友人、敵、債権者、債務者のすべて、更に生前に彼が知っていたあるいは近づきのあった人々すべてに、次のような返答が返ってくるまで聞きまわるのだ。『ああその人なら私と同郷人でしたよ……直接話したことはありませんが、兄弟の一人を知ってました……叔父さんの一人を知ってます……いとこの一人と友達でしたよ……』等々。
ときにはこのような調査に数年を要することもあり、前倒しの資金や移動に伴う出費、ヨーロッパ中の新聞に掲載する巧みな言い回しの広告、等が必要であった。
しかし一旦このような結果が得られれば、追跡調査人はホッと一息吐く。彼にしてみれば七十五%は成功したも同然なのだ。最もしんどい部分、つまりどうしても偶然に頼るしかない仕事は終わったのである。後は非常にデリケートな如才なさや手練手管を必要とする社交上の問題となる。ここで警察官としての仕事は終わりを告げ、入れ替わりに狡猾な法律家が現れる。
まずはこのように大変な手間をかけて探し出した故人の親類に接触せねばならない。その相手に舞い込むことになる相続額を知らせることなく、財産について話し合いをすることになる。そして正確かつ正式な書面により総額の十分の一、あるいは三分の一、ときには半分を支払うことに同意させねばならない。これは厄介な交渉であり、どんな老獪な外交官も顔負けというほどの二枚舌や才気煥発さを必要とする。実際、相続人が少しでも疑いを持ち、真実を嗅ぎつけたりしようものなら、追跡人を鼻で笑い、追い返し、自分に入る遺産のすべてを丸々手に入れようとするであろう。こうなれば追跡人の希望は儚くも挫かれ、今までの苦労も奮闘もこれにかけた出費も何もかもが水泡に帰してしまうのだ。
しかしこのような災難は稀である。思いがけず財産が舞い込んでくるという知らせを受けた人間は大抵警戒心を持つことなく、要求されるリベートを値切ろうとはしないものだ。大金が入ってくるという考えに目が眩んでしまい、手数料が高いとは思っても、その交渉で時間を取られるより一刻も早くお金を手にしたいと思ってしまうのだ。というわけで契約は成立し、書面にして署名がなされ、そうなって初めて相続人追跡調査人は真実を明かす。
「あなたは、これこれの方の親戚ですね? 結構です。実はその方が亡くなられまして、あなたが相続人なのです。神に感謝してそのお金を受け取りに行こうではありませんか」
大抵の場合、相続人は言われた通り行動に移す。この場合は問題なしである。だが、ときには金を手に入れる手続きに入ると逆襲する者もいる。あまりにも暴利を貪られすぎであるとして契約の取り消しを求めるのだ。そうなると訴訟となる。殆どの場合、裁判所は反抗する相続人に反省を促す決定を下す。つまるところ、この職業はかつてはかなり実入りの多いものであったが、同業者が増えたことにより多少は損なわれたものの、それでも十分な収入をもたらす仕事と言える。
さてイジドール・フォルチュナ氏は、この相続人追跡調査人であった。彼は他にもあまり大きな声で言えない生業にも手を染めていたことは間違いないが、この仕事は彼の手がけている中で一番実入りの良い、最上のものであった。7.31