これは『将軍夫人』から逃れられるまたとない機会だったので、マルグリット嬢はすぐさまそれに飛びついた。彼女は夫人に退出しても構わないかと尋ね、疲れて死にそうなので、と理由を言ったが、それは本当のことであった。夫人から母親のようなキスを貰い、「よくお休みなさい、可愛い子」と声を掛けられ、彼女は寝室へと引き上げた。
有難いことにマダム・レオンは出かけていたので、彼女は監視される心配もなく一人になることが出来た。そこでトランクの一つから旅行用の書き物セットを取り出すと、手早く一通の手紙を書きあげた。それはド・シャルース伯爵が雇ったことのある業者、イジドール・フォルチュナ氏宛てで、次の火曜日に彼を訪問することを告げる内容であった。
「さぁ後は明日ミサに行く途中、この手紙を誰にも見られずにポストに投函する方法を考え出すことだわ。そんなことも出来ないようなら私はとんだ不器用者ね」
彼女は急いでこの仕事を終えたのだが、それは彼女にとって幸いであった。というのは、旅行用書き物セットを元のところにしまうが早いか、マダム・レオンが大層不機嫌な様子で帰ってきたからである。
「どうだったの?」とマルグリット嬢は素晴らしく無邪気なふりを装って尋ねた。「親戚の方々とは会えて?」
「お願いですから、そのことは仰らないで、お嬢様、親戚の者たちは皆留守にしていました……芝居見物に出かけたんですって」
「あら、そうなの!」
「そんなわけですので、明日朝一番にあの人たちのところに行ってみなければなりませんの。これはとても大事なことだと分かって下さいますわよね!」
「ええ、ええ、分かるわ」
しかし、いつもなら喋り出したら止まらないこの小間使いの女中が、今夜はその気にならないらしく、お嬢様に接吻をするとそそくさと自室に消えた。
「さては」とマルグリット嬢は思った。「ド・ヴァロルセイ侯爵に会えなかったのね。自分がどういう役割を演じたらいいのか分からないので困ってしまって、それで機嫌が悪いんだわ」
マルグリット嬢の方でも今夜起こったことを頭の中で整理し、今後の行動方針を立てておきたいところだったが、二晩を肘掛椅子の上で過ごした疲れが頂点に達していた。そこで、一晩休めば明日はもう少し頭も冴えるであろうと自分に言い聞かせ、パスカル・フェライユールの名前が何度か出てくる熱心な祈りをささげた後、ベッドに横になった。それでも眠りに落ちる前に一つの発見をした。ベッドのシーツが新しくなっていたのだった!5.30