「言語道断!」彼は呻っていた。「身の毛もよだつとはこのことじゃ! 常軌を逸した無分別を犯した旧友、その娘が可哀想なことに!三十年もの付き合いだというのに! このように見捨てるとは!実に、実に、けしからん!……ああ可哀想な娘!純金のような心を持った、天使のように美しい娘が! この情け容赦ないパリという街はこの娘をたちまち餌食にするだろう……そんなことは許しておけるものか……老兵たりといえどここにこうして、身を挺してお前を守り抜こうぞ!」
彼は再びマルグリット嬢の前に立った。情に脆いと同時に粗暴な男の並外れた大声で彼は怒鳴った。
「マルグリット嬢!」
「は、何でしょう?」
「わしの息子ギュスターヴ・ド・フォンデージを知っておるな?」
「将軍がド・シャルース伯爵に何度かその方のお話をなさっていたのを覚えています」
彼は猛烈な勢いで口髭を捻りあげた。動揺した時とか困惑したときの彼の癖なのである。
「わが息子は」彼は言い始めた。「二十七歳、現在軽騎兵隊の中尉であるが、大尉への昇進を約束されておる……抜擢じゃ! なかなかの男前で将来出世するじゃろうて。爪の先までやる気に溢れておるからな。ま、言いにくいことでもずけずけ言うのがわしの性分じゃから言うが、やつはちと精神が散漫なところがある……が、頭はもう一つかもしれぬが、気は良い男だ、全くのところ! じゃから、気立ての優しい物の分かった娘ならあの呑気者をちゃんとした男にし、またとない夫に仕立て上げるじゃろう……」
彼は二度三度と指を襟と首の間に差し挟むと、息を詰まらせたような声で言った。
「マルグリット嬢、謹んでお願いしたい。わが息子ギュスターヴ・ド・フォンデージ中尉の妻となってくださらぬか」
マルグリット嬢の目に怒りの炎が燃え上がった。そして先ほどと同じように、この上なく冷淡な口調で答えた。
「光栄に存じます、将軍、あなた様にそのように仰って頂いて……ですが私の身の振り方はもう決まっているのでございます」
ド・フォンデージ氏が口がきけるようになるまでたっぷり十秒は掛かった。
「さようか!……そうであるか!」とついに彼は並々ならぬ狼狽とともに呟いた。「これはまた迂闊なことであった!……普段ならばこんなことはせぬのじゃが……可愛い娘よ、お前の心痛に思いを致すべきであった! 一旦は拒絶したが再び思い直してみてはくれぬか……ギュスターヴが気に入らぬということであれば、仕方あるまい、別のもっと良い男を考えよう。ド・シャルースの最も古き友人はお前を見捨てたりはせぬぞ……。今晩、家内に会いに来るとよい。あれは気の良い女だ。お前たち、女同士のお喋りをすれば良い。さすれば、お互い気心も知れる。さぁどうだ。返答をしなさい。どうしたのだ?」
このように執拗に言い立てられ、マルグリット嬢の苛立ちは頂点に達した。ついに彼女は言った。6.30