「物言わぬ死体」もそのうち再開するつもりですが、ソーンダイク博士の家に住み込みで働いているポルトン---小さな大司教みたいな人、とジャーディーンに言われていた人物---が語り手となっている中編があるので、それを先に訳していくことにします。幼いとき両親を失い、おばさんに引き取られた少年ポルトンは天性の時計職人、ところが・・・。100年ちょっと前のイギリスの労働者階級の暮らしが描写され、ディッケンズを髣髴とさせます。軽妙さが売り、と本人は思っているようですが、ときに受けを狙ってすべるところなど、「物言わぬ」と似た雰囲気もあり。本邦初訳(多分)なのが訳者としては楽しいところ。
いずれにせよ、作者自身、大いに楽しみながら書いているということは強く感じます。それが訳出できれば、と念じつつ・・・。