アヴァターラ・神のまにまに

精神世界の研究試論です。テーマは、瞑想、冥想、人間の進化、七つの身体。このブログは、いかなる団体とも関係ありません。

張先生

2024-10-14 03:38:48 | 浅い霊感から神人合一まで

◎ある草で鉄を煮ると銀に変わる

 

張先生は、貴池の人である。幼少の時に一人の異人に逢って仙術を授けられ、斉の国の山中に草廬を構えてそこに住んでいた。

 

彼は平生極めて無口な男で、終日ただ室の中に端座して神を煉ることに努めていたが、頭髪は黒く光沢があって漆のごとく、肌理は艶々していて玉を並べたようであった。

そうして宋の政治年間に屍解仙化してしまった。

 

めん陽というところに蕭行美という者がいて、90歳になったが孜々として道教修行をやめず継続していた。

ある日対融山に遊んで一人の老人に逢った。その時件の老人は自ら張先生と名乗り、傍らの路側に生えていた草を指して、「もしこの草を持ち帰って、これで鉄を煮るならば、化して銀にすることができる」と告げ、最後に「ただこの事を決して他人に悟られないように注意せよ。」と戒めた。

そこで彼は教えられたとおり、件の草を持ち帰って自分の庭に植え、その葉を刈り取って鉄を煮ると果たして、すべて銀に変化してしまった。

 

ところがこのことは、誰言うとなく広く世間に広まってしまった。しばらくすると、ある晩にわかに風雨が起こって、いつの間にか庭に植えておいた件の草をいずこへか押し流してしまった。

そこで彼は、再びかの対融山に登って件の草を捜し求めたけれど、どうしたわけかそこにはかほど多かった草が今は一本も見当たらず、空しく山を下りてきたそうだ。

 

張先生は、一日のほとんどを坐っていたのだろうから、すでに相当の境涯の人。生涯求道に熱心だった蕭行美は、晩年に大量の銀を与えられたのだろうが、神様のお気に召さない使い方をしたのだろうか、鉄を銀に変ずる草のことはそれとなく漏れたのだろう。

 

蕭行美は、悟境を試されたのだろうが、金銀への執着を残しており、すべてを捨てる準備はできていなかった。銀のために一生を冥想修行に打ち込んできたわけでもあるまいに。

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