「考えとしては結構だがね」と門番のブリジョー氏はぶつぶつ言った。「実際上手くいくかどうか……」
「どうでもいいさ! 先のこた分からんからな。さしあたり、俺はロクな目に遭わないのさ。せっかく旦那を俺流のやり方に慣らしてきて、たっぷり貰うつもりだったのに……それが突然おじゃんだ。また新規まき直しせにゃならん」
ブリジョー氏の方ではこのような悟りの心境には達していなかったようだ。外套を着ながら彼は呻くように言った。
「ああ、お前さんは困るとはどういうことか、分かってないと見えるね、カジミール。お前さんは自分の首の心配さえしてりゃいいんだろ。ところが俺には、護らなきゃいけない家具があるのさ。もし俺が二部屋の住まいを見つけられなきゃ、家具の一部を売らなきゃならねぇ……なんてぇ巡り合わせだぁ!」
そう言っている間にも彼は支度を整え、出て行った。カジミール氏の方は、再び上がっていく気にもなれず、門番小屋の前を行ったり来たりし始めた。およそ三十回ほども往復すると、じれったくなり始めたが、ちょうどそのとき半開きになっている外の門の隙間から、生き生きしたこすっからそうな顔が見えた。まるでイタチが自分の巣穴から出る前に辺りを見回している、といった格好だ。
「おんや!ヴィクトール・シュパンじゃないか」と前に進みながら彼は言った。「ちょっと外で話そう……」
通りに出ると彼は言った。
「お前、ちょうど良いときに来たぞ。終わっちまった。一巻の終わりだ」
シュパンは飛び上った。
「てことは、おいらたちの取り決めで決まり、ですね?」彼は元気よく言った。「ほら、葬式の話ですよ。おいらたちの手数料の取り決めですよ」
「それはどうだかな。つまり、俺の一存で決められるかどうか、分からんのだよ……。ま、とにかく、三時頃、また来な」
「わっかりやした。来ますよ。ですが……競争相手にゃ用心してくだせえよ」
しかしカジミール氏は他の事を考えていた。
「で、フォルチュナ氏の方はどうなった?」と彼は聞いた。
「だから、おいらの言ったとおりっすよ! 昨夜手酷いパンチを受けて……。まともに顔面にバシッと一発。ところが夜のうちに湿布を貼ると、今朝はましになって……。あんたに伝言をしろって命令するまでに回復したっすよ。正午から一時までの間、あんたを待ってるって。あんたの知ってる例の場所で……」
「ううむ、難しいかもしれんが行けたら行くよ……。ああ、そうだ。俺は彼に例の手紙を見せてやるよ。発作の原因となった手紙だ。伯爵が一旦は細かくちぎって捨てたものを後で集めて復元しようとしたやつを。俺は更に七、八片、伯爵もお嬢様も見つけられなかったものまで持っている。全く妙ちきりんなことさ!」
シュパンは彼をうっとりするような目つきで見た。「凄いっすねぇ!金持ちになったら、あんたみたいな素晴らしい下男を雇えるんすねぇ!」
相手は苦笑をした。それから慌てて言った。
「急げ!あそこに見えるのはブリジョーだ。治安判事を連れて戻ってきたぜ」2.4