きっとそうであって欲しいと彼女は願っていたのだった……。彼女が突然思いついたこの計画の成否はこれらの点に掛かっていた。それでもまだある懸念が彼女の希望に影を落としていた。その心配を振り払おうと決心したのだが、いざ口を開こうとすると、今度はいろんな不安材料が頭に浮かび、彼女は躊躇した。今言おうとしているのは、彼女の計画の核心に触れる部分だったからだ……。しかし必要なことは聞かねばならない。彼女はためらいを押し殺し、やや上ずった声で言った。
「もう一つお尋ねしなければならないことがありますの。私は何も知らない女ですので、お教え頂きたいのです……。私がここに持っている手紙は、明日差出し主に戻され、多分焼却されることになります。もし、今後訴訟という事態になり、私があることを申し立てたら、相手方は否定するでしょう。そしてこの手紙が私の申し立てを証明してくれる筈です。その際、裁判官は貴方様の写真を証拠として認めてくれるでしょうか?」
写真家はしばし沈黙した。今やマルグリット嬢の行動の意味を彼は理解した。彼女が正確な複写に拘ったのが何故か、ということも……。しかしこれは彼が今から行おうとしている仕事に思いがけぬ重大さを与えることにもなり、ある意味では彼の責任というより良心が関わってくる問題だと彼は判断した。
『恐喝』というものがますます盛んに行われ、それがひとつの流行の稼業となっている時代にあっては、犯罪を露見するような書簡の忌まわしい取引が殆ど公然と行われている。手紙の内容を保存することがどれほどの効力を持つか、を見ず知らずの女に示すことに抵抗を感じるのは当然のことであった。しかもその手紙というのは、書き手が消滅させようとしているような代物だ、と彼女自身が白状しているではないか。
それで彼は考えている間もマルグリット嬢を子細に観察した。彼女の心の隅まで見通せることを期待しているかのように……。この高貴で清純な額を持った、目に誠実さが輝いているこの若い美しい娘が卑劣で陰険な裏切りの行為を画策しているなどということがあり得るであろうか……。いや、彼にはそうとは信じられなかった。このような顔の持ち主が嘘を吐くようなら、一体誰を信用すればいいというのか。ある一つの問題点が浮かび、彼は決心した。彼は証拠品をどうにでもできる立場にある。その手紙の内容によっては、官憲に引き渡すか、消滅させるか、どちらかにすればよい。
「私の複写は法的な証明になります」と彼は答えた。「それに付け加えて申しておきますが、私の撮った写真を基に裁判所が裁定を下したことは過去にもございます……」7.28
「もう一つお尋ねしなければならないことがありますの。私は何も知らない女ですので、お教え頂きたいのです……。私がここに持っている手紙は、明日差出し主に戻され、多分焼却されることになります。もし、今後訴訟という事態になり、私があることを申し立てたら、相手方は否定するでしょう。そしてこの手紙が私の申し立てを証明してくれる筈です。その際、裁判官は貴方様の写真を証拠として認めてくれるでしょうか?」
写真家はしばし沈黙した。今やマルグリット嬢の行動の意味を彼は理解した。彼女が正確な複写に拘ったのが何故か、ということも……。しかしこれは彼が今から行おうとしている仕事に思いがけぬ重大さを与えることにもなり、ある意味では彼の責任というより良心が関わってくる問題だと彼は判断した。
『恐喝』というものがますます盛んに行われ、それがひとつの流行の稼業となっている時代にあっては、犯罪を露見するような書簡の忌まわしい取引が殆ど公然と行われている。手紙の内容を保存することがどれほどの効力を持つか、を見ず知らずの女に示すことに抵抗を感じるのは当然のことであった。しかもその手紙というのは、書き手が消滅させようとしているような代物だ、と彼女自身が白状しているではないか。
それで彼は考えている間もマルグリット嬢を子細に観察した。彼女の心の隅まで見通せることを期待しているかのように……。この高貴で清純な額を持った、目に誠実さが輝いているこの若い美しい娘が卑劣で陰険な裏切りの行為を画策しているなどということがあり得るであろうか……。いや、彼にはそうとは信じられなかった。このような顔の持ち主が嘘を吐くようなら、一体誰を信用すればいいというのか。ある一つの問題点が浮かび、彼は決心した。彼は証拠品をどうにでもできる立場にある。その手紙の内容によっては、官憲に引き渡すか、消滅させるか、どちらかにすればよい。
「私の複写は法的な証明になります」と彼は答えた。「それに付け加えて申しておきますが、私の撮った写真を基に裁判所が裁定を下したことは過去にもございます……」7.28