にもお客様が増え、私の懐も暖かく、、、、、なるにはもう少しかかりそうです。万年氷河期の懐事情の前には春もなかなか近づきにくい様子。寒風吹き荒むばかりの冬の厳しさが骨身にしみます。
私の懐事情はさておいて。
人も動物も植物も浮足立って動き始めるこの季節は、我等が愛するワインの原料であるブドウにとってもまた成長の季節です。寒かった冬の間眠っていたブドウは、気温の上昇と共に目を覚まし、秋の実りに向けた成長を始めます。昨年の秋に葉を落としたブドウの樹はそのままの姿で冬を越し、伸びた枝の節々に新しい芽を芽吹かせて春を迎えます。より多くの枝を伸ばし、より多くの葉を生やし、より多くの実をつける。そんな意気込みを感じる姿です。
【ブドウの樹は去年の春から秋にかけて伸びた姿のまま冬を越します】
しかーし、この意気込みをそのままに成長させてあげることはできません。
よりいいワインを造るためにも、ワイナリーの人たちはこのブドウの成長が始まる間際の時期にブドウの枝を落とします。ごちゃごちゃに伸びた枝の中から選りすぐった1本を選び出し、それ以外を切ってしまうのです。それは一見して残酷なようにも見えますが、今年の収穫量と収穫するブドウの品質を維持、向上するためにも絶対に必要な作業なのです。
【選定作業後のブドウの木。伸びていた枝が落とされて、すっかりスッキリとした姿】
醸造家はよりいいワインを造るために、まだまだ寒い、時には雪の残るブドウ畑でこの枝落とし(日本語では剪定、ドイツ語ではRebschnitt【レープシュニット】といいます)を行うのです。その年の収穫量やブドウの品質を左右するこの仕事は、単純なようでいて実はかなりの専門知識を必要とする作業でもあります。どうすればより健康的にブドウの樹が成長できるか、よりいいブドウの実を収穫できるか。醸造家は身体が芯から凍えるような冬のブドウ畑ですでに一年の戦いを開始しているのです。
ブドウ畑での仕事は大変ですが、ワイナリーの人たちには寒さに負けず、春の眠さにも、夏の暑さにも負けずに頑張ってもらって、これからも美味しいワインを私たちに届けてもらいたいですね。
那岐